「ジーサンズ はじめての強盗」
(ザック・ブラフ監督、17年、アメリカ)
映画・健康エッセイスト 小守 ケイ
「俺達、“金欠”仲間だな」。NYに住む高齢男性ジョー、ウィリー、アルはX製鉄の元同僚。特に深刻なのは、家のローン未払で銀行から“黄色の差押警告書”が来たジョーと、腎不全を病み高額な透析治療に通うウィリーだ。或る日、銀行を訪れたジョー、「最近、年金振込が無い。次に“赤の警告書”が届くと差押実行だ」と言われるや、面前に銃を持った強盗が侵入し、大金を盗んで去った・・。
翌日の老人会。ジョーの“強盗遭遇”話で盛り上がる中、ウィリーがX社の封筒を示し、3人は数日後のX社「年金説明会」へ。「国内事業を停止するので、凍結中の年金は消滅」。その上、帰宅したジョーに“赤の警告書”が!
ウィリーの誕生日祝い老人会。ジョーが小声で「家が差押に。銀行強盗しないか?」。ウィリーは呆気にとられるが、彼も“移植”を宣告され、後が無い身。帰宅後、意を決して“OK”の電話。2人は早速、“予行演習のスーパーの万引き”に挑むが、敢え無く失敗!「プロに習わないと・・」。一方、アルも新聞の“銀行がX社年金基金を清算し債務減額”に怒り心頭!「銀行強盗の話、乗るよ!」。
差押20日前、ジョーの元娘婿のツテで“強盗プロ”の指導開始! 実行は老人会“慈善カーニバル”の日とし、工程表作り、空砲の銃撃練習、銀行実踏などの訓練を積む。
いよいよ当日! カーニバル会場で3人は各々の持ち場で働いているように偽装し、定刻14:30、背広に着替え、いざ、銀行へ! 仮面を付けて行内へ入り、空砲一発!「カネを出せ!」。順調に札束を鞄に詰める中、突然ウィリーが眩暈を起こすと、近くにいた“幼女”が仮面の下半分をめくってくれた! 「お嬢ちゃん、有難う」。14:49、工程終了! 夕食は高級レストランで存分に楽しむが、帰路、ウィリーが倒れ、緊急搬送される。「体中が痛い・・」。
翌朝の病院。「早く移植を!」。ジョーとアルが見舞った頃、捜査も進み、2人は連行され、ウィリーの病床にも刑事が! しかし、3人のアリバイは固く・・。
「面通しだ!」。警察に車椅子の老人達が並ぶと、銀行に居た“幼女”がウィリーをジッと見つめる。「ここに居ないわ」。その後、ウィリーはアルの腎臓で元気回復、ジョーも自宅で穏やかな日々を。
年金問題をベースにした痛快で心温まる喜劇。80歳超のオスカー俳優M・フリーマン(ウィリー)、M・ケイン(ジョー)、A・アーキン(アル)が強盗と“アリバイ作り”を見せ場に洒脱な演技で面目躍如、子役達も好演!
【監修】 公益財団法人結核予防会 理事 総合健診推進センター 所長 宮崎 滋
末期腎不全の治療法は血液透析と腎移植です。日本では透析治療患者は約35万人おり、平均年齢は71歳で、最多年代は男性では70歳代、女性では80歳代と高齢化しています。
一方、腎移植は日本では年間約2000件行われ、臓器移植では最多ですが、米国の4万件に比し少なく、その理由は、米国では78%が脳死からの献腎移植ですが、日本では生体腎移植が92%を占める為です。移植患者(レシピエント)の年齢上限は70歳ですが、移植前の免疫抑制療法の進歩により、身体年齢が良ければ80歳以上でも許容されます。しかし、移植患者の平均年齢は49歳であり、高齢者への移植はまだ少数です。
5年生存率は、透析の60%に対し、腎移植では免疫抑制薬の副作用もありながらも98%と良好で、週3回の通院や食事制限が必要な透析に比べて生活の質は向上します。