実使用タオルにおける微生物集団の実態解析

環境微生物

微生物は、自らが産生した多糖やタンパク質に覆われることで固体表面へ集団となって付着し、さまざまな生活者課題を引き起こす微生物集団(バイオフィルム)を形成します。花王では、生活者課題を解決する微生物制御技術の開発を目的に、このバイオフィルムの実態や生活者課題との関係性を解析しています。

衣類などの繊維製品では、ニオイやくすみの原因のひとつとして繊維上の菌や菌の代謝物による関与は一般的に知られていましたが、日常的に使用するタオルにおいては、その表面に菌がどのように付着しているかなど詳細はわかっていませんでした。
そこで、使用と洗濯を繰り返したタオルを解析したところ、タオル表面のループ状に編まれたパイル糸部ではなく、タオルの最深部である平織り部にバイオフィルムが高頻度で存在することがわかりました。タオルの使用期間が長くなるにつれ、バイオフィルムが大きくなり、くすみも強くなったことから、バイオフィルムが一般的な洗濯では落ちない汚れになっていることが示唆されました。
このバイオフィルムに含まれるDNAを抽出して網羅解析(メタ16S解析)を実施したところ、Tシャツなどの他繊維製品とは異なる種類の菌が高頻度で見つかりました。特にバイオフィルム量の多いタオルからはオーレイモナス(Aureimonas)属細菌などの菌が頻度高く見つかりました。オーレイモナス存在比が高いほど、新品タオルと比較した白さの変化値(相対くすみ度)も大きくなることが確認できました。

今後も微生物の実態解析を通じて、生活者課題を解決する微生物制御技術の開発を進め、人々の衛生的な暮らしの創造に貢献していきます。

タオル内部に発生したバイオフィルムの顕微鏡写真です。 タオルの表面にあるパイル部よりも、より内部にある平織部にバイオフィルムが発生していることが、繊維上に付着している菌を緑色や赤色で可視化したことでハッキリと認識できます。

洗濯しながら繰り返し使用することで、タオル中のバイオフィルムが増加することを検証した写真です。 新品、2か月間、4カ月間、半年間使用した後の4つのタオルで比較評価しており、見た目のくすみ具合は使用期間と共に亢進していて、顕微鏡観察でタオルの繊維の間にあるバイオフィルムも増えていることが分かる。

タオルのくすみ強度とバイオフィルム中のオーレイモナス属細菌の割合とを示したグラフです。 くすみ強度に対応して、バイオフィルム中に存在するオーレイモナス属細菌の割合も相関よく増加していることが分かります。

論文発表
H. Kato et al. Sci Rep. 13, 7611, 2023.

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