人工膜を用いて化粧品成分の経皮吸収量を予測する

安全性科学

皮膚は人体最大の臓器とも言われ、外界の刺激から生体を守り、見た目の美しさも担っています。皮膚の状態は生活の質に大きく影響しますが、ビューティケア製品(BC製品)の多くは皮膚に接触するため、その安全性担保は重要です。
BC製品の安全性評価では、配合成分が持つ「身体への影響」を見極めるためにも、製品使用時に成分が「皮膚に透過する量(皮膚透過量)」を把握する必要があります。一般的に皮膚透過量の把握には、ヒトまたは食肉用動物の摘出皮膚を使用しますが、現在花王では、皮膚を模造した人工膜に着目しています。人工膜は多検体を同時に解析でき、処方(成分の組み合わせ)による皮膚透過量の違いを迅速に評価できます。
一方、正確な皮膚透過量を把握する際には、塗布した製剤の水分蒸発の考慮が重要です。人工膜を使用した試験では、目的成分の透過性は把握(透過性パラメーター「Kp」の計測)できますが、実使用時の製剤中の水分蒸発は反映しません。そこで、Kpから皮膚透過量を算出する既存の数式に、製剤中の水分が蒸発する前後の成分の透過挙動の変化を加えることで、実使用状況を考慮した新たな数式を構築しました。人工膜より計測したKpを、この数式に代入することで、皮膚透過量の算出が可能となりました。
このように、実試験と理論を融合した新技術の確立は、安全性評価に留まらず、製品開発の迅速化にもつながります。今後、この技術を活用し、迅速に最適な処方を選択することで、安全・安心な製品開発に貢献していきます。

関連するテーマ

花王のESGの取り組み Kirei Lifestyle Plan

より安全でより健康な製品

持続可能な開発目標(SDGs)

SDGsの目標3:すべての人に健康と福祉を

Page Top