確信を力に次の成長領域へ
持続可能な社会の実現は、企業にとって選択肢ではなく、責務です。限りある資源の中で人々の生活の質を高め、社会の進化に貢献し続けること。そのために企業は自らの存在意義を問い続け、変革を止めてはなりません。
私たちはこれまで、構造改革を軸に経営基盤の再構築に取り組んできました。事業の選択と集中、資本効率を重視した経営、グローバルを見据えた組織改革。これらの取り組みは着実に成果を生み、業績は回復軌道を確かなものとしています。
この結果、中期経営計画「K27」の達成に対して、明確な手ごたえを持つに至りました。しかし、挑戦はここで終わりません。K27は通過点であり、その先にこそ、私たちが目指す持続的成長の姿があります。
K27において私たちが重視してきたのは、量ではなく“質”の成長です。短期的な拡大ではなく、収益性と競争力を伴った成長基盤を築くことに注力してきました。
構造改革を通じて、事業ポートフォリオの輪郭は明確になり、資源配分の精度は高まりました。グローバルで戦うための意思決定のスピードと現場の自律性が備わり、デジタルを活用した経営の可視化も進んでいます。
これらはすべて、次の成長を実現するための“準備”です。
今後はこの基盤を土台に、成長を取りにいくフェーズへと舵を切ります。その中核となるのが「グローバル・シャープトップ」戦略です。これは、社会の変化に伴い重要度、必要度が高まるニーズである「社会的有用性」に対して、花王ならではの強みである「排他的独自性」を活かしたエッジの効いたソリューションで、世界No.1の貢献を果たす戦略です。
世界を市場と捉え、最も貢献できるエリアと事業を選び、「よきモノづくり」を通じて唯一無二の価値を創造することで、持続可能な社会にとってなくてはならない企業を目指します。
K27達成への手ごたえがあるからこそ、その先を見据え、より大きな成長機会に挑戦します。

成長戦略の中核にあるのが、長年磨き上げてきた精密界面制御技術です。異なる物質が接する界面を原子・分子レベルで設計・制御するこの技術は、容易に模倣できるものではありません。私たちは、この技術を単なる要素技術ではなく、「価値創出のエンジン」として位置づけています。
この技術は、圧倒的な知覚品質に優れる商品の創出や個人の特性や嗜好に合致する商品群の最適な組み合わせといった高いロイヤルティを生み出す分野において、競争力の源泉となっています。
さらに環境負荷低減と高機能化の両立、高次元の先端材料の製造といった成長分野においても、精密界面制御技術は不可欠な存在です。花王は産業貢献事業分野を有する企業であり、事業と技術の両面から環境負荷低減に取り組めるという、他にはない強みを持っています。
実際、花王の選択洗浄技術は、衣料用洗剤や身体用洗浄料で汚れだけに集中する「洗い分ける」原理を極め、半導体の精密洗浄技術に応用しています。こうした技術の積み重ねこそが、排他的独自性です。
私たちは、経済合理性を伴う社会価値と環境保全価値の向上が、花王の長期的な企業価値向上につながると確信しています。
衣料用洗剤「アタックZERO」は、独自界面活性剤Bio IOS®の搭載により、従来品比でエネルギー消費量を38%、水質汚染負担量を47%低減しました。
サイエンスの力で環境と事業の好循環を生み出す。これが花王の目指す姿です。
私たちは科学的マーケティングを強みとして進化させてきました。生活者理解を科学的に深め、データに基づいて商品価値を設計・伝達する。この取り組みはすでに成果を上げ、ブランド力と顧客ロイヤルティの向上につながっています。
近年は、小規模のエリアで試行を繰り返し、得られた精度の高いデータをもとに拡大戦略を実行するリーンスタートアップ型ビジネスモデルを進めています。
このモデルにおいては、AI戦略型マーケティングを最大限活用し、具体的な成功事例が生まれています。研究開発、マーケティング、サプライチェーンにおけるAI活用は、意思決定の質とスピードを高め、新たな価値創出を可能にしています。
私たちは今後、これらの分野への投資をさらに拡大します。技術・データ・AIを融合させることで、花王ならではの競争優位を一層強化していきます。

成長を加速させるためには、投資の質が問われます。私たちは今後も、すべての事業を同じように扱うことはしません。
競争優位性、成長性、資本効率を軸に、事業ポートフォリオを進化させ続けます。K27で培った財務規律のもと、成長が期待できる分野には積極的に投資し、そうでない分野については構造転換や見直しを進めます。
このメリハリある資源配分こそがK27とその先を見据えた成長の原動力です。
技術も事業も最終的に価値を生み出すのは人です。さらなる成長に向け、これまで以上に人財への投資を重視します。
2025年11月には、花王が大切にする「よきモノづくり」の理念を学ぶ共創の場として「佑啓」をすみだ事業場に開設しました。環境に配慮した木造5階建ての設計で「よきモノづくり」の本質を五感で学べる仕組みが整っています。多様なステークホルダーと価値を共創する拠点としても活用していきます。
社内での育成に加え、外部からの優秀なタレントの獲得も積極的に進めています。現在では、新卒と同程度のキャリア採用も行い、多様な知見や経験が組織に新たな刺激をもたらしています。
専門性を深める人、領域を超えて挑戦する人、多様な価値観を持つ人。それぞれが力を最大限に発揮できる環境を整え、グローバルで通用する人財と組織を育てていきます。

私たちのすべての取り組みの根底にあるのが「The Kao Way」です。139年前の創業以来、私たちが目指すものは、「人々と社会をきれいにして、笑顔を増やすこと」でした。献身的で利他的な精神は、花王の中核を支えています。
誠実に社会と向き合い、価値ある「よきモノづくり」を通じて貢献する。この企業理念は、時代が変わっても揺らぐことはありません。
K27の先に描くのは、単なる成長戦略ではありません。私たちがどのような企業でありたいのかを示す、次の挑戦です。
技術を核に、科学的マーケティングとDXを最大限活用し、このサイエンスの力で持続可能な社会に欠かすことのできない企業として、次の成長を実現していきます。