EVA経営

花王はEVA®(Economic Value Added: 経済的付加価値)を主な経営指標として採用しています。EVAを継続的に増加させていくことは、企業価値の増大につながり、株主だけでなくすべてのステークホルダーの長期的な利益とも合致すると考えています。「K27」で掲げた「Maximum with minimum(最小限の資源で最大価値を)」という発想は、まさにこのEVA経営の考え方を表しています。EVAは、投下資本を元手に「真の経済的利益」をどれだけ生み出したかを測る指標とも言えます。資本の要求利益を上回る利益額を重視するため、経営者は常に投下資本を意識することになります。売上増大やコストダウンにより投下資本を増やさずにNOPATを増加させることや、資本構成などを改善して資本コストを下げる「Maximum with minimum」の考え方が、EVAの増加となり、企業価値の向上につながります。花王はこのEVA指標について、事業別の数値管理は行なっているものの、事業別の目標値は定めておらず、全社的な目標として運用しています。これは、花王の各事業部門が、研究開発や生産、販売などの機能でダイナミックに交わるマトリックス運営を行なっており、全社一本で資本効率を管理することで各事業部門による積極的な投資が促進されるとともに、状況に応じた柔軟な資本配分が可能になると考えているからです。「K27」では引き続きこのEVAを経営の主指標の1つに据えながら、これからの時代の財務施策も先取りし、「絶えざる革新」を進めていきます。

EVAの考え方を示した図。EVAは企業活動に使った資本コストを差し引いた残余利益のことで、企業価値に直結する利益と考えています。 最小の資産(B/S視点)を使って、最大の利益(PL視点)を上げ、企業価値の向上を図ります。

EVAの計算式を示した図。EVA=NOPAT-資本コスト。または、EVA=(ROIC-資本コスト率)×投下資本です。

EVAの改善と推移

下記の4つの視点からEVAの改善をはかり、企業価値の増大に努めています。

EVAの改善を示した図。1点目は高付加価値投資の視点です。計画期間のNOPATが資本コストを累計で上回るプロジェクトや事業に投資します。持続的な利益ある成長のキーポイントです。2点目は収益改善の視点です。投下資本を増やさずにNOPATを増加させます。売上増大・コストダウン・費用の効率化が重要です。3点目は整理回収の視点です。EVAがマイナスで改善が見込めない事業や投資から投下資本を回収します。資本のスリム化が重要です。4点目は資本コスト削減の視点です。自己株式の取得による資本構成の改善・リスク管理・IR活動が重要です。

EVAの推移を示した図。EVAは2018年12月期をピークに減少傾向が続きましたが、2023年12月期は前期を3億円上回り149億円となりました。

1998年10月~Stern Stewart & Co.* のコンサルティング (日本での第1号顧客)
1999年4月~EVA適用スタート

  • * Stern Stewart & Co.: EVAを理論的に発展、企業のEVA経営に適用。EVAを商標登録。
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