サステナブル界面活性剤バイオIOSと油脂精密変換技術

素材開発

人々の清潔な生活を持続するために、サステナブルな原料を使用した界面活性剤が必要とされています。そこで花王では、豊富に存在しながらも用途が限られている長いアルキル鎖の油脂原料を活用した、サステナブルな界面活性剤「バイオIOS」を開発しました。
バイオIOSは従来の界面活性剤と異なり、アルキル鎖の中間部に親水基を持つ、ユニークな構造をしています(図1)。この構造により、通常は溶けにくい長いアルキル鎖を持ちながら、高い水への溶解性を実現しました。

従来の界面活性剤(水に溶けにくく結晶化しやすい)の分子構造イメージ(左図)と、バイオIOS(水に溶けやすく結晶になりにくい)の分子構造イメージ(右図)

図1:バイオIOSのユニークな構造と特性

バイオIOSはアルコールから内部オレフィンを経由してつくられます。バイオIOSを安定かつ大量に生産するため、材料科学と生産技術という異なる専門性を持つ研究員が協働して、さまざまな技術開発を行ってきました。
アルコールからオレフィンへの変換(オレフィン化)では、独自に酸強度を調整した触媒を使用し、副生物の生成を抑制しつつ生産性を向上させました。また、オレフィン化の際に生じた水分量を調整することで、内部オレフィンの二重結合位置の精密制御を可能にしました(図2)。

酸強度を調整した開発触媒により、生産性向上と不純物の副生抑制(オレフィン化) オレフィン化で生じた水分量を調整することによる二重結合位置の精密制御(異性化)

図2:バイオIOSの中間原料となる内部オレフィンの製造技術開発

内部オレフィンからバイオIOSへの変換では、スルホン化反応の工程において独自の反応器構造を開発し、不活性ガスを用いて反応制御することで良好な色相を実現しました。また続く中和工程では、乳化技術などに用いられる高速せん断技術の応用により不純物の副生抑制を可能にしました(図3)。

内部オレフィンのスルホン化、中和、加水分解によるバイオIOSの製造 高せん断による油相(油滴)微粒化と、高濃度化による油滴数増加といった界面の物質移動促進による中和効率アップ(中和工程)

図3:バイオIOS製造~中和促進技術~

このような技術開発により花王ではバイオIOSの安定供給を実現し、衣料用液体洗剤『アタック ZERO』などに配合しています。花王は海外も含めたバイオIOSの生産・販売を通じて、サステナブルな社会の実現をめざしています。

バイオIOSが配合されている「アタックZEROシリーズ」の製品を並べた写真

バイオIOSが配合されている「アタックZEROシリーズ」

この記事は、加工・プロセス技術にも関連するため、タイトルを変更して再掲載しています。

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