動物を用いずに複雑な全身毒性を予測する

予測毒性学

安全で安心な製品を消費者に届けるためには、使用する物質の安全性を精緻に見積もることが重要です。花王は、精緻な安全性評価を通じて消費者の豊かな生活を実現することをめざし、動物を用いずに製品、原料の安全性を評価する手法の開発を進めています。

化学物質のヒトの全身に対する影響は、多くの臓器に対する影響をとらえる必要があるため、生体外で予測することが難しいと言われています。
花王では、コンピュータを用いて物質の構造や既存の安全性情報から毒性を予測するin silico技術、生体試料および培養細胞を用いて臓器の影響を詳細に解析するin vitro技術などさまざまなアプローチから研究を進めています。生体への影響をミクロからマクロまで一貫して捉え、毒性を統合的に理解することで、この難しい課題の解決に挑戦しています。

現在、これら技術を組み合わせた全身毒性への影響を予測する技術として、化学的、生物学的に類似する物質の既知の安全性情報から対象物質の毒性を類推する「リードアクロス」という毒性予測手法に着目し、物質が体に曝露された際の動きを予測する動態予測手法と組み合わせて、毒性の統合的理解に基づいたリスク評価へ活用をしています。

得られた知見や研究成果は、国内外の毒性専門家や各種業界団体、化学物質規制当局との議論を通じ、国際的な次世代安全性評価の新しい枠組みづくりへも貢献しています。

全身毒性を予測する統合的理解に関する概念図になります。 臓器、細胞、構成する分子に関して、in vitro技術とデータサイエンスを組み合わせることで生態影響を予測します。

代表的な毒性予測手法であるリードアクロスを説明した図です。 毒性が未知の物質に対して、化学構造が類似する物質の毒性情報が既知であれば、既知の毒性値を外挿することで動物実験を実施しなくとも毒性を類推します。

全身の物質動態に関する予測手法について説明した図です。 吸収や代謝などの物理化学的指標による動態学的パラメーターを、各臓器の特性を反映した動態モデリングと組み合わせて血中濃度推移のシミュレーションを行います。

Page Top