乳由来スフィンゴミエリンとは

牛乳中の有用成分 ~スフィンゴミエリン~

牛乳に含まれる脂質の大部分は、平均直径約4μmの微小な油滴として水相に分散しており*1 、この球状の粒子を乳脂肪球と呼びます。乳脂肪球は、脂質と水相の仕切りの役割をする界面層である乳脂肪球皮膜(MFGM; Milk Fat Globule Membrane)によって安定に保持されています(図1)*2 。スフィンゴミエリンは、牛乳中のMFGMに多く含まれますが、その量は牛乳1Lあたり65~87mgと、ごくわずかです。
牛乳中に含まれるスフィンゴミエリンは、スフィンゴイド塩基を有するスフィンゴ脂質であり、図2に構造例を示すように、アルキル鎖の鎖長の異なる化合物群です*3 。経口摂取したスフィンゴミエリンは、小腸内で消化を受け、その構成要素であるスフィンゴイド塩基にまで加水分解された後に小腸上皮細胞に取り込まれると考えられています*4 。スフィンゴミエリンは、神経細胞の軸索を覆うミエリン鞘を構成していることでも知られています。花王では、乳由来スフィンゴミエリンの持つ様々な機能に着目して研究をしています。

図1 牛乳に含まれる乳脂肪球とその皮膜(MFGM)について説明した模式図。乳脂肪球は平均直径が約4マイクロメートルの微小な油滴として水相に分散し、MFGMによって安定に保持される。図には、牛乳中の脂質、水相、乳脂肪球、およびMFGMが示されている。

図1 牛乳中のMFGMの模式図

図2 フィンゴミエリンの化学構造式。アミノアルコールであるスフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合で結合し、さらにリン酸基とコリンが結合している。スフィンゴシンの2位に脂肪酸、1位にリン酸エタノールアミンが結合している。

図2 スフィンゴミエリンの構造例

Rはアルキル鎖を示す。

引用文献

  • * 1 Singh H., Current Opinion in Colloid & Interface Science, 11, 154-163, 2006
  • * 2 Vanderghem A et al., Biotechnol. Agron. Soc. Environ, 14(3), 485-500, 2010
  • * 3 Nelson, D.L., Cox. M.M., Lehninger Principles of Biochemistry (6 th Edition),
    vol. 10. Lipids W.H. Freeman and Company: New York, 2013
  • * 4 菅原達也, 食品機能成分としてのスフィンゴ脂質の消化と吸収, 日本栄養食糧学会誌, 66, 177-183, 2013
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