「オマージュ」
(シン・スウォン監督・脚本、21年、韓国)
映画・健康エッセイスト 小守 ケイ
「もっと面白い映画、作ってよ!」。ソウルの団地。夫や大学生の息子に“夢見る女”と言われる中年の映画監督ジワン、今作も不入りで生活費さえ夫の財布を当てにする。「次作こそ!」。摸造オスカー像を手に構想を練るも、不意な発汗や動悸、不正出血による貧血に加えて些細な事も気になり、先に進まない。思わず、長年の相棒の女性プロデューサーに本音を吐く。「シナリオを書くのが心底、怖い・・」。
或る日、“韓国初の女性判事”の生涯を描く60年代の女性監督ホンの映画「女判事」の修復依頼が来る。「中盤から音が無い。音入れを!」。早速、ホンの遺児を訪ね、台本や手帳、ホンら“3女性の写真”を貰って台本に当たるが、台本にある場面が映画には無い! 「フィルムを探さなきゃ・・」。“写真”の裏に書かれた喫茶店を訪ねると、店主で元映画カメラマンの老人が、写真にうつる一人で当時の女性編集者オッキを紹介してくれた。
田園地方のオッキ宅。「昔は“現場に女”は縁起悪いと言われたの」。当時の苦労話と共に「女判事」の封切館を教えて貰い、ジワンは朽果てそうな旧い映画館へ。「そんなフィルム知らないな」。映写技師は不愛想だったが、“うちの経営者は帽子屋だった”と帽子の山から1つくれた。
1ヵ月後、バイトのお蔭で気分は上向くも身体が付いていかない。不正出血が続き、病院へ。「筋腫が去年より5㎝肥大」。数日後、再出血すると貧血で失神、台所で倒れ、息子の手配で緊急入院、子宮摘出手術へ!
「治った? 良かったね!」。無事に退院すると、息子が映画館で貰った帽子を被って踊り出し、帽子のリボンが剥がれる。「アッ、これ、フィルムだ!」。急遽、映画館に向かったジワン、術後の痛みを堪えて映写室の帽子の山を探ると、リボンは「女判事」のフィルムだった!
「見つけました!」。急ぎオッキにフィルムを繋ぎ合わせて貰うが、全て繋いでも一部が欠落! 「検閲のせいよ。当時、女性の喫煙場面はカットされたの・・」。
「貴女は生き残ってね!」。オッキに映画作りを託されたジワン。バイトが無事終了し、届いた映画祭案内葉書には、「女判事」が開幕特別上映作品と!
名脇役イ・ジョンウン(「パラサイト 半地下の家族」の高台の富豪一家の家政婦役が有名)の初主演作&アジア太平洋映画賞最優秀演技賞受賞作。女性監督スウォンの人間賛歌で、人生に途惑うジワンが時代を超えて女性達と連帯し自分をみつめ直す物語。
【監修】 公益財団法人結核予防会 理事 総合健診推進センター 所長 宮崎 滋
子宮筋腫は30歳以上の女性の20~30%に見られます。子宮内の発症部位により症状は異なり、子宮内腔に近い筋腫は不正出血が強く、不妊の原因にもなります。子宮内部の筋腫は腫大すると腰痛や頻尿などを生じます。急速に腫大する場合、悪性の子宮肉腫が疑われますが、全子宮筋腫の0.5%程度です。
子宮筋腫は、卵胞ホルモン依存性の為、更年期や閉経後に卵胞ホルモン分泌量が減ると縮小し、症状も軽くなります。症状が強く閉経を待てない場合は、卵胞ホルモン分泌を抑える点鼻薬や注射による偽閉経療法が行われ、妊娠を希望しない場合は子宮摘出手術も選択されます。
子宮筋腫は、肥満や高血圧があるか、卵胞ホルモンの分泌期間が長い場合に起こりやすく、近年は出産未経験や妊娠回数が少ない女性が増えた為、発症率は上昇しています。