動物を用いずに複雑な発生毒性を予測する

予測毒性学

安全で安心な製品を消費者に届けるためには、製品を使用される方のみならず、次世代に対する安全性を確認することも重要です。
花王では、次世代への影響予測においても、動物を用いずに評価する手法の開発に挑戦しています。

胎児の体の各臓器が形成される発生過程は複雑であることから、毒性影響の予測は非常に難しいと言われています。
花王では、物質の構造や既存の安全性情報から毒性を予測するin silico技術、物質の影響を詳細に解析可能なin vitro技術など、さまざまなアプローチから毒性を統合的に理解することで、この難しい課題の解決に挑戦しています。

特に、in vitro技術として、ゼブラフィッシュ初期胚を用いて迅速かつ精緻に影響を予測する手法の開発に取り組んでいます。共焦点レーザー顕微鏡を活用したイメージング技術により、外観だけでは形態変化をとらえにくい頭部顔面や心血管の異常に対し、内部構造をクリアに捉えることが可能となりました。異常の有無に加えて、異常を定量的かつ精度よく評価可能な系を確立しました。また、次世代シーケンサーを用いたRNAシーケンスにより、遺伝子発現変動を網羅的に捉えて解析することで、形態異常に至る分子メカニズムの理解にもつなげています。

得られた知見は、ICCS* をはじめとした国内外の各種業界団体、化学物質規制当局との議論・協働を通じ、国際的な次世代安全性評価に対する新たな枠組みづくりへも貢献しています。

  • * International Collaboration on Cosmetics Safety

ゼブラフィッシュの内部構造がクリアに捉えられた写真の例を示しています。 イメージング技術の活用により形態変化が緑色や赤色でハッキリ見えるようになっています。頭蓋顎顔面と心血管での例が示されています。

ゼブラフィッシュでの頭蓋顎顔面異常の発生機序を説明した図です。 受精後24時間までの段階では神経細胞の異常が、24時間後では第一咽頭、96時間後では口蓋裂などの頭蓋顎顔面のかたちでの異常が認められます。

実際に研究している風景の写真です。 研究員が顕微鏡を覗いて観察しています。

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