用語説明

肥満

ヒトの体は、水分、脂肪、タンパク質、ミネラル、糖質などの成分から成り立っています。このうち、脂肪が増え、体全体に占める脂肪の割合が高い状態を肥満といいます。肥満には内臓に脂肪が多くつくタイプ(内臓脂肪型肥満)と、皮下の下に多くつくタイプ(皮下脂肪型肥満)のあることがわかっています。
内臓脂肪型肥満は、糖尿病をはじめとする生活習慣病が多発していることが報告されています。

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図-1 CT写真/内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

脂質異常症

ヒトの血液の中には、「コレステロール」「中性脂肪」などの脂質が含まれており、それぞれ、体にエネルギーを供給したり、体の組織をつくるなど、重要な働きをしています。しかし、食生活などが原因となって、LDLコレステロール,中性脂肪のいずれかが基準より高いか、HDLコレステロールが基準より低い場合を「脂質異常症」と呼びます。脂質異常症になると、血管壁にコレステロールなどが沈着して、動脈硬化を起こしやすくなります。動脈硬化が起これば、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞につながる危険が高くなります。
日本動脈硬化学会では、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版によって、コレステロールと中性脂肪のスクリーニングのための診断基準を示しています。


表-1 脂質異常症の診断基準(空腹採血時)

高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール≧140mg/dL
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール<40mg/dL
高中性脂肪血症 中性脂肪≧150mg/dL

(資料 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版より)

表-2 リスク別脂質管理目標値

治療方針の原則 カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dL)
  LDL-C以外の
主要危険因子*
LDL-C HDL-C TG
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、
薬物治療の適応を考慮する
I
(低リスク群)
0 <160 ≧40 <150
II
(中リスク群)
1~2 <140
III
(高リスク群)
3以上 <120
二次予防
生活習慣の改善とともに薬物治療を
考慮する
冠動脈疾患の既住 <100

LDL-C:LDLコレステロール、HDL-C:HDLコレステロール、TG:中性脂肪

脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要がある。
  * LDL-C値以外の主要危険因子
     加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、
     喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(<40mg/dL)
・糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併症はカテゴリーIIIとする。
・家族性高コレステロール血症については別途考慮する。

(資料 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版より)

脂肪酸の分類

脂肪酸は、1個ないし複数個の炭化水素(CH2)の連結した鎖 (炭化水素鎖) からなり、その鎖の両末端はメチル基(CH3)とカルボキシル基 (COOH) です。
脂肪酸の基本的な化学構造: CH3(CH2)nCOOHからなっています。脂肪酸の種類は炭素数、二重結合の数、二重結合の位置によって、次のように分類されます。

(1) 短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸
脂肪酸の炭素数によって分類されます。脂肪酸に含まれる炭素数 (COOH 中の C を含む) が 2~6 のものを短鎖脂肪酸、8~10 のものを中鎖脂肪酸、12 以上のものを長鎖脂肪酸といいます。天然の油脂に含まれる脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸です。

(2) 飽和・不飽和(一価不飽和・多価不飽和)脂肪酸
脂肪酸のアルキル基(カルボン酸を含まない部分)に含まれる二重結合の数による分類。二重結合を持たないものを飽和脂肪酸、二重結合を持つものを不飽和脂肪酸と呼びます。さらに、不飽和脂肪酸は二重結合の数によって、1つもつものは一価の不飽和脂肪酸、2つ以上もつものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。

(3) n-3、n-6系
脂肪酸中の末端のメチル基(CH3)中の炭素から最も近い二重結合の位置を数えます。
n-3(ω3):CH3から3番目(C)に二重結合を持つ脂肪酸
n-6(ω6):CH3から6番目(C)に二重結合を持つ脂肪酸

(4) 分類例

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脂肪酸の表示記号は、例えば炭素数18の飽和脂肪酸では18:0あるいはC18:0、炭素数18、二重結合3個の不飽和脂肪酸では18:3あるいはC18:3です。

