映画にみるヘルスケア 第60回

「夜明けのすべて」
(監督:三宅唱、原作:瀬尾まいこ、24年、日本)

「同じ薬、私もPMS* で飲んでいた。お互い無理せず頑張ろうね」
  PMSとパニック障害の同僚同士、“相手の病気”への思い遣りから“自身“を受け容れ、明日を拓く!

映画・健康エッセイスト 小守 ケイ

 「水ばっか飲んでないで働いて!」。栗田社長以下8名で子供用の科学工作玩具を作る栗田科学。転職3年の藤沢美紗―大手に就職するも会社でPMS治療薬の副作用で寝入り、2ヵ月で退職―がPMSの“苛立ち”で入社間もない若い男性、山添孝俊にキレる!山添は驚くも、先輩社員は慣れた調子で藤沢に寄り添う。「大丈夫よ」。

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山添の“電車、外食、美容院ダメ”を知った藤沢・・

 翌朝、藤沢が皆にお詫びの品を配ると、山添も不愛想に受け取るが、2人を心配した先輩の「皆で飯でも」には“先約ある”と断った。彼の“先約”は毎月の心療内科検診。2年前の大手会社員時代、パニック障害と診断され、以来、復職を望むも電車に乗れず、徒歩圏内の栗田科学に転職した。
 翌日、会社で過呼吸発作を起こした山添!荒い息で「薬が無い!」。藤沢が給湯室で拾った錠剤を「これ?」。落ち着くと、藤沢は栗田の指示で山添をアパートに送る。「何で僕の薬って分ったんですか?」。藤沢が「PMSで同じ薬を飲んだ」と言うと、彼は不満げに「病気の程度が違うのに・・」。
 「歩ける範囲だけで生活?」。パニック障害を調べた藤沢は、自分の“自転車”を山添宅へ。「使って!」。丁度、自分で髪カット準備中の山添を見ると、「切ってあげる!」。しかしハサミを持つや「アッ、ご免!」。切り過ぎで大笑いの2人は少し打ち解け、その後、山添もPMS本を読み始めた・・。

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「藤沢さんのPMS、時々は助けられますよ」

 師走。2人は会社の地域貢献“移動式プラネタリウム”の解説作り担当になり、距離を縮める。年末の大掃除ではPMSの藤沢がしゃがみ込むと、山添が“人に当らぬよう”と駐車場に誘い出し「この車、汚いですね」。一緒に黙々と洗車!
 新年も残業で解説作り。帰路は北極星を見ながら駅まで歩き、時には山添宅で作業し、互いの病気をネタに軽口も叩き合う。日曜午後、山添が参考のため栗田の亡弟の“解説テープ”を借りに会社に行くと、藤沢がPMSを鎮めようと洗車中!「日曜に出社?」。2人は笑いながら洗車する。
 プラネタリウム実施も近い日。藤沢が携帯と原稿を置き忘れ、PMSで早退。「僕、届けますよ!」。山添は“貰った自転車”に初めて乗って数駅先の藤沢宅へ!「忘れ物です!」。その快活な姿に藤沢も元気を貰う・・。

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映画の見所

 「さあ、宇宙に出発です」。プラネタリウム当日。満天の星の下、藤沢の声が響く。「解説は受付にいる同僚(山添)と大先輩(栗田の亡弟)と一緒に作りました」。無事終了し、顔を見合わせた2人!山添は会社残留を決め、藤沢は地元へ転職した・・。
 主演は上白石萌音(藤沢)と松村北斗(山添)。「ケイコ目を澄ませて」の三宅唱が光の美しさを背景に人が心を繋ぎ合う様を温かに映す。夜明けは必ず来る!

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若い人に起こりやすいPMSやパニック障害

【監修】 公益財団法人結核予防会 理事 総合健診推進センター 所長 宮崎 滋
 PMSは生理の3~10日前からイライラ、頭痛、乳房の張り、情緒不安定等が起こり、生理が始まると消失する病態で、20~30歳代に多く見られます。原因はホルモンバランスの変化で、症状は生理のある女性の7、8割に起こりますが、強弱は様々で、情緒不安定が著しい月経前不快気分障害では、治療に漢方薬や向精神薬が用いられます。
 一方、パニック障害は10~30代に多く発症し、発症率は女性が男性より高く約2倍です。症状は突然の動悸、冷汗、窒息感等で、死の恐怖を感じ、常に再発の不安がある為、患者は発症しそうな電車や人ごみなどを避けます。トリガーは仕事や家庭、学業等の人間関係で、発作は10分程でピークを過ぎるので、発作時は深呼吸をさせ、静かな場所に移動させ落ち着かせます。治療は認知行動療法や向精神薬療法です。

  • * PMS:Premenstrual Syndrome(月経前症候群)
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