映画にみるヘルスケア 第59回

「きっと、星のせいじゃない。」
(ジョシュ・ブーン監督、15年、アメリカ)

「貴方を愛せて良かった。私に“永遠”をくれた。すごく感謝してるわ」
  17歳の女子短大生、ともに若年癌患者の18歳の義足男子との恋

映画・健康エッセイスト 小守 ケイ

 「友達が必要よ!」。米国インディアナポリス。甲状腺がんステージ4の肺転移で酸素ボンベを手放せない17歳のヘイゼルが、母に促されて支援団体の集会に初めて参加。「今の調子? “末期癌”以外はまあまあです」。すると、同じく初参加の18歳のガスが「僕は骨肉腫で右脚膝下を切断。部分的サイボーグなんだ!」。二人は互いに惹かれ合う・・。

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「発見は13歳の時だったの・・」

 ガスの車、ヘイゼルの自己紹介。「手術や放射線、化学療法の最中に肺に水が!もう死ぬと思った頃、何故か抗生物質が効いて肺の水が抜けたの。その後、奇跡的に新薬が効いて今に。もう暫くもつみたい・・」。
 「君の趣味は?」。お気に入りのアムステルダムの作家の小説を紹介すると、ガスは「この本、結末が無いよ。オランダに聞きに行こう!」と慈善団体の援助を取り付ける。しかし、旅行直前、彼女の肺にまた水が溜まり、緊急入院!集中治療で回復すると、医師は“旅行中に合併症が起きると危険”と告げるも、「最後の機会よ。薬が効いている内に!」。2人はヘイゼルの母の同行でオランダ3泊の旅へ。

「弔辞、私にも用意しておいてね」

 アムステルダムの作家事務所。「結末? 勝手に想像しろ! 帰れ!」。今ではアルコール依存症の作家が酒を手に暴言を吐く。「酷いわ!」。2人が席を立つと、秘書が“お詫び”と「アンネ・フランクの家* 」を案内する。家は狭く急な階段ばかり。ヘイゼルも必死で酸素吸入機を引っ張り上げ、最上階へ。『こんな状況でも美しいものを想って幸せになるの』。アンネの声の放送の下、同じく逆境の2人が固く抱き合うと、周囲から「ブラボー!」と温かな拍手!

 しかし、翌日の街散歩では「実は僕、脚が痛んで検査したら、全身に転移してたんだ」。涙する彼女。「人生、不公平ね・・」。帰国後、彼の体調は一層悪化。互いに弔辞を頼み合う中、或る夜、「直ぐ来て!」。彼の腹には感染症の炎症が!緊急入院で持ち直し、ガス自ら“葬式リハーサル”もやったが、その8日後、遂に死亡・・。

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映画の見所

 「彼を深く愛していました」。ガスの葬式。弔辞を読むヘイゼルの前に、何と、アムステルダムの作家が!ガスに頼まれ彼女への弔辞を添削し、持参したのだ。「ヘイゼルは温かなユーモアの持ち主。君に出会えて幸せだった。大好きだよ!」。ヘイゼル役のS・ウッドリーの瑞々しくて繊細、説得力ある演技が素晴らしい! “生きる意味”を問う真摯で誠実な物語、世代を問わず胸を打たれる。

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若年期のがん

【監修】 公益財団法人結核予防会 理事 総合健診推進センター 所長 宮崎 滋
 日本のがんの年間発症者数は約100万人です。その多くは65歳以上で、15~20歳の若年がん患者数は年約900人と少数のため、患者には様々な問題が生じます。
 若年性甲状腺がんは首のしこりで発見され、その時点で肺や骨などに遠隔転移を起こしていることがあります。しかし、進行が遅く、転移があっても未分化がんでなければ、治療に反応しやすく、生命予後は良好です。一方、骨肉腫は、膝の周辺の骨に好発し、発症数は日本では年間200人弱で、その60%が若年発症です。初診時、患者の10~20%に肺などへの遠隔転移があり、転移があれば生命予後は不良です。
 患者は受験や進学、就職、結婚などに不安を持ち、同病者も少なく孤立感が強いので、合併症や治療の副作用の苦痛を軽減する為にも、家族や社会の支援が必要です。

  • * ナチスのユダヤ人迫害から逃れるため、アンネ・フランクの家族ら8人が1942年から1944年まで隠れ家として住んでいた家。
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