乳由来スフィンゴミエリンの安全性

乳由来スフィンゴミエリンの食経験

1. 牛乳の食経験

牛乳は、明治時代より広く飲用されています*1 。日本における最近10年の生乳生産量は、年間743~753万トンで、主に牛乳や乳製品に加工されています*2 。平成28年度牛乳・乳製品の消費動向に関する調査によると、牛乳飲用者は、調査対象者の88.9%であり、これらの人達の1日の平均摂取量は188.1 mLでした*3 。この摂取量には、コーヒーや紅茶に混ぜて飲む、シリアルにかけるなど、そのまま飲む以外の摂取も含まれます。

2. 牛乳の食経験から推定する乳由来スフィンゴミエリンの食経験

花王では、乳由来スフィンゴミエリンの持つ様々な機能に着目して研究をしています。スフィンゴミエリンは、牛乳1 Lに65~87 mg含まれます。運動機能改善効果を発揮する乳由来スフィンゴミエリン約38 mgの摂取は、牛乳437~585 mLの摂取に相当すると考えられます。中学生以上の国民を対象とした調査*3 によると、1日平均600 mL以上摂取している人は調査対象者の4.5%でした。また、人口統計データ*4 では13歳以上の人口が11,320万人であることが報告されています。これらの数値から少なくとも453万人の日本国民が、1日平均600 mL以上の牛乳を摂取しており、毎日牛乳から38 mg以上のスフィンゴミエリンを摂取していると推定されます。

乳由来スフィンゴミエリンの安全性

乳由来スフィンゴミエリンの安全性情報について文献検索したところ、安全性評価が行われていた試験12件が抽出されました(検索サイト: PubMed,検索対象期間: 1946年~2019年10月9日)。これらの文献の、発行年、対象者国(日本8件、ヨーロッパ4件)、食品形態、乳由来スフィンゴミエリンの摂取量および摂取期間は様々で、このうち4週間以上摂取した試験では、乳由来スフィンゴミエリンを最大700 mg摂取しており、12週間以上摂取した試験では80.3 mg摂取していました。これらの試験のいずれにおいても、安全性上問題となる事象は認められませんでした。このうち、弊社が実施した試験について、下記に紹介します。
この試験では、乳由来スフィンゴミエリン摂取時の安全性を検証しました*5 。試験デザインは、無作為化二重盲検並行群間比較試験とし、被験者は、健常男女32名(平均年齢42.0±11.9歳、試験群16名、プラセボ群16名)としました。試験群は乳由来スフィンゴミエリン231 mgを含む錠剤形態の食品(30粒)、プラセボ群は全粉乳6.5 g(乳由来スフィンゴミエリン4 mg)を含む錠剤形態の食品(30粒)を毎日1回または2回に分けて4週間、継続摂取しました。
摂取期間中、試験群に下痢、胃部不快感、鼻炎、咳、各1件が認められました。いずれも症状は一過性で軽微であり、試験食品の摂取を中止することなく自然回復し、試験食品との因果関係はないと判断されました。身体計測および血液検査項目に臨床上問題となる変動は認められませんでした。
以上の結果より、健常成人に対して乳由来スフィンゴミエリン231 mgの4週間継続摂取は安全性上問題ないと考えられました。

引用文献

  • * 1 上野川修一, 乳の科学, 朝倉書店, p2-3, 1996年
  • * 2 農林水産省, 牛乳乳製品の生産動向(令和3年4月分)
  • * 3 独立行政法人農畜産業復興機構, 平成28年度牛乳・乳製品の消費動向に関する調査
  • * 4 総務省統計局, 人口推計(平成30年10月1日現在), 第1表, 平成31年4月12日
  • * 5 Hari S et al., Biosci Biotechnol Biochem, 79(7), 1172-1177, 2015
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