クロロゲン酸類を主成分とするコーヒーポリフェノール製剤(CPP)を用いた動物試験、および酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有コーヒーを用いたヒト試験によりクロロゲン酸類の体脂肪低減メカニズムを検証した結果を示します。
ヒトは、食べ物から摂取したエネルギーを毎日の生活の中で消費しています。この摂取エネルギー(エネルギー摂取量)と消費エネルギー(エネルギー消費量)の状態によって、ヒトの体重の増減が決まります。
即ち、エネルギー摂取量>エネルギー消費量の場合、消費し切れなかった分のエネルギーが体脂肪として蓄積され、体重が増え、肥満となります。反対に、エネルギー摂取量<エネルギー消費量の場合、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが上回った分のエネルギーを蓄積された体脂肪を燃焼させて、エネルギーを消費するので、体重が減少します。
クロロゲン酸類の体脂肪低減の作用メカニズムは、“脂肪消費の亢進(エネルギーとして脂肪が消費されやすくなったため)”であると考えられます*1 。この脂肪消費亢進作用は、クロロゲン酸類の摂取により、主として肝臓において脂肪酸の燃焼が亢進したためであると推察されます*2 。以下に「図-5 作用メカニズムの概要」を説明し、根拠データを後に示します。
脂肪酸燃焼が亢進するメカニズムとしては、以下の一連の作用を推察しております。
1. クロロゲン酸類の継続摂取により、肝臓において、ACC2* の遺伝子発現、ACC活性が低減する。〔図5 ②-1〕
2. ACC活性の低減により、アセチルCoAからの反応生成物であるマロニルCoAが減少する。〔図5 ②-2〕
3. マロニルCoAの減少により、CPT-1の活性が高まる。〔図5 ②-3〕
(マロニルCoA は、CPT-1** )を阻害することが知られている。)
4. CPT-1の活性が高まることにより、脂肪酸のミトコンドリア内への輸送が増加し、脂肪酸の燃焼が亢進する。〔図5 ②-4〕
(CPT-1は、脂肪酸のミトコンドリアへの輸送を触媒することが知られている。)
* ACC2 (アセチルCoAカルボキシラーゼ2)
アセチルCoAからマロニルCoAを産生する酵素;マロニルCoA 産生を介してCPT-1の活性を阻害することにより脂肪酸燃焼を阻害する。
** CPT-1 (カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1)
アシルCoAとカルニチンをアシルカルニチンに変換する酵素;脂肪酸燃焼を亢進する。ACC2の反応生成物のマロニルCoAにより活性が阻害される。
〔酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有コーヒーを用いたヒト試験〕
本試験は、7名の健常成人男性を用い、ダブルブラインドクロスオーバー試験法で実施しました。被験品は、クロロゲン酸類を含む飲料(300mg/本)およびプラセボとしました。試験期間中は、被験品以外のコーヒーを含む食品およびカテキンを含む茶類の摂取を禁止しました。試験は、被験品摂取期間として1週間を設定し、クロロゲン酸類を含む飲料またはプラセボを1日1本摂取させ、ウォッシュアウト期間をはさみ、クロスオーバーにより評価を行いました。摂取1週間後に評価日を設けました。評価日の前日21時より、絶食とし以降は、水のみ飲用可としました。評価日の呼気分析は、安静時および被験品摂取後に測定しました。
その結果、摂取1週間後における食後2時間までの脂肪消費量、酸素消費量(エネルギー消費量)を評価したところ、クロロゲン酸類を含む飲料摂取により、脂肪消費量および酸素消費量の有意な増加が認められました(図-6)*1 。
〔動物試験〕
C57BL/6J マウス(食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性)を2群に分け、コントロール群(高脂肪・高蔗糖食)、1%コーヒーポリフェノール(CPP)群(高脂肪・高蔗糖食にCPPを1%添加した食餌)とし、9週目に24時間(明期;7:00~19:00、暗期;19:00~7:00)に渡り呼気分析を実施しました。呼気分析データにより、脂肪消費量、酸素消費量を算出しました。また、行動量も測定しました。
その結果、コントロール群と比較して1%CPP群において、脂肪消費量が有意に高くなりました(図-6)。また、酸素消費量においても、1%CPP群で有意に高くなりました(図-6)*2 。なお、コントロール群と1%CPP群間で行動量に差はありませんでした。
C57BL/6J マウス(食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性)を2群に分け、コントロール群(高脂肪・高蔗糖食)、1%コーヒーポリフェノール(CPP)群(高脂肪・高蔗糖食にCPPを1%添加した食餌)とし2週間飼育しました。2週間の飼育後、肝臓の組織サンプルから総RNAを調製しました。本サンプルを用いて定量的RT-PCRにより遺伝子発現量を評価し、またACCの酵素活性を測定しました。また、肝臓の組織サンプルを調製し、ACC2の反応生成物であるマロニルCoA量を定量しました。
その結果、1%CPP摂取により、ACC2の遺伝子発現およびACC活性が有意に低減しました(図-7)。また、マロニルCoA量が有意に減少していました(図-8)*2 。
なお、C57BL/6J マウスにより、クロロゲン酸類摂取による糞便中の脂肪含量を検証したところ、糞便への脂肪排泄への影響は認められませんでした。
コーヒークロロゲン酸による血圧低下メカニズム解説動画(1分59秒)がございます。是非ご覧ください。
コーヒークロロゲン酸の機能性
Part2.内臓脂肪低減メカニズム