花王は、独自の技術を活かして情報材料分野でさまざまな技術開発に取り組んできました。
このほど、食品などのプラスチックフィルム印刷において、より環境にやさしく安全にお使いいただける高品質な水性インクジェット用顔料インク「ルナジェット®」を、世界に先駆けて開発しました。
花王は、世界初のインク技術*1 を用い、軟包装用*2 フィルム基材への印刷に対して、揮発性有機化合物がほとんど排出されない設計で、作業環境への負荷と地球環境への負荷をともに低減した、高品質な水性インクジェット用顔料インクを開発しました。
これまでのフィルムへの印刷は紫外線を使うインクが中心でしたが、臭いなどがあるため、食品などの包装には向いていませんでした。一方で、従来の水性インクは、紙への印刷はできるものの、フィルムには吸収されにくいため、乾燥に時間がかかり、インクが混ざってきれいに印刷できませんでした。
そこで花王は、独自の「顔料ナノ分散技術」により、インクに含まれる顔料の濃度を高くしたり、フィルムの表面にインクの一滴一滴が拡がるようにしたりすることで、少ない量のインクで、すばやい乾燥を可能にしました。これらの技術により、水性インクを用いたインクジェット印刷において、やわらかいフィルムなどの包装材料にも、きれいに印刷できるようにしました。
また、従来の有機溶剤を使用した油性インクに比べ、印刷工程中で排出されるVOC量(VOC:揮発性有機化合物)を大幅に削減したため、労働作業環境と地球環境の負荷低減に大きく貢献することができます。
これにより、2018年、人と環境にやさしく、持続可能な社会の発展を支える化学の推進に貢献する優れた技術であるとして、公益社団法人新化学技術推進協会の第18回「グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)賞 経済産業大臣賞」を受賞しました。
インクジェット印刷は、印刷時に「版」をつくる必要がなく、少量でも低コストで印刷できるため、多様な印刷ニーズに柔軟に対応することができます。
また、この水性インクジェット用顔料インク「ルナジェット®」は、インクを吸収しにくい光沢のある紙にも、高速できれいな印刷をすることができます。加えて、このインクで印刷した紙をリサイクルする時も、インクを取り除きやすいので、省資源化にもつながります。こうした、これまでにない特長を持つこの技術の特許は、平成29年度全国発明表彰において、「発明賞」を受賞しています。現在、この技術は、大手食品メーカーのパッケージ印刷にも採用されるなど、商品への応用も進んでいます。
花王は、これからも、印刷分野における課題解決だけでなく、社会全体の課題解決にも貢献できるような技術開発に、取り組んでまいります。