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ヒューマンカロリメーター

ヒューマンカロリメーターは小さなホテルの1室のようにベット、トイレなどが整えられています。温度、湿度、空気の循環がコントロールされた空間で、ヒトが日常生活に近い環境で過ごす時のエネルギー消費量を、長時間にわたり測定できる画期的な装置です。室内に出入りする空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化からエネルギー消費量を測定する事ができ、さらにどの栄養素が燃焼して産生されたエネルギーなのか算出することもできます。

PAI-1

(plasminogen activator inhibitor-1 プラスミノーゲン活性化抑制因子)
臨床的意義
PAI-1は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の活性を消失させ、線溶系を抑制するポリペプチドです。敗血症、動脈硬化等になると高値を示します。
プラスミンは、プラスミノーゲンがt-PAにより活性化を受けて産生される酵素で、フィブリン、フィブリノーゲンを分解する作用をもちます。一方、PAI-1は血管壁内皮細胞および肝臓から放出されるポリペプチドで、血漿や血小板に存在する線溶阻止因子です。
血栓溶解時には、PAI-1がt-PAと複合体を形成してt-PAの活性を消失させ、プラスミン産生を抑制することで線溶を抑制しています。また、プラスミンは血栓溶解のみならず、組織破壊と修復、細胞の移動、血管新生、排卵と着床、動脈硬化などにも関与しています。PAI-1はこの反応系を抑制する働きをもつため、一連の反応開始段階でPAI-1はt-PAを阻害し、プラスミンによる線維素溶解作用を制御しています。
敗血症ではPAI-1が高値を示します。高値になる機序として、エンドトキシンが血管内皮細胞に作用し、組織因子を発現させPAI-1の産生を強く刺激しているためと考えられています。また、動脈硬化の時にはリポプロテインが高値となり、このリポプロテインが血管内皮細胞系におけるPAI-1の産生を選択的に増加させて不足を補う(up regulation)ためPAI-1が高値を示すと考えられます。
PAI-1には、このほか急性相反応物質としての性格があり、種々の炎症性疾患で上昇が報告されています。
基準値;43.0 ng/ml以下
高値を示す病態;敗血症、動脈硬化、心筋梗塞、肝疾患、悪性腫瘍、重症感染症
低値を示す病態;先天性PAI-1欠乏症

群間比較試験

治験における試験デザインの1つで、現在、最も一般的な治験デザインです。
薬剤及び治療法の効果を評価するため、被験者を被検薬群(処置を受ける群)と対象薬群(プラセボまたは実薬、処置を受けない群)に無作為に割り付け、各群同時並行に指定された期間投与し、結果を比較評価して、薬剤及び治療法の効果を検討する方法。
通常は、二重盲検法によって行われる場合が多く、二重盲検試験の代表的な試験デザインとなっています。

クロスオーバー比較試験

治験における試験デザインの1つで、交差試験または交互試験とも呼ばれます。
2群の各被験者に被験薬と対照薬を交互に時期をずらして投与し、それぞれの結果(反応)を集計し評価する試験方法。

時期1 時期2
A群: 被験薬 対照薬
B群: 対照薬 被験薬

比較的症状の安定している慢性の疾患で、傾向変動が見られず、薬剤の治療効果が可逆的な場合に適している試験方法です。

LDLコレステロール、HDLコレステロール

動脈硬化が生じた血管の壁では、コレステロールが蓄積されています。これはLDLコレステロールにより運搬されたコレステロールが、血管壁の細胞外に蓄えられたり、LDLコレステロールが変性し、マクロファージに取り込まれ動脈壁へ蓄積します。すなわち、LDLコレステロールが多いと動脈壁にコレステロールがたまりやすく、動脈硬化を促進させる方向に働きます。
一方、HDLコレステロールは組織のコレステロールを引き抜き、抗動脈硬化作用を示す働きをします。

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