乳由来スフィンゴミエリンの運動機能改善効果は、人を対象とした試験で確認されています。
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動が50~69歳の健常男女の敏捷性改善に及ぼす効果を検証しました*1 。
試験デザインは無作為化二重盲検並行群間比較試験(※1)としました。被験者は50~69歳の健常男女44名(試験群22名、プラセボ群22名)としました。試験群は乳由来スフィンゴミエリン38mgを含む錠剤形態の食品、プラセボ群は全粉乳1g(乳由来スフィンゴミエリンとして0.7mg)を含む錠剤形態の食品を摂取しました。両群とも、ウォーキングと自転車こぎからなる適度な運動を1回30分、週2回行いました。試験期間は10週間とし、摂取前、摂取5週間後、摂取10週間後に敏捷性の指標である反復横とび回数の測定を行いました。また、摂取前と摂取10週間後に、MRI(magnetic resonance imaging, 核磁気共鳴画像)を用いて大腿部の筋横断面積の測定を行いました。
中止者を除いた35名で解析を行った結果、摂取10週間後の試験群の反復横とびの回数の変化率(増加分を初期値で除した百分率)は、プラセボ群と比較して有意に高値でした。また、摂取10週間後の試験群の大腿部の筋横断面積も摂取前と比較して有意に増加し、変化率はプラセボ群と比較して有意に高値でした(図1)。
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動の併用は、中高年者の敏捷性の維持・改善に役立つと考えられます。
※1. 無作為化二重盲検並行群間比較試験
評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に効果を評価するために、試験食品(機能性関与成分を含む食品)あるいはプラセボ食品(機能性関与成分をほとんど含まない食品)のいずれかを、乱数表等を用いて被験者に割り付け、各食品摂取を同時並行で試験する。この際、試験実施者、被験者のいずれも、摂取する食品が、試験食品かプラセボ食品か分からないようにして、試験すること。
図1 反復横とび(敏捷性)および筋横断面積における乳由来スフィンゴミエリン継続摂取の効果
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動が60~74歳の健常男女の敏捷性改善に及ぼす効果を検証しました*2 。
試験デザインは無作為化二重盲検並行群間比較試験としました。被験者は60~74歳の健常男女25名(試験群13名、プラセボ群12名)としました。試験群は乳由来スフィンゴミエリン35mgを含む錠剤形態の食品、プラセボ群は糖アルコールであるマルチトール1g(乳由来スフィンゴミエリン0mg)を含む錠剤形態の食品を摂取しました。両群とも、ウォーキングと自転車こぎからなる適度な運動を1回30分、週2回行いました。試験期間は5週間とし、摂取前と摂取5週間後に敏捷性の指標である4方向選択反応時間の測定を行いました。被験者は測定に際し、中央パネルに立ち、前後左右いずれかを指示する視覚信号を受け、指示された方向のパネルに移動します。方向の指示は8回、順番はランダムとしました。
中止者を除いた23名で解析を行った結果、摂取5週間後、試験群の動作開始時間(合図を受けてから片足が離れるまでの時間)、および反応時間(合図を受けてから両足を動かすまでの時間)は、プラセボ群と比較して有意に短くなりました(図2)。
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動の併用は、中高年者の敏捷性の維持・改善に役立つと考えられます。
図2 4方向選択反応時間における乳由来スフィンゴミエリン継続摂取の効果
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取が50~69歳の健常男女のバランス感覚に及ぼす効果を検証しました*3 。
試験デザインは無作為化二重盲検並行群間比較試験としました。被験者は50~69歳の健常男女113名(試験群57名、プラセボ群56名)としました。試験群は乳由来スフィンゴミエリン38mgを含む錠剤形態の食品、プラセボ群は全粉乳1g(乳由来スフィンゴミエリンとして1.3mg)を含む錠剤形態の食品を摂取しました。試験期間は24週間とし、摂取前、摂取6週間後、摂取12週間後、摂取18週間後、摂取24週間後にバランス感覚の指標である閉眼片足立ち時間の測定を行いました。
摂取24週間後、試験群の閉眼片足立ち時間は、プラセボ群と比較して有意に改善しました(図3)。
乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取は、中高年者のバランス感覚の維持・改善に役立つと考えられます。
図3 閉眼片足立ち時間における乳由来スフィンゴミエリン継続摂取の効果
皮膚表面に電極を付けた状態で筋肉を動かすと、筋肉が発生する放電量(筋放電量)を測定することができます。筋放電量は、動作に関する機能を評価する指標のひとつで、運動神経と筋肉を併せた「運動ユニット」の動員を反映するとされています。乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取が、筋力および筋放電量に及ぼす効果を検証しました*4 。
試験デザインは、無作為化二重盲検クロスオーバー試験(※2)としました。被験者は、31~48歳の健常男性14名としました。被験者は4週間、試験食品あるいはプラセボ食品を摂取し(前期)、4週間のウォッシュアウト期間(※3)後、前期とは逆の食品を4週間摂取しました(後期)。試験食品は乳由来スフィンゴミエリン36mgを含む錠剤形態の食品、プラセボ食品は全粉乳1g(乳由来スフィンゴミエリン0.6mg)を含む錠剤形態の食品としました。摂取期間中、自転車こぎ運動を1回約8分、週2回行いました。前期、後期とも、摂取前と摂取4週間後に脚伸展筋力と筋放電量の測定を行いました。以降、試験食品を摂取した群を試験群、プラセボ食品を摂取した群をプラセボ群と示します。
その結果、試験群の脚伸展筋力と筋放電量はいずれも摂取前と比較して増加し、その4週間後の変化率はプラセボ群に比較して有意に高値でした(図4)。筋放電量の増加は、運動神経からの信号が筋線維によく伝わったことを示唆します。乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動の併用は、運動神経から筋肉への信号の伝わりを助け、骨格筋の筋力の増加に役立つと考えられます。
筋力増加の要因として筋線維の肥大が知られていますが、本試験では、大腿部周囲長に有意な変化は認められませんでした。このことから本試験の筋力増加の要因としては、筋線維の肥大よりむしろ、運動神経からの信号が筋線維によく伝わったためと考えられます。
※2. 無作為化二重盲検クロスオーバー試験
評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に効果を評価するために、試験食品(機能性関与成分を含む食品)あるいはプラセボ食品(機能性関与成分をほとんど含まない食品)の両方を、時期を互いにずらして摂取し、それぞれの試験結果を集計し評価する。この際、試験実施者、被験者のいずれも、摂取する食品が、試験食品かプラセボ食品か分からないようにして、試験すること。
※3. ウォッシュアウト期間
クロスオーバー試験において、前期に摂取していた食品の影響を排除するため期間のこと。
図4 脚伸展筋力及び筋放電量における乳由来スフィンゴミエリン継続摂取の効果
以上の4つの試験より、乳由来スフィンゴミエリンの継続摂取と適度な運動の併用は、中高年者において、敏捷性(足の動き)やバランス感覚をはじめとする運動機能の維持・改善に役立つと考えられます。その作用機序は、運動神経から筋肉への信号の伝わりを助けることと考えています。