環境RNAを用いた生態影響評価

環境科学

環境と人間活動には密接なつながりがあり、過剰な消費活動は生物多様性に影響を及ぼします。花王では、自然と共生する社会の実現に向けて、生物多様性への影響を最小限に抑える取り組みを推進しています。

生物の数や種類を調査する生態調査は、生物多様性保全のための指針づくりや、環境問題解決への方針策定などに必要不可欠です。簡便な生態調査技術として、河川や土壌などの環境中に残存する生物に由来したDNA(環境DNA)の分析に注目が集まっています。しかし、環境DNAは壊れにくく長期間残存するため、その場所に生息しない生物も調査結果に含めてしまう誤検出が課題となっています。

花王は一般的にDNAよりも分解されやすいことで知られているRNAに着目し、環境RNAを用いた新しい生態調査手法の基盤技術の構築に取り組んできました。すでにその場所に生息しない生物に由来する環境RNAは、分解が促され、検出されにくい可能性があります。これまでの調査結果から、淡水域の河川の魚類調査において、海産魚の誤検出を低減しうるなど、高精度な生態調査を実現できる可能性が示唆されています。

今後は、本技術を、生物多様性の保全や環境影響評価など、さまざまな環境問題の解決へ展開していきます。本技術の知見を活用し、世界中の消費者に科学的知見に基づく安全・安心な製品をお届けすると共に、生態系に考慮したESG活動に貢献していきます。

図では、河川からRNAサンプルを採取して、次世代シーケンサーを用いて生物種を特定する試験方法について描かれている。 検出されたDNAとRNA量との相関図で、DNAでの測定では河川にいない海水・汽水魚も誤検出してしまうのに対して、RNAでは淡水魚のみを精度高く検出できていることが示されている。

論文発表
K. Miyata et al. Ecol. Indic. 128, 107796, 2021.
K. Miyata et al. Sci Rep. 12, 19828, 2022.
Y. Inoue et al. ACS EST Water 3, 756-764, 2023.

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