クロロゲン酸類の体脂肪低減メカニズム

クロロゲン酸類を添加した餌を用いた動物試験、およびクロロゲン酸類含有コーヒーを用いたヒト試験により、クロロゲン酸類の体脂肪低減メカニズムを検証した結果を示します。

(1)ヒトの体重と消費エネルギーの関係

ヒトは、食べ物から摂取したエネルギーを毎日の生活の中で消費しています。この摂取エネルギー(エネルギー摂取量)と消費エネルギー(エネルギー消費量)の状態によって、ヒトの体重の増減が決まります。
即ち、エネルギー摂取量に比べてエネルギー消費量が少ない場合は、消費し切れなかった分のエネルギーが体脂肪として蓄積され、体重が増え、肥満となります。反対に、エネルギー摂取量に比べてエネルギー消費量が多い場合は、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが上回った分は体脂肪を燃焼させてエネルギーを得るため、体重が減少します。

(2)クロロゲン酸類の体脂肪低減メカニズム

クロロゲン酸類の体脂肪低減の作用メカニズムは、「脂肪燃焼の亢進(エネルギーとして脂肪が消費されやすくなったため)」であると考えられています*1 。この脂肪燃焼亢進作用は、クロロゲン酸類の摂取により、主として肝臓において脂肪酸の燃焼が亢進したためであると推察されます*2 。作用メカニズムの概要(図1)、および、根拠となるデータを示します。

1. クロロゲン酸類の継続摂取により、肝臓においてACC2* の遺伝子発現、および、ACC活性が低減する。〔図1 ①〕

2. ACC活性の低減により、アセチルCoAからの反応生成物であるマロニルCoAが減少する。〔図1 ②〕

3. マロニルCoAの減少により、CPT-1の活性が高まる。〔図1 ③〕
(マロニルCoA は、CPT-1** を阻害することが知られている。)

4. CPT-1の活性が高まることにより、脂肪酸のミトコンドリア内への輸送が増加し、脂肪酸の燃焼が亢進する。〔図1 ④〕
(CPT-1は、脂肪酸のミトコンドリアへの輸送を触媒することが知られている。)

* ACC2 (アセチルCoAカルボキシラーゼ2)
アセチルCoAからマロニルCoAを産生する酵素;マロニルCoA 産生を介してCPT-1の活性を阻害することにより脂肪酸燃焼を阻害する。

** CPT-1 (カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1)
アシルCoAとカルニチンをアシルカルニチンに変換する酵素;脂肪酸燃焼を亢進する。ACC2の反応生成物のマロニルCoAにより、活性が阻害される。

図1 クロロゲン酸類が脂肪燃焼を促進するメカニズムを示す図。肝臓でACC2の活性が低下し、マロニルCoAが減少、これによりCPT-1の活性が上昇し、脂肪酸がミトコンドリアに運ばれ燃焼される。その結果、体脂肪が低減される。

図1 作用メカニズムの概要

1.クロロゲン酸類の継続摂取による脂肪燃焼の亢進(ヒト・動物)

〔酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有コーヒーを用いたヒト試験〕
本試験は、7名の健常成人男性を用い、ダブルブラインドプラセボ対照クロスオーバー試験法で実施しました。被験品は、クロロゲン酸類を含む飲料(300mg/本)またはプラセボ飲料としました。試験期間中は、被験品以外のコーヒーを含む飲食品およびカテキンを含む茶類の摂取を禁止しました。試験は、クロロゲン酸類を含む飲料またはプラセボ飲料を1日1本、1週間摂取し、ウォッシュアウト期間をはさむクロスオーバーにより評価を行いました。摂取1週間後を評価日とし、評価日の前日は21時より絶食、21時以降は水のみ飲用可としました。評価日の呼気測定は、安静時および被験品摂取後に実施しました。
その結果、摂取1週間後における食後2時間までの脂肪燃焼量および酸素消費量(エネルギー消費量)は、クロロゲン酸類を含む飲料摂取により、有意な増加が認められました(図2)*1

図2 クロロゲン酸類摂取がヒトの酸素消費量と脂肪燃焼量に与える影響を示す棒グラフ。ヒトではプラセボ飲料に比べて試験飲料で酸素消費量と脂肪燃焼量が増加した。

図2 クロロゲン酸類の継続摂取後の酸素消費量および脂肪燃焼量

〔動物試験〕
C57BL/6J マウス(食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性)を2群に分け、高脂肪・高ショ糖の食餌を与えた高脂肪食群、または高脂肪・高ショ糖食に1%コーヒーポリフェノール製剤(CPP)を添加した食餌を与えた1%CPP配合群とし、9週目に24時間に渡り呼気測定を実施(明期; 7:00~19:00、暗期; 19:00~7:00)し、酸素消費量を測定しました。また、同時に行動量も測定しました。
その結果、高脂肪食群と比較して1%CPP配合群において、酸素消費量が有意に高くなりました。この時、高脂肪食群と1%CPP配合群間で活動量に差はありませんでした(図3)*2

図3 クロロゲン酸類摂取がマウスの酸素消費量と活動量に与える影響を示す棒グラフ。高脂肪食群に比べて1%CPP配合群の酸素消費量高いが、活動量には差がない。

図3 クロロゲン酸類の継続摂取後の酸素消費量および活動量

2.肝臓における脂肪酸燃焼の亢進

C57BL/6J マウス(食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性)を2群に分け、高脂肪・高ショ糖の食餌を与えた高脂肪食群、または、高脂肪・高ショ糖食に1%CPPを添加した食餌を与えた1%CPP配合群とし2週間飼育しました。2週間の飼育後、肝臓の組織サンプルから総RNAを調製し、定量的PCR法によりACC2遺伝子の発現量を測定しました。さらに肝臓の組織サンプルを用いて、ACC2遺伝子が関与するACCの酵素活性およびACCの反応生成物であるマロニルCoA量を定量しました。
その結果、1%CPP摂取により、ACC2の遺伝子発現量およびACC活性が有意に低減しました(図4)。また、脂肪燃焼を阻害するマロニルCoA量が有意に減少していました(図5)*2

図4  マウスの肝臓におけるACC2遺伝子発現量とACC活性を示す棒グラフ。高脂肪食群に比べて1%CPP配合群は、ACC2遺伝子発現量とACC活性が有意に低減した。

図4 クロロゲン酸類の継続摂取後のACC2変化

図5 マウスの肝臓におけるマロニルCoAの定量値を示した棒グラフ。1%CPP配合群では高脂肪食群に比べて肝臓のマロニルCoAの量が少なかった。

図5 クロロゲン酸類の継続摂取後のマロニルCoA量の変化

なお、C57BL/6J マウスを用いて、クロロゲン酸類摂取による糞便中の脂肪含量の変化を検証したところ、糞便への脂肪排泄への影響は認められませんでした。

3.クロロゲン酸による内臓脂肪低減メカニズム(解説動画)

コーヒークロロゲン酸による内臓脂肪低減メカニズム解説動画(2分)がございます。是非ご覧ください。

コーヒークロロゲン酸の機能性
Part2.内臓脂肪低減メカニズム

引用文献

  • * 1 Ota N. et al., J Health Sci, 56(6), 745-751, 2010
  • * 2 Murase T. et al., Am J Physiol Endocrinol Metab, 300, E122-E133, 2011
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