持続可能なパーム油調達に向けた花王の活動についてご紹介します。
花王は、事業が自然資本に依存していることを認識し、持続可能な天然資源の調達に取り組んでいます。特に、花王の主要製品である洗剤やシャンプーなどに広く使用される、界面活性剤の主要原料であるパーム油・パーム核油を、最も重要な天然資源と位置づけています。
パーム油・パーム核油は、食品やバイオディーゼル燃料、洗剤、化粧品などの原料として多く使用される、世界で最も生産量が多い油脂であり、生産量の80%以上がインドネシア・マレーシアの赤道を挟む南緯20度から北緯17度の熱帯地域で生産されています。パーム油の生産量は、世界の油脂需要増大により年々増え続け、農園面積も拡大を続けています。
パーム油の原料であるアブラヤシは、年間を通じその果実(FFB/Fresh Fruit Bunch)を収穫することができ、また単位面積当たりの収穫量(油脂量)が多く、その高い生産効率性ゆえに価格面でもほかの油糧作物と比較し優位性があります。またインドネシア・マレーシアの数百万といわれる小規模パーム農園の人々は、アブラヤシの果実を販売することで生計を立てており、現地の重要な産業となっています。一方、パーム油の生産地では、新たな農園開拓のための違法な森林伐採や二酸化炭素を多く含む泥炭地の開発、それに伴う生物多様性への影響や二酸化炭素放出量の増加、農園開発企業と先住民間の土地所有権登記に関する紛争、農園で働く労働者の人権問題など課題を抱えています。さらに、零細な独立小規模パーム農園では、生産性向上のための技術に乏しく、パーム油の認証制度取得に関する知識や手段が限られていることも大きな課題です。
こうしたパーム油の課題解決のため、パーム油産業に関わる農園や油脂サプライヤー、世界中のパーム油使用企業、そしてNGOなどが課題解決のための活動を進めており、花王も持続可能なパーム油調達に向けた取り組みを推進しています。
花王は、持続可能な調達のため2025年までの森林破壊ゼロ達成をめざし、パームを含むすべての森林リスクコモディティのサプライヤーとAccountability Framework initiative(AFi)で定義されるそのグループ企業、またその投資先企業に対し、森林リスクコモディティを含むサプライチェーンにおけるNDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation)方針の採用を義務とし、自然生態系の転換や劣化の禁止、生物多様性および、HCV Networkが定義する保護価値の高い森林(HCVF*1 )、HCSA(High Carbon Stock Approach)が定義する炭素貯蔵量の多い森林(HCSF*2 )、泥炭湿地の保全、開発のための火入れ禁止、サプライチェーンに関わるすべての人の人権を尊重し、労働者および先住民と地域コミュニティの権利を尊重し、自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意(FPIC(Free Prior Informed Consent))の遵守徹底の要求と確認を進めます。また花王では、サプライチェーンにおける人権擁護者に対する暴力や不当告発、脅迫などを容認しません。
花王は、上記の方針をサプライヤーとサプライヤーを通じてそのサプライチェーン全体に徹底するとともにデューデリジェンスを実施し、遵守するサプライヤーからの購入を優先、未遵守サプライヤーに対し社内の手順(プロトコル)に従い、取引中止も視野に入れた改善要求と改善状況の確認を行います。
花王は、現場(農園)での直接対話を起点に、トレーサビリティ情報や衛星モニタリング情報を油脂サプライヤーと協働で活用することで、サステナビリティの向上並びに本質課題解決への活動を強化しています。そして、その活動内容を社外のステークホルダー(NGO等)に発信し、ステークホルダーとの対話を通してさらなる改善につなげていきます。
持続可能なパーム油調達における課題の本質解決に向けて、下記活動を推進していきます。
花王は、サプライチェーンの透明性を高めるため、サプライヤーから定期的に最新のトレーサビリティ情報を入手し、花王のサプライチェーンにつながるミルリストを公開しています。地図上でミルの位置情報を把握した上で、パームオイルミルから50km圏内におけるGLOBAL FOREST WATCH、EARTH DATA NASAの衛星モニタリング情報やPROTECTED PLANETによる泥炭地の情報、サプライヤーへのNDPE調査、またNGOからのサステナビリティ情報を活用し、2018年11月をカットオフ期日としたサプライチェーン上で発生する違法な森林破壊、二酸化炭素を多く含む泥炭地開発のリスクモニタリングと検証を行っています。リスクが高いと判断した事案に対しては、サプライヤーを通じた事実確認、改善要求と改善状況の確認を行います。また、自社のパーム油サプライチェーンにおけるリスクや機会への理解を深める手段のひとつとして、Earthworm Foundationとともに森林フットプリント分析を行っています。花王の調達エリアにおける森林や泥炭地の開発といった環境リスクおよび慣習地での先住民族や地域コミュニティの権利を把握することで、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた戦略の策定をめざします。
