トップメッセージ

強くてしなやかな新生花王への変貌を急ぐ

花王株式会社 代表取締役 社長執行役員 長谷部佳宏です。
世界は今も混沌の中にあります。地政学的な緊張の高まりに伴う人々の分断、パンデミック、そして深刻さを増す環境問題です。一方、人々が生きていくためには経済活動は必要です。人命と経済、環境と経済など、天秤にかけた議論が長らく続いています。しかし、その両方が成り立つ世界を21世紀は実現しなければなりません。このような混迷の時代だからこそ、花王は「豊かな共生世界の実現」をパーパスに定め、中期経営計画「K25」において「未来のいのちを守る」「Sustainability as the only path」をビジョンに掲げました。そして、既存事業の再生をめざすReborn Kaoと、新事業の創成をめざすAnother Kaoというコンセプトで両輪の改革を推進しています。

「K25」の初年度は激動の1年となりました。新型コロナウイルス感染症の蔓延や原材料高騰などの外的因子の影響の中で、再び成長路線に戻すためには事業改革のスピードを上げなければなりません。
この課題認識を踏まえて、Reborn Kaoにおいて大至急進めるのが、モノづくりとマーケティングの改革です。最小限の消費で最大限の価値(Maximum Value with Minimum Waste)を実現するための「ESG視点でのよきモノづくり」を加速させています。カテゴリーリーディングブランドを強化するためのメリハリある投資を実行すると共に、お客さまとの絆を重視するロイヤリティ・マーケティングにシフトします。グローバル化に関しては、競争に巻き込まれにくいオンリーワン価値を追求すると共に、現地製造を基本とした地産地消モデルへの転換を図ります。そして、もうひとつ進めるのは、高収益事業への抜本改革です。高利益率で事業基盤を支える「安定収益領域」、効果的な投資で成長を加速させる「成長ドライバー領域」、高利益率を維持・強化するためのビジネスモデル変革を急ぐ「事業変革領域」の3つに事業を区分けし、投資方針を明確にしました。
Another Kaoは、今までの花王がやらなかったこと、やれなかったことをテーマにしており、その目標は「未来への5つの約束」です。その中のひとつ「プレシジョン・ライフケア」において、具体的な取り組みを始動させました。対象の状態を精確に同定するモニタリング技術を駆使し、原因を的確に解決するソリューションを提供するビジネスモデルです。同時に、相関関係を推定することで多様なニーズに汎用的に応える「仮想人体生成モデル」の実用化もスタートさせました。志を同じくする多くのパートナーとの協業を通じて、これらをさまざまな分野に展開していきます。

花王は、消費を前提としたモノづくりから、資源を循環させるモノづくりへと変革していきます。「数」と「量」の線形型経済から、「質」と「絆」の循環型経済への移行です。そのために、発展する循環型のビジネスモデルの構築をめざします。2022年度も厳しい環境の中での事業改革になると予想されます。しかし、この混沌を意識改革の好機と捉え、花王グループ社員の活力を最大化し、強くてしなやかな新生花王への変貌を急ぎます。

2022年7月
花王株式会社
代表取締役 社長執行役員

長谷部 佳宏

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