皮脂RNAモニタリング技術~あぶらとりフィルム一枚で身体モニタリング~

生体モニタリング

皮膚は「体内の窓」とも呼ばれており、身体のさまざまな状態が反映されます。生体分子のひとつであるRNAは、目では見えない皮膚の微細な変化を広く精緻に知ることができる理想的な指標です。
しかし、一般的に皮膚のRNAを採取する方法は、外科的に皮膚を採取するので、侵襲性が高いと言われています。皮膚を傷つけることなくRNAを採取することができれば、身体の状態を簡便にモニタリングすることができます。

皮脂RNAの発見と解析技術の確立

花王は、長年の皮脂研究を通じて、ヒトに由来するmRNAが皮脂中に豊富に含まれていることを発見しました*1 。この画期的な発見を起点として、わずか一枚のあぶら取りフィルムから、約1万種に及ぶヒトmRNAを網羅的に解析する独自技術を開発しました。この技術は、「誰でも、簡便に、肌を傷つけることなく」サンプリングできる、採取簡便性が最大の特徴です。

花王 RNAモニタリング

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この動画は、花王独自の解析技術である「RNAモニタリング」について簡単に説明しています。

あぶらとりフィルムで顔から皮脂を採取する。フィルム上の皮脂を抽出溶液で取り出す。抽出溶液からRNAを抽出する。抽出したRNAを精製する。精製したRNAを解析可能な量に増幅する。解析に必要な部分を濃縮・精製する。シーケンス可能な状態に処理する。サンプルの入った解析用のチップ。シーケンサーを使って解析する。解析により、RNA発現量を示す数値情報が出力されてくる。数値情報(RNA発現量)を可視化する。
この技術により、皮膚や体内状態を詳細に把握できる可能性がひらける。

身体の微細な変化を読み解く

これまでの研究から、皮脂RNAは一日、一カ月、一年といった時間と共に変化するヒトの生理状態の検出や、アトピー性皮膚炎、パーキンソン病などの疾患状態を精度良くモニタリングできることを報告しています*2-7 。この技術を活用することで、(1)目では見えない超初期症状の可視化、(2)ヒトの生理状態の時間変化の可視化、(3)体内状態の可視化、(4)個々に最適なソリューションの提案、が可能になると考えています。今後はこの技術を活用し、一人ひとりに寄り添い、一生涯笑顔ですこやかに暮らせる社会が実現できるように活動を続けていきたいと思います。

上図:皮脂RNAモニタリング技術の解析プロセス。①あぶらとりフィルムを使用して皮脂を採取し、②採取した皮脂からRNAを抽出・精製した後、③RNA発現量を網羅的に分析し、④最後に得られたデータを解析する。 下図:採取簡便性・非侵襲性・高感度分析などの特徴を活かし、発現特徴の把握やバイオマーカーの探索・同定、機械学習による判定といった形で技術応用。

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