体の脂肪を測定するために、測定原理の異なる、様々な脂肪量の測定方法が考案されています。対象とする脂肪によっても、測定方法は異なります。
腹部の内臓脂肪量を特異的に測定することは容易ではありません。標準とされているのはX線CT法ですが、X線被曝や装置の普及率に課題があります。メタボリックシンドロームの診断基準では、内臓脂肪蓄積の指標としてウエスト周囲径を測定します。ウエスト周囲径は、X線CT法で測定した内臓脂肪面積と相関がありますが、測定量には皮下脂肪や筋肉も含まれます。
このような課題に対して、花王は、健診や人間ドック、さらに日常の診断において、安全、簡便、かつ高精度の内臓脂肪計測を可能とする測定法の開発に取り組みました。
内臓脂肪量を正確に測定する方法として、腹部への生体インピーダンス法の応用を試みました。これは腹部に微弱な電流を流すことで、内臓脂肪量を測定する方法です。生体インピーダンス法は体脂肪計として普及しており、安全性は確立されています。
腹部生体インピーダンス法の測定原理を説明します。図-2に臍から背中に電流(1mA、100kHz)を流した時に腹腔内に発生する電位の等高線(等電位線)を示します。内臓脂肪を通過する等電位線は、側腹部にあらわれます。側腹部の電圧(インピーダンス)は、内臓脂肪量の多い、少ないを反映するので、この測定値を用いて、内臓脂肪量を算出することができます(図-3)。
大阪大学医学部との共同研究として、腹部生体インピーダンス法とX線CT法による内臓脂肪量の相関を検証したところ、両者には高い相関関係のあることがわかりました。