99%
2024年6月30日現在
90%
2024年6月30日現在
SMILE (SMallholders Inclusion for Better Livelihood & Empowerment) プログラムは、花王と油脂製品製造および販売会社のアピカルグループ(英語名:Apical Group)、農園(プランテーション)会社のアジアンアグリ(英語名:Asian Agri)の3社が、パーム油の持続可能なサプライチェーンの構築をめざし、2020年から2030年までの11年間で花王のパーム油サプライチェーン上重要な地域である、インドネシア北スマトラ・リアウ・ジャンビ3州の独立小規模パーム農園約5,000件を対象に、生産性向上、持続可能なパーム油に対する認証(RSPO)の取得を支援するプログラムです。花王は、生産性向上と認証取得のための教育とともに、SMILEプログラムを通じて支援する独立小規模パーム農園が認証取得後に販売するRSPO認証クレジットの全量購入や、農薬散布時に薬剤を濡れ広がるように植物表面に展着させることで農薬使用量を低減させる「アジュバントシリーズ」の無償提供活動も実施しています。
3,083農園
2023年12月31日現在
839農園
2023年12月31日現在
628農園
2023年12月31日現在
8,395ヘクタール
2023年12月31日現在
9,996トン
2023年12月31日現在
花王グリーバンスメカニズム(KGM)は、ビジネスと人権の企業取り組みを支援しているNPO法人 経済人コー円卓会議日本委員会(CRT日本委員会)と協働で、花王のサプライチェーンにつながるインドネシアの独立小規模パーム農園(農家)を対象としたグリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)です。国連ビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding Principles)に示された苦情処理メカニズムのための実効性要件に則り、対象とする独立小規模パーム農園にとってのアクセシビリティと、利用しやすいメカニズムの設計およびパフォーマンスの向上をめざして利用者である独立小規模農園と継続的に協議の場をもつことを重視しています。
花王グリーバンスメカニズムでは、パーム油を使用する花王とCRT日本委員会が、油脂サプライヤー・プランテーション会社と共に、両者が共同開発したスマートフォンシステム(Suara Petani(農民の声/Farmer’s voice))を介して現地の言語(インドネシア語)で独立小規模パーム農園(農家)からの苦情(人権侵害、土地紛争など)や、農園運営に関する問い合わせ(RSPO認証取得、農園での労働安全、生産性向上のためのアブラヤシの植え替え、苗/肥料の購入など)を直接受け付けます。そして、花王は「調査」「対応」「解決」「フォローアップ」、定期的なグリーバンスリストの公開による「報告」を行います。
花王グリーバンスメカニズムによる人権や環境リスクのモニタリングにより、社会・環境面、特に人権における本質的な課題解決と独立小規模パーム農園の生産性向上に向けた取組みを強化します。サプライチェーン上で課題が発覚した場合は、サプライヤーに対し社内の手順(プロトコル)に従い、取引中止も視野に入れた改善要求と改善状況の確認を実施します。
212農園
2024年6月30日現在
217件
2022年9月~2024年6月末
花王は、持続可能なパーム油の生産と利用を目的に2004年に設立された非営利団体であるRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議))において2007年から会員となり、また日本での持続可能なパーム油の調達と消費を促進するための非営利団体であるJaSPON(Japan Sustainable Palm Oil Network(持続可能なパーム油ネットワーク))へ2019年の団体設立時から参画し、認証油調達を実施しています。また、SMILEプログラムで支援する独立小規模パーム農園からRSPO認証クレジットを購入するとともに、世界自然保護基金(WWF)インドネシアの支援する独立小規模パーム農園の認証クレジット購入も進めています。
173,228トン
2023年12月期
40%
2023年12月期
18,657トン
2023年12月期