機能性油脂研究 ジアシルグリセロール油

脂肪酸2本で構成された油脂ジアシルグリセロールは、1980年代から、まずは物性に着目した研究が始まり、1990年代に入り栄養特性に着目した研究が行われるようになりました。食後の血中中性脂肪の上昇抑制効果と継続摂取による体脂肪低減の効果から1998年に「エコナクッキングオイル」として特定保健用食品の表示が許可されました。商品の発売後も、ジアシルグリセロール油の有効性検証を肥満者に対する効果にとどまらず、2型糖尿病患者や糖尿病性腎症患者、小児肥満など病態に対する検証試験、動物を用いたメカニズム試験を継続的に行い、知見を積み重ねています。

また、ジアシルグリセロール油は医薬品もしくは国際的に受け入れられているガイドラインにしたがって安全性評価試験が実施されており、急性毒性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、長期栄養試験、発がん性試験、生殖毒性試験、加熱処理ジアシルグリセロール油の安全性試験、発がんプロモーション試験など、いずれの試験においても、一般の食用油と比較して安全性に問題は認められませんでした。

しかし、2009年6月になって花王独自の分析によりジアシルグリセロール油にグリシドール脂肪酸エステルが一般食用油に比べて多いことがわかり、厚生労働省に報告しました。グリシドール脂肪酸エステルは発がん性を含めて安全性の懸念を示す報告はないものの、分解すると発がん性が懸念されるグリシドールが生成する可能性が指摘され、食品安全委員会において審議され結果が以下の通り取りまとめられました。

  1. ジアシルグリセロール油はすでに流通しておらず、摂取した期間、量、年齢等が人により異なるとともに、各人の背景生活条件等の交絡要因が様々なため、過去に摂取した個人の生涯発がんリスクを判断することは困難である。
  2. 実験動物において、グリシドール脂肪酸エステルを不純物として含む経口投与によるジアシルグリセロール油の発がん促進作用は否定され、問題となる毒性影響は確認されなかった。

また、この評価を食品安全委員会に諮問を依頼した厚生労働省からは、「これら(ジアシルグリセロール油)製品を摂取したことによる健康被害事例は報告されていないことから、直ちに重大な健康影響があるものとは考えておりません」とのコメントが出されております。

現在は、失効した特定保健用食品の再申請と、早期の商品化を目指しています。これらの早期実現のために世界と共同したグリシドール脂肪酸エステルの高精度分析方法の開発や低減化生産方法の開発を行っております。

本ホームページでは、ジアシルグリセロール油の有効性、安全性、およびグリシドール脂肪酸エステルの安全性評価の詳細内容や進捗を報告いたします。

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