クロロゲン酸類を添加した餌を用いた動物試験、およびクロロゲン酸類含有コーヒーを用いたヒト試験により、クロロゲン酸類の体脂肪低減効果を検証した結果を示します。
クロロゲン酸類の15週間継続摂取による体脂肪低減効果を検証しました。評価群は、C57BL/6J マウス(食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性)を4群に分け、低脂肪・低ショ糖の食餌を与えた群をコントロール群とし、高脂肪・高ショ糖の食餌を与えた群を高脂肪食群、高脂肪食にクロロゲン酸類を主成分とするコーヒーポリフェノール製剤(CPP)を0.5%添加した食餌を与えた群を0.5%CPP配合群、同様に高脂肪食に1%CPPを添加した食餌を与えた群を1%CPP配合群として、15週間飼育しました。
15週間飼育後に体重を測定し、高脂肪食群と0.5%CPP配合群、および1%CPP配合群を比較しました。
その結果、高脂肪食群はコントロール群と比較して体重が有意に増加し、高脂肪食にCPPを添加すると、体重増加は用量依存的に抑制されました(図1;P < 0.001、二元配置分散分析)*1 。なお、高脂肪食群とCPPを添加した2群の間に、食餌の摂食量の差はありませんでした。
図1 クロロゲン酸類継続摂取による体重抑制効果
15週間飼育後に解剖を行い、主な内臓脂肪である白色脂肪組織(腎周囲脂肪、副睾丸周囲脂肪、腸管膜脂肪、後腹膜脂肪)を採取して重量を測定しました。
その結果、高脂肪食群に対してCPP配合群では、用量依存的な内臓脂肪重量の抑制が認められました(図2)。
図2 クロロゲン酸類継続摂取による内臓脂肪蓄積抑制効果
15週目に解剖を行い、採取した肝臓より脂質を抽出して肝臓に蓄積された脂肪量を測定しました。
その結果、肝臓中の中性脂肪と総コレステロールは高脂肪食群で顕著に増加しましたが、CPP配合群では用量依存的に抑制されていました(図3)。また肝臓をオイルレッドOで染色し中性脂肪の局在を観察すると、高脂肪食群では肝臓切片が広範囲に赤く染色されましたが、1%CPP配合群ではほとんど染色されず、視覚的にも肝臓への中性脂肪の蓄積が抑制されることが示されました*1 。
図3 クロロゲン酸類継続摂取による肝臓への脂肪蓄積抑制効果
15週目に解剖を行い、内臓脂肪の一つである副睾丸周囲白色脂肪の一部を用いて、炎症反応に対するCPPの影響を検討するためマクロファージマーカーであるF4/80の免疫染色を行いました。その結果、肥満を呈した高脂肪食群の白色脂肪組織においてマクロファージの浸潤が認められましたが、1%CPP配合群ではマクロファージの浸潤が抑制されていました。そこでさらに、定量的PCR法を用いて、白色脂肪組織中のマクロファージマーカー(F4/80、CD68)および炎症性サイトカイン(MCP-1;Monocyte Chemotactic Protein-1)の遺伝子発現量を測定しました。その結果、白色脂肪組織におけるF4/80、CD68およびMCP-1の遺伝子発現量は、高脂肪食群で顕著に増加していましたがCPP配合群では有意に抑制されていました(図4)*1 。
図4 クロロゲン酸類継続摂取による白色脂肪組織の炎症反応への影響
飼育14週目に、3時間絶食後の血液を採取し、血清を調製しました。血清中のレプチン、中性脂肪、遊離脂肪酸、総コレステロール、グルコース、インスリン、GOT、GPTに関して、CPP摂取が各種血液成分に与える影響について検討を行いました。
その結果、レプチン、総コレステロール、グルコース、インスリンの血中濃度は高脂肪食群と比較して、CPP配合群で用量依存的に抑制されました(表1)*1 。
表1 クロロゲン酸類の血液成分への影響
クロロゲン酸類をヒトが継続摂取した場合の体脂肪に与える影響を検証しました。BMIが25 kg/m2以上30 kg/m2未満、かつ、腹部の内臓脂肪面積が80 cm2以上170 cm2未満の成人男女を対象にして、ダブルブラインドプラセボ対照並行群間比較法で試験を実施しました。試験飲料摂取期間を12週間とし、飲料摂取開始前に4週間の事前観察期間を設けました。事前観察開始時の測定データに基づき、被験者をランダムに2群(クロロゲン酸類摂取群;Active、プラセボ摂取群;Placebo)に分けました。試験飲料摂取期間中、Activeは酸化成分を低減したクロロゲン酸類配合飲料(300mg/本)を、Placeboはプラセボ飲料を1日1本摂取しました。プラセボ飲料は、クロロゲン酸類を含まないコーヒー飲料としました。解析対象は、事前観察期間中に腹部脂肪面積の変化が少なかった者としました。
検査項目は、腹部脂肪面積(内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、全脂肪面積)、理学検査項目として身長、体重、体脂肪率、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、血圧、その他項目として、血液学検査、血液生化学検査、尿検査、および問診としました。検査は、試験飲料の摂取開始時を0週として、-4、0、4、8、12および16週目に実施しました。
被験者109名(Active 53名、Placebo 56名)について解析を行いました。Activeでは内臓脂肪面積の有意な低減が認められたのに対してPlaceboでは変化が認められませんでした。また、12週目の0週目に対する変化量(Δ12週)は、Activeでは-4.4±2.1 cm2、Placeboでは3.6±2.3 cm2で、クロロゲン酸類摂取による内臓脂肪面積の有意な低減効果が認められました。また皮下脂肪面積および全脂肪面積においても、Activeで有意な低減効果が認められました(表2)*2 。
体重、BMI、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、および血圧においてクロロゲン酸類摂取による有意な低減効果が認められました(表3)。
表2 腹部脂肪面積の変化
表3 理学検査項目の変化