東日本大震災から10年 ~震災復興への想い~

一般社団法人りぷらす 代表理事/理学療法士
橋本 大吾

 東日本大震災をきっかけに石巻市に移り住み、一般社団法人りぷらすを設立した理学療法士の橋本大吾氏。東日本大震災から10年が経った現在の活動と想いについて、改めてお話を伺いました。

日々の暮らしの大切さを実感

 東日本大震災から、10年の歳月が経ちました。私自身の生活で大きく変わったことは、結婚して二人の子どもが生まれたことです。家庭を持ったことで、日々暮らしを営むことのかけがえなさを感じるようになりました。仕事面では、健康や介護について知見のある地域の専門職の方との情報交換の重要性を改めて実感するとともに、サービス自体の認知を広げ、利用しやすくなる社会環境づくりの必要性を感じています。

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社会とのつながりを絶やさないための活動

 「りぷらす」では設立当初より、①介護・障害福祉事業、②コミュニティーヘルス事業、2016年より③仕事と介護の両立支援事業の三つの事業に取り組んでいます。
 ①介護・障害福祉事業では、リハビリ特化型デイサービス「スタジオぷらす」を運営しています。大きな目標として要介護状態からの改善・回復できる人を増やすことを目指しており、現在までに24名の方が各自設定した目標を達成して、デイサービスから「卒業」することができました。しかし、2020年はコロナ禍の影響により、卒業者の割合が低くなり今後の課題となっています。
 ②コミュニティーヘルス事業では、地域の健康づくりを担う有志の住民「おたがいカラダづくりサポーター(略称:おたからサポーター)」の養成を行い、地域住民による健康づくり活動に取り組んでいます。また2016年には養成講座を受けた「おたからサポーター」の自主団体「おたからの輪 “結”」が立ち上がり、養成講座の運営を移行することができ、活動の場が住民側に広がってきています。2016年9月末時点で72名だった認定サポーターの人数は、石巻市だけで97名となりました。さらに宮城県丸森町やみやぎ生活協同組合、地域のNPO法人でも養成講座を実施し、地域との協働によりサポーターの数、活動範囲とも拡大することができました。
 ③仕事と介護の両立支援事業では、介護に関わる方やこれから介護をする方のための記録としてWebマガジン「ケアマガ(https://note.com/kaigoweb1)」を配信しています。介護は育児に比べて情報が少ないため、一般の人がどのような介護をしているかといった身近な介護の情報を伝えていきたいと考えています。遠距離介護や同居介護など多様な介護にまつわる記録を共有することで、介護鬱の予防にもつながるのではないでしょうか。また、2017年からは定期的に企業での研修を開催しています。同時にこうした取り組みを発信する媒体としてWebサイト(https://link-replus.com)を開設し、さらに新たなサービス「介護の架け橋(https://www.kaigo-kakehashi.org)」も始めました。
 現在、コロナ禍において、社会交流の機会が減少し、健康状態の悪化が進んだ高齢者や障害者の方が多くいらっしゃいます。そのため、これまで以上に社会交流や地域活動の重要性が高まってきています。りぷらすでは、地域の互助活動の実践の火を絶やさないように、万全な感染対策のもと、活動を継続するとともに、震災からこれまでに経験したことを次世代へ伝えるべく、私個人としても、できることから取り組んでいこうと考えています。

  • *  りぷらすの取り組みについては、KAO HEALTH CARE REPORT 52号(2016年10月発行)を参照。
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