次のステップチェンジへ―花王の成長戦略とガバナンス
桜井 この数年で、花王の経営体制はかなり変わってきたと感じています。結果を出し、さらに成長していくために、経営陣だけでなく事業部レベルまで含めてリーダーの配置を見直し、「できる組織」をつくってきました。海外でも新しいリーダーシップ体制が整い始め、グローバルで成長戦略を描くための基盤は着実にできてきたと思います。
西井 2025年は、地政学リスクやインフレなど外部環境が厳しい年でした。その中で上手に舵取りをし、収益性を高めながら成長率を引き上げたことを評価しています。特に化粧品事業で6つのブランドに集中し、地域ごとの戦略にあてはめ、成果が出始めたことは象徴的でした。その裏にはマーケティング力と強いブランドがあります。花王が次の成長に向かう方向性は見え始めていると思います。
カサノバ 花王は日本市場でリーダーシップを発揮する一方で、DXやAIといった新たな取り組みを推進し、経営基盤をさらに強化しています。私は、これらが今後の成長にとって非常に重要になると考えています。

左から、社外取締役 サラ・カサノバ、桜井 恵理子、西井 孝明
桜井 花王の強みは顧客理解の深さです。どのお客さまがどのブランドを支持し、なぜ選ばれているのかを、データとサイエンスで深く理解しています。
「見えないままに選択、見えないままにスピードアップ」にならないことがとても大事です。顧客理解に基づいて意思決定できることが花王の強みです。ただ、日本では強い一方で、海外でも同じレベルでできているかには改善の余地があるでしょう。
西井 花王は慎重に意思決定をする会社です。それは弱みではなく、この会社の特徴だと思っています。一度決めた後の成長の確からしさを重視したマネジメントをする。それが花王の経営スタイルです。ただ、日本ほど強いポジションをまだ築けていない欧米市場では、そのやり方をどう進化させていくかが重要になるでしょう。
カサノバ この1年で私が強く感じているのは、意思決定のスピードをさらに高める必要があるという点です。グローバル市場では競争のスピードが非常に速くなっています。企業が成長を続けるためには、意思決定の速さが決定的に重要です。まさにここで、DXやAIへの投資が成果を生み始めています。花王は次のステージに進み、そうした投資を活かして、事業のスピードをさらに高めていく必要があります。

意思決定のスピードを、
さらに加速させていきます。
社外取締役
サラ・カサノバ
桜井 この数年は、まず財務基盤を整え、業績を回復させることに力を注いできました。その結果、どこに成長の芽があるのかが見えてきています。これからは、その芽を実際の成長につなげていく段階です。
グローバルでの成長と、AIやサイエンスを基盤とした新しい価値創出が、次の花王の軸になると思います。取締役会でも、花王が長期的に目指す姿を見据えながら議論を重ねています。
カサノバ 日本市場でのリーダーシップを維持しながら、欧州および米国におけるプレゼンスをいかに強化していくか。それが、今私たちが直面している課題です。
西井 今は、その成長をどう実現していくかが問われる段階だと思います。K27の残りは2年弱です。2026年は、成長のレベルをもう一段引き上げる年になるでしょう。
世界で勝てる強みがある。
それをどう磨くかですね。
社外取締役
西井 孝明

桜井 企業のフェーズによって、取締役会の役割も変わります。業績回復の段階では財務基盤を強くすることが重要でしたが、これからは将来の方向性を見据えた議論がより重要になります。私は、取締役会は企業の未来の方向を示す羅針盤のような役割を果たす場だと思っています。今年から議長を務めるにあたり、年間を通して社長とも密にコミュニケーションを取りながら、取締役会として重要なテーマについてしっかり議論を重ねていきたいと考えています。
西井 この1年で、取締役会の多様性はさらに広がりました。新しいメンバーが加わり、ブランディングや生活者起点といった、より戦略的な議論が増えてきています。そうした視点が加わることで、どこに資源を集中し、どのブランドで成長を実現していくのかという議論も深まってきました。取締役会としても、そうしたテーマについてしっかり議論していきたいと思います。同時に、K27の先の成長を見据え、それを担うグローバル人財をどう育てていくかも大きなテーマです。
カサノバ 私は生活者や市場について、「私たちは何を把握しているのか、何を前提としているのか、そして何をまだ学ぶ必要があるのか」と問いかけています。そうした問いを持ち続けることが重要だと考えています。
重要なのは、取締役会が本当に重要な領域に焦点を当てることです。すべてを同じように重要だと扱ってしまえば、結果として何も重要ではなくなってしまいます。最も重要な成長ドライバーに議論を集中させることで、取締役会はより大きな価値を生み出せると考えています。
桜井 人財はこれからの花王にとって非常に重要なテーマです。そうした議論をさらに深めていく上でも、社外取締役として加わられた奥山さんのような新たな視点は大きな意味があると思います。2026年の取締役会が、さらに進化していくことを期待しています。
西井 K27の中で掲げている「グローバル・シャープトップ」は、花王の強みをさらに伸ばしていく方向性だと思います。これからは、どこでイノベーションを起こし、どのブランドやカテゴリーで世界トップレベルの強みを築くのか。その議論が次の成長につながるでしょう。
桜井 その意味では、花王はもっと成長に対してハングリーであってもいいのではないかと思います。次の段階の成長には、もう一段のステップチェンジが必要です。取締役会としても、執行側とともに大きなビジョンを議論しながら、その挑戦を後押ししていきたいと思っています。
カサノバ 花王には非常に大きな可能性があります。強いブランド、卓越した技術、そして優れた人財を有しています。グローバル市場には大きな成長機会があります。ただ、これまでと同じやり方を続けているだけでは、まったく異なる次元の成果は実現できません。進め方を変える勇気も必要です。取締役会としても、その挑戦をしっかり支え、花王がグローバルでの存在感をさらに高めていけるよう後押ししていきたいと考えています。

本当の成長というのは、
やはりステップチェンジだと思うんです。
社外取締役 取締役会議長
桜井 恵理子