安全性試験の結果は、世界中で科学的に受け入れられ、認められることが重要です。そのためには、国際的な安全性試験法ガイドラインに則った試験を行う必要があります。例えば、国際的に受け入れられているガイドラインに沿った発がん性試験法で行い、その結果、発がん性が認められなければ世界中で「発がん性はない」と判断されます。
代表的な安全性試験法ガイドラインには、下記のものがあります。
毎日食べ続けても大丈夫か、いろんな場面を想定し、安全性を確認することが重要です。そのために、以下の様な種々の試験を行います。
医薬品や食品の安全性を評価する検査や試験が、正確かつ適切に行われたことを保証するための基準です。試験施設の構造設備、標準操作手順書、動物の管理、試験計画書や最終報告書の作成等を細かく規定し、また、信頼性保証部門設置を義務とし、そこが試験内容を確認、適合していることを証明します。公的機関による定期的(3年毎)な適正確認が必要です。
細胞内にはジアシルグリセロールを介した細胞増殖を促すシグナル伝達系が存在します。一方、強い発がんプロモーター(促進)として知られるホルボールエステル(TPA)が、細胞膜を透過し、細胞内の本シグナル系にあるプロテインキナーゼC(蛋白質リン酸化酵素、PKC)を活性化することにより、発がんを促進することが知られています。
図-2 細胞内のジアシルグリセロールを介したシグナル伝達系
がんが発生するためには、まず遺伝子に異常がおき、正常な細胞が突然変異を起こし、がんの元となる細胞ができる段階(発がんイニシエーション)と、こうした細胞の増殖を促進する段階(発がんプロモーション)の2つが関与すると考えられています(発がん2段階説)。
図-1 発がんのメカニズム
(1)発がんイニシエーションにより遺伝物質(DNAや染色体など)に障害を与える作用を遺伝毒性といい、遺伝毒性試験により確認します。なお、「遺伝」とありますが、子孫にまで遺伝して影響を及ぼす作用を直接意味する用語ではありません。発がんイニシエーション作用を示すものとしては、放射線、紫外線、カビ毒、たばこに含まれるタールや、焼き魚のコゲなどが知られています。
(2)異常となった細胞の増殖を促進する発がんプロモーション作用は、発ガンプロモーション試験により確認します。発がんプロモーション作用に関しては、高脂肪食、リノール酸、食塩やアスコルビン酸ナトリウム(ビタミンCのナトリウム塩)などの食品成分にもこうした作用があることが報告されています。
(3)実際にがん化するかの確認は、発がん性試験により行います。
遺伝毒性(変異原性)試験は、発がんの最初の段階である物質による遺伝子およびそれを含む染色体への損傷を短期かつ簡便に検出するのに用いられます。遺伝毒性の有無は、以下の様な複数の試験結果より、総合的に判定します。
代表的な遺伝毒性試験には以下の試験があります。
げっ歯類を用いた2段階発がんモデルの試験系、遺伝子改変(トランスジェニック)げっ歯類を用いた発がんモデルの試験系などがあります。
遺伝子改変動物とは、遺伝子を組み換えた動物で、本来持っていない遺伝子を組み入れた動物です。また、もともと持っている遺伝子の一部を機能しないように破壊した動物(ノックアウト動物)を含めて取り扱うこともあります。
遺伝子改変動物は毒性等の機序の解明や発がん物質の短期スクリーニングには有用な場合があるものの、定量的な用量反応データが得られないこと、これまでのところ諸外国や国際機関において十分なバリデーションが行われた試験系がないことが課題です。遺伝子改変動物は国際的にも、食品健康影響評価の参考として扱われています。
例えば医薬品の場合、国際的に受け入れられているガイドラインに沿ったICHガイダンスに基づき、発がん性試験は以下の試験を行うこととされています。(「医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について」、食審査発第1127001号(H20.11.27)ICHガイダンスに基づく改正)
げっ歯類における医薬品のがん原性は、腫瘍の発生頻度や発生時期、ヒトとげっ歯類における薬物動態の比較、および、げっ歯類での発がんがヒトと関連するか否かについての情報が得られるような補助的研究あるいはメカニズム研究を基に評価を行います。