花王は、酸化成分であるヒドロキシヒドロキノン(HHQ)を低減したクロロゲン酸類を含有するコーヒーにおいて、血管内皮機能改善に起因した血圧改善効果を報告しております。本研究過程において、クロロゲン酸類による血管内皮機能改善メカニズム、および血管内皮機能改善が酸化成分HHQにより阻害されるメカニズムを見出しました(図-1)。以下に本研究について概説いたします。
各種降圧阻害剤による試験、および一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤による試験から、クロロゲン酸類の血管内皮機能の改善にNOが関与することが示されました。よってクロロゲン酸類摂取による血管機能改善の作用メカニズムは、血管内皮細胞由来の血管弛緩因子であるNOが関与する、血管機能の調節作用と推察されます(図-1 ①)*1,2 。
クロロゲン酸類およびその生体内での代謝産物が血管内皮細胞に与える影響として、以下の3つの知見が確認されております。1つ目は、クロロゲン酸類自体の活性酸素除去による作用(図-1 ②)*3 、2つ目は、eNOS(血管内皮NO合成酵素)の活性化による作用(図-1 ③)*4 、3つ目は、NADPHオキシダーゼ(活性酸素生成酵素)阻害(図-1 ④)による作用*5 です。これらの作用は、いずれも血管内皮細胞でのNOのバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を向上させるように作用していると推察されます。
クロロゲン酸類の血管内皮機能改善は、酸化成分ヒドロキシヒドロキノン(HHQ)由来の活性酸素により阻害されると推察しております(図-1 ⑤)。以下、本研究について概説いたします。
動物などを用いた試験により、焙煎コーヒーにはクロロゲン酸類が含まれているにもかかわらず、降圧作用が認められませんでした。この焙煎コーヒーを分画操作することにより、降圧阻害成分HHQを同定しました。さらに動物試験において、クロロゲン酸類の代表成分である5-カフェオイルキナ酸を継続摂取した場合に認められる血管内皮機能改善作用は、HHQを同時に継続摂取することにより阻害されることを確認しました。HHQによる阻害作用は、SOD(super oxide dismutase)により減弱したことから、HHQ由来の活性酸素が阻害に関与していると考えられました。
以上より、HHQが活性酸素の発生を介して一酸化窒素(NO)のバイオアベイラビリティを低下させ、この作用がHHQによるクロロゲン酸類の血管機能改善の阻害メカニズムであると推察されます*5 。
コーヒークロロゲン酸による血圧低下メカニズム解説動画(2分32秒)がございます。是非ご覧ください。
コーヒークロロゲン酸の機能性
Part1.血圧低下メカニズム