歯周病は口の中だけの問題ではなく、全身の疾患リスクを上げる要因になることがわかっています。厚生労働省は、歯周病の患者が若年層でも増えていることを受け、自治体の歯周疾患検診の対象年齢に20歳と30歳を追加する方針を発表しました。その背景や今後の歯科健診の展望を紹介します。
従来の制度では、歯周疾患検診の対象は40歳、50歳、60歳、70歳でした。また、乳幼児期は乳幼児歯科健診、学齢期は学校歯科健診、75歳以上は後期高齢者医療の被保険者に対する歯科健診の制度がそれぞれありましたが、20代・30代に向けた歯科健診制度はありませんでした。
しかし、令和4年(2022年)の歯科疾患実態調査(厚生労働省)によると、進行した歯周病がある人(4mm以上の歯周ポケットがある人)の割合は、15〜24歳で17.8%、25〜34歳で32.7%、35〜44歳で34.7%と、若年層でも歯周病を持つ人が多くいることがわかります(図1)。
そこで、生涯を通じた切れ目のない歯科健診を実現するべく、歯周疾患検診の対象年齢が拡大されることになりました。
令和4年の歯科疾患実態調査(厚生労働省)によると、「この1年間に歯科検診を受けましたか」という質問に「受けた」と答えた人の割合は全体で58.0%でした。性別・年代別に見ると、30歳から50歳未満の働き盛りの男性において、特に低い傾向が見られました(図2)。
今後は、歯周疾患検診の対象年齢拡大により、若年層においても口腔の健康維持への意識が向上し、歯周病対策が生涯を通じてより一層推進され、健康寿命延伸につながることが期待されています。