内臓脂肪測定の有用性

内臓脂肪計の開発

大阪大学医学部、パナソニック株式会社、花王株式会社によって開発された、腹囲生体インピーダンス法の測定原理に基づく内臓脂肪計は、2013年12月、医療機器の薬事承認を取得しました。この内臓脂肪計の特長は、小型軽量で、測定時間が短時間(2~3分)であることです。さらに、腹囲を同時に測定できるため、特定健診への導入が可能です。次項で保健指導に本内臓脂肪計を導入した研究例を示します。

内臓脂肪測定の有用性の検証

内臓脂肪計を健診や保健指導に導入し、その有用性を検証した様々な研究が実施されています。その一部を紹介します。

① 尼崎市役所における職員健診・保健指導への導入
メタボリックシンドロームの予防を目的として、尼崎市役所の職員を対象に、大阪大学医学部主導のもと、内臓脂肪計を導入した職員健診・保健指導が実施されました。2004年度の受診者は、男性2,842名、女性960名で、メタボリックシンドローム危険因子の数は、BMI 25未満、以上に関わらず、内臓脂肪面積100cm2以上の層で高値でした(図-1)。保健指導の選択基準を満たした714名(18.8%)を対象に、内臓脂肪蓄積の説明を含む保健指導および支援対策を実施したところ、2003年度から2005年度の経過において、メタボリックシンドローム頻度の減少および心血管疾患の著明な減少を認めました。内臓脂肪蓄積100cm2以上と判定された1,260名の4年のフォローアップ期間において、内臓脂肪量が低減した879名における心血管イベント累積発現率は、内臓脂肪量が増加した381名と比較して、有意に低値でした。

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図-1 内臓脂肪面積・BMIと危険因子の数との関係

BMI 25よりも、内臓脂肪面積100㎠の方が、メタボリックシンドロームのリスクの把握に有用です。

② 企業健診における内臓脂肪量の測定
複数の企業の健康診断において、内臓脂肪計による内臓脂肪量の測定が行われました。受診男性958名のうち、48%が内臓脂肪面積100cm2以上と判定されました。また、受診男性1,803名のうち、55%が内臓脂肪面積100cm2以上と判定されました。内臓脂肪計で測定された内臓脂肪量は、血圧、中性脂肪、HDL-C、血糖値と、それぞれ有意な相関がありました。内臓脂肪計の測定は、生活習慣病の早期予防の一助となることが示唆されました。

③ 企業の保健指導における活用
京都医療センター坂根医師を統括医師とし、肥満または過体重の勤労男性216名を対象とした保健指導方法の比較評価が行われました。被験者は、対照群、保健指導群(ウェブベースの体重低減プログラムを利用する群)、保健指導+内臓脂肪測定群(プログラムの利用に加え、内臓脂肪計による内臓脂肪測定を実施し、内臓脂肪蓄積の自覚を促す群)のいずれかに割り当てられました。12週間のフォローアップ期間の後、生活習慣改善スコア、体重、ウエスト周囲長、BMIは、保健指導+内臓脂肪測定群で、最も大きく減少しました。内臓脂肪量の測定と認識の有用性が示されました。

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図-2 内臓脂肪計を導入した保健指導の有用性検証結果

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