キメ(毛流れ)を揃える
私たちの手の表面には水分量を感知できるセンサーは見つかっていません。手で触った時の熱移動が大きく冷たく感じることでよりうるおっていると感知していることが花王の研究で明らかになっています。
つまり、髪がキレイに揃っていると手に触れる面積が大きくなって熱移動が大きくなり、凸凹が少なくなめらかであることと合わせて、よりうるおっていると感じるのです。
乾いた髪に水分を与えると、髪内部の水素結合が切れて形が変わりやすくなり、元の髪のくせが出るなどして毛流れが乱れます。雨の日など整えた後で湿度が高くなると、パサついて感じるのはそのためです。
髪のうるおい感は、保湿ではなく、髪1本1本がキレイに並んだ、キメが揃った状態を作ることが重要です。
既存の絡まり低減技術は、髪に潤滑ゲルを吸着させて、表面摩擦を低減するというのが一般的。これでは指で髪の絡まりを解き、潤滑ゲルを髪全体に行き渡らせないと、絡まりが残ります。
髪を洗う時に生じる、目に見えないくらいの、手では感じきれない無数の髪の絡まりが、乾燥後まで残ると、毛流れが揃いにくい原因になります。
キメを揃える技術開発に際しては、指を十分に通さない状況でも自発的に、絡まりをなくすという目標をたてました。
絡んでいる毛髪間に働く力を解析したところ、毛髪と毛髪の間には強い接着力が働いていて、指を十分に通さない状況でもいわば自発的に絡まりをなくすには、摩擦を下げるだけでなく、この接着力を低下させる必要があることが明らかになりました。
素材を探索した結果、分子間力が小さく毛髪への吸着性に優れる特定の水溶性のシリコーン潤滑剤を用いると、濡れた状態の髪と髪の摩擦を大きく低下させることができ、指を十分に通さない状況でも自発的に絡まりをほどけることがわかりました。この技術をシャンプーやコンディショナー等に応用すると、洗髪から乾燥までに生じる髪の絡まりを大幅になくし、洗うだけで自発的にキメが揃う髪を実現できました。
ヘアスタイルを整えたときにしっかり乾いていると、乱れにくく寝ぐせもつきにくい。しかし、髪の量が多く面倒だったり、髪に良くないのではないかと考えて、全体を万遍なくしっかり乾かしている割合はむしろ低いのが実態です。
自発的に絡まりをなくす(キメを整える)技術で、濡れているときから絡まりをほどけやすくしておくと、水の通り道ができて髪と髪の間の水が乾きやすくなりました。(図参照)
乾かし残しやすい部位は、根元と毛先。速く乾かすことができると、根元は立ち上がりやすくなり、毛先は乾燥時のくし通しが少なくて済むなど、ヘアスタイルの仕上がりや傷みを軽減するメリットもあります。