2009年頃より、ドイツにおいて油脂中に微量に含まれる3-MCPD(3-モノクロロプロパンジオール)脂肪酸エステルの安全性についての議論が始まり、その中で分析誤差を与える物質としてグリシドール脂肪酸エステルの存在が指摘されました。花王においても、2009年6月に分析を行った結果、グリシドール脂肪酸エステルがジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)に一般の食用油と比べて多く含まれていることを確認しました。グリシドール脂肪酸エステルは、精製油脂の製造において一般的に行われる脱臭の過程で副生されるもので、精製した一般の食用油にもわずかに含まれていることが報告されています*1 。
ここでは、グリシドール脂肪酸エステルの安全性評価についてご説明します。
グリシドール脂肪酸エステルを含むジアシルグリセロール油の安全性は、食品安全委員会で審議され、2015年3月に開催された第552回食品安全委員会において、高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性として評価結果がとりまとめられました。概要は以下の通りです。
評価書(最終)および関連文書は、食品安全委員会のホームページで確認することができます*2 。
食品中のグリシドール脂肪酸エステルに関する情報は、農林水産省のホームページに、食品中のクロロプロパノール類及びその関連物質に関する情報としてまとめられているほか、リスクプロファイルシートが作成されています。クロロプロパノール類及びその関連物質は、意図しないにもかかわらず、食品の製造工程で、原料にもともと含まれる脂質からできてしまう物質で、グリシドール脂肪酸エステルもそのひとつです。ホームページやリスクプロファイルシートには、グリシドール脂肪酸エステルの構造、食品に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの含有実態、健康影響評価、国際的な動向、低減に関する国内の取り組み、分析法などが示されています*3,4 。