用語説明

肥満

ヒトの体は、水分、脂肪、タンパク質、ミネラル、糖質などの成分から成り立っています。このうち、脂肪が増え、体全体に占める脂肪の割合が高い状態を肥満といいます。肥満には内臓に脂肪が多くつくタイプ(内臓脂肪型肥満)と、皮下の下に多くつくタイプ(皮下脂肪型肥満)があることがわかっています。
内臓脂肪型肥満では、糖尿病をはじめとする生活習慣病が多発していることが報告されています。

図1 CTイメージや内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満を示した図。肥満には2つのタイプがあることを示しており、左側は内臓脂肪型肥満で、中年男性に多いリンゴ型体型。右側は皮下脂肪型肥満で、女性に多い洋ナシ型体型。

図1 CTイメージ/内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

脂質異常症

ヒトの血液の中には、「コレステロール」「中性脂肪」などの脂質が含まれており、それぞれ、体にエネルギーを供給したり、体の組織をつくるなど、重要な働きをしています。しかし、食生活などが原因となって、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが基準より高いか、HDLコレステロールが基準より低い場合を「脂質異常症」と呼びます。脂質異常症になると、血管壁にコレステロールなどが沈着して、動脈硬化を起こしやすくなります。動脈硬化が起これば、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞につながる危険が高くなります*1

LDLコレステロール、HDLコレステロール

動脈硬化が生じた血管の壁では、コレステロールが蓄積されています。これはLDLコレステロールにより運搬されたコレステロールが、血管壁の細胞外に蓄えられたり、LDLコレステロールが変性し、マクロファージに取り込まれ動脈壁へ蓄積します。すなわち、LDLコレステロールが多いと動脈壁にコレステロールがたまりやすく、動脈硬化を促進させる方向に働きます。
一方、HDLコレステロールは組織のコレステロールを引き抜き、抗動脈硬化作用を示す働きをします。

脂肪酸の分類

脂肪酸は、1個ないし複数個の炭化水素(CH2)の連結した鎖(炭化水素鎖)からなり、その鎖の両末端はメチル基(CH3)とカルボキシル基(COOH)です。
脂肪酸の基本的な化学構造:CH33(CH22nCOOHからなっています。脂肪酸の種類は炭素数、二重結合の数、二重結合の位置によって、次のように分類されます。

  • (1)短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸
    脂肪酸の炭素数によって分類されます。脂肪酸に含まれる炭素数(COOH中の C を含む)が2~6のものを短鎖脂肪酸、8~12のものを中鎖脂肪酸、14以上のものを長鎖脂肪酸といいます。天然の油脂に含まれる脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸です。
  • (2)飽和・不飽和(一価不飽和・多価不飽和)脂肪酸
    脂肪酸のアルキル基(カルボン酸を含まない部分)に含まれる二重結合の数による分類。二重結合を持たないものを飽和脂肪酸、二重結合を持つものを不飽和脂肪酸と呼びます。さらに、不飽和脂肪酸は二重結合の数によって、1つ持つものは一価の不飽和脂肪酸、2つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。
  • (3)n-3、n-6系
    脂肪酸中の末端のメチル基(CH3)中の炭素から最も近い二重結合の位置を数えます。
    n-3(ω3):CH3から3番目(C)に二重結合を持つ脂肪酸
    n-6(ω6):CH3から6番目(C)に二重結合を持つ脂肪酸
  • (4)分類例

表2 飽和脂肪酸

種類 名称 化学式 鎖の長さ
C4:0 酪酸 CH3(CH2)2COOH 短鎖
C6:0 カプロン酸 CH3(CH2)4COOH 短鎖
C8:0 カプリル酸 CH3(CH2)6COOH 中鎖
C10:0 カプリン酸 CH3(CH2)8COOH 中鎖
C12:0 ラウリン酸 CH3(CH2)10COOH 中鎖
C14:0 ミリスチン酸 CH3(CH2)12COOH 長鎖
C16:0 パルミチン酸 CH3(CH2)14COOH 長鎖
C18:0 ステアリン酸 CH3(CH2)16COOH 長鎖
C20:0 アラキン酸 CH3(CH2)18COOH 長鎖
C22:0 ベヘン酸 CH3(CH2)20COOH 長鎖
C24:0 リグノセリン酸 CH3(CH2)22COOH 長鎖

脂肪酸の表示記号は、例えば炭素数18の飽和脂肪酸では18:0あるいはC18:0、炭素数18、二重結合3個の不飽和脂肪酸では18:3あるいはC18:3です。

表3 不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸
C16:1 パルミトレイン酸 CH3(CH2)5CH=CH(CH2)7COOH 長鎖 一価不飽和, n-7
C18:1 オレイン酸 CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH 長鎖 一価不飽和, n-9
C18:2 リノール酸 CH3(CH2)4(CH=CH)2(CH2)6COOH 長鎖 多価不飽和, n-6
C18:3 α-リノレン酸 CH3CH2(CH=CH)3(CH2)6COOH 長鎖 多価不飽和, n-3
C18:3 γ-リノレン酸 CH3(CH2)4(CH=CH)3COOH 長鎖 多価不飽和, n-6
C20:4 アラキドン酸 CH3(CH2)4(CH=CH)2(CH2)4COOH 長鎖 多価不飽和, n-6
C20:5 EPA CH3(CH2)4(CH=CH)5COOH 長鎖 多価不飽和, n-3
C22:6 DHA CH3(CH2)4(CH=CH)6COOH 長鎖 多価不飽和, n-3

ヒューマンカロリメーター

ヒューマンカロリメーターは小さなホテルの1室のようにベット、トイレなどが整えられています。温度、湿度、空気の循環がコントロールされた空間で、ヒトが日常生活に近い環境で過ごす時のエネルギー消費量を、長時間にわたり測定できる画期的な装置です。室内に出入りする空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化からエネルギー消費量を測定する事ができ、さらにどの栄養素が燃焼して産生されたエネルギーなのか算出することもできます。

群間比較試験

治験における試験デザインの1つで、現在、最も一般的な治験デザインです。
薬剤及び治療法の効果を評価するため、被験者を被検薬群(処置を受ける群)と対象薬群(プラセボまたは実薬、処置を受けない群)に無作為に割り付け、各群同時並行に指定された期間投与し、結果を比較評価して、薬剤及び治療法の効果を検討する方法。
通常は、二重盲検法によって行われる場合が多く、二重盲検試験の代表的な試験デザインとなっています。

クロスオーバー比較試験

治験における試験デザインの1つで、交差試験または交互試験とも呼ばれます。
2群の各被験者に被験薬と対照薬を交互に時期をずらして投与し、それぞれの結果(反応)を集計し評価する試験方法。

時期1 時期2
A群: 被験薬 対照薬
B群: 対照薬 被験薬

比較的症状の安定している慢性の疾患で、傾向変動が見られず、薬剤の治療効果が可逆的な場合に適している試験方法です。

引用文献・資料

  • * 1 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/02_230210.pdf
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