環境に配慮したコンクリート用薬剤の開発

界面科学を追求して、環境に配慮した土木・建築用薬剤を開発

高層ビルや高速道路、橋梁といった社会基盤をつくるうえで欠かすことのできない材料、コンクリート。
花王は、界面科学の研究成果を土木・建築分野にも活用し、環境負荷の少ない高機能な薬剤をつくっています。

コンクリートの常識を変える薬剤の開発

私たちの暮らしを支えるコンクリートは、水、セメント、砂、砂利、空気からできていて、その強度は水とセメントの比率で決まります。水の比率が低ければ、コンクリートの強度は増しますが、コンクリートの流動性は低下してしまうため、工事現場などでの作業はしにくくなります。
そこで花王は、界面科学に基づいた独自の技術を活用。セメントと水の混ぜ合わされた状態や反応過程、セメントが固まるしくみの解析を重ねることによって、少ない水でも流動性が確保できる、高機能なコンクリート用薬剤の開発に成功しました。

コンクリートの流動性を計測

高機能で、作業しやすく、環境負荷の低い製品をグローバルに展開

こうして誕生したコンクリート用減水剤「マイテイ」は、コンクリートをつくる際の、強度と作業性の両立を可能にしました。1970~80年代の高度成長期には、超高層ビルの建設に貢献すると共に、そこでの作業効率の改善や施工方法の革新などにもつながりました。その後も「マイテイ」は進化を続け、トンネルや高速道路、新幹線などの工事にも活用されています。
また、湧水の多いトンネル工事や、水辺の護岸工事、埋立地などの工事では、投入するコンクリートが河川や海に飛散し、水を汚染してしまいます。そこで花王は、自然環境に配慮した水辺での工事に対応する、コンクリート用増粘剤「ビスコトップ」を開発。
2種類の界面活性剤からなる、独自開発の高次構造体「ひも状ミセル」を活用。これにより、コンクリート材料の分離が発生しないため、水中でも飛散することのない、環境を汚染しない工事を可能にしました。

この技術は、水が湧き出すトンネル工事や重要施設の補修など、さまざまな工事に活かされています。これが評価され、2017年5月、日本化学工業協会(日化協)の第49回日化協技術賞「技術特別賞」、2018年4月には「第50回市村産業賞 貢献賞」を受賞しています。

試作したコンクリートの強度を計測

水中での飛散抵抗性を検証

ビスコトップの比較実験映像

さらに、最近では、新しい材料だけでなく、産業副産物や再生骨材などを利用した工事も増えてきています。そこで、こうした材料を使っても、安全で丈夫な建造物ができるような薬剤を開発したり、天然素材原料の活用を研究したりするなど、土木・建築分野におけるさらなるエコを追求し続けています。

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