暑い日のおすすめ対策

夏の疲れ…「暑くてぐったり、やりたいことができない」「疲れがたまっていく…」など、酷暑にまいってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方に夏を乗り切るおすすめの対策を、検証結果とともにご紹介いたします。

対策その1<冷却>首を冷やす

首を冷やす対策はすでに行っている方も多いかもしれませんが、単に「気持ちよい」だけではないのです。実は気持ちよいだけではなく、“実際の身体活動”に影響を与える可能性があることが分かってきました。こちらは、子供の活動量で検証した結果です。

2022年8月、暑さ指数(WBGT)※1 が25以上31未満の4日間で、小学1~3年生に屋外で40分間の自由遊びの時間を設けました※2 。参加者を首を冷やすグループと、冷やさないグループに分け、自由遊び中の身体活動時間※3 を測り比較をしました。(図1)

  • ※1
    人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射など周辺の熱環境、③気温、の3つにより計算した指標(環境省HPより)。(公財)日本スポーツ協会「熱中症予防運動指針」では、WBGT31以上の場合に「運動は原則中止」としている。
  • ※2
    活動の観察、鼓膜温度、心拍数の測定を行い、本試験の自由遊びが安全にできていることを確認
  • ※3
    身体活動の強度を表す単位であるメッツ(metabolic equivalents:METs)をもとに「低強度」「中強度」「高強度」の強度ごとに身体活動の時間を分類

図1 「中」「高」強度身体活動時間

首の冷却をしたグループと冷却をしなかったグループにおける、身体活動量の差を示すグラフ。 首の冷却をしたグループの方が、自由遊び中に中高強度の身体活動時間が長いことを示す。

【実験方法】
2022年8月、暑さ指数25以上31未満の4日間、小学1〜3年生26名(男児16名、女児10名)に屋外で40分間(前半20分・休憩5分・後半20分)の自由遊びの時間を設定。参加者を、冷却効果のあるシート* を用いて首を冷却するグループと冷却しない2グループに分け、全員の腰部に加速度計を装着し、自由遊び中の身体活動量を測定。

  • * 冷却液を染み込ませた不織布を、動いても首の肌に触れるように加工したもの。

グラフ中の自由遊びの前半を見てみましょう。首を冷やしながら遊んだグループは、冷やさなかったグループに比べて「中」「高」強度の身体活動時間※4 が長いことが分かります。

  • ※4
    「中」「高」強度活動時間とは、やや早めのウォーキング、階段の昇り降り、子供との遊びなど、息が弾む程度以上の運動が例として挙げられる。運動強度を示す単位であるメッツを用いると、3メッツ以上の強度のことを指す。

この結果より、夏の暑い季節※5 でも体の一部(首)を冷やすことによって、子供がより活発に活動できる可能性のあることが分かります。

  • ※5
    熱中症に配慮した条件下

暑さが厳しい季節に首を冷やすことは、心地よいだけではなく、実際に体を動かすパフォーマンスを下げないことにつながる、効果的な対策と考えられます。

(本研究は、花王ヒト試験研究倫理委員会、及び、順天堂大学スポーツ健康科学部・研究科研究等倫理委員会の承認を取得し実施しました。)

対策その2<遮熱>近赤外線をカットするグッズを活用

日差しによる紫外線に加えて、近赤外線の影響も無視できません。近赤外線は熱を伝えやすい性質を持っており、暑い日に直射日光を浴びると、肌にじりじりとした熱感を覚えるのはそのためです。特に夏場は、この近赤外線は体内に熱を過剰にため込む一因となり、体調や肌への負担を大きくする原因となり得ます。

2024年5月から、18歳から22歳の健康な成人男子10人を対象に、軽微な運動の例としてゴルフのパターを通した検証を行いました。近赤外線をカットするグッズを使わない条件※6 と、近赤外線カットグッズを使う条件※7 で、身体活動の指標となる心拍数や発汗量を計測しています。

その結果、近赤外線カットグッズを使った時の方が、心拍数の上昇が抑えられ、発汗量も抑えられていたことが分かりました。(図2、図3)

  • ※6
    近赤外線カット率が低いウェアを着用し、近赤外線カット機能がないUVクリームを使用
  • ※7
    近赤外線カット率が高いウェアを着用し、近赤外線カット機能を持つUVクリームを使用

図2 心拍数の比較(運動開始から10分ごと)

近赤外線カット対策をした条件と、しなかった条件における、運動開始からの心拍数推移を示すグラフ。運動開始から10分毎に80分まで計測。近赤外線カット対策をした方が、運動直後から80分後まで心拍数上昇が抑えられていることを示す。

図3 発汗量(水分喪失量)

近赤外線カット対策をした条件と、しなかった条件における、運動開始からの発汗量を示すグラフ。10名の被験者の結果をグラフで提示。10名中8名が、近赤外線カット対策をした条件の方が発汗量を抑えられていることを示す。

【実験方法】
2024年5月から6月、33℃湿度40%、人工太陽光を照射した暑熱環境を再現した環境可変室において、90分間のパター運動を実施。参加者を近赤外線カット対策なし(紫外線をカットする日焼け止めと紫外線をカットする衣類を併用)と近赤外線カット対策あり(紫外線カットに加えて近赤外線をカットする日焼け止めと、紫外線カットに加えて近赤外線をカットする衣類を併用)の2条件で運動させた。
全員の胸部に心電図計を装着して心拍数を測定、また、運動実施前後に体重を測定しその差分から発汗量(水分喪失量)を算出した。

この結果の興味深いところは、どちらの条件でも、紫外線を防御するUVクリームは使用している、ということです。紫外線のみをカットするよりも、近赤外線カットの有無で心拍数や発汗量が変わるということを示しています。つまり近赤外線をカットすることが、身体活動を保つうえで重要であると考えられます。

(本研究は、花王ヒト試験研究倫理委員会の承認を取得し実施しました。)

暑い夏には、ひんやり気持ちよく首を冷やす他、日光の熱を浴びないように近赤外線をカットすることがおすすめです。最近は、手軽に首を冷やすグッズや、近赤外線をカットするウェアや日焼け止めなどのグッズも多くあります。上手に活用しながら、暑い夏を快適に、元気に乗り切りましょう。

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