ヘアスタイルとスタイリング技術
ヘアスタイルは、カット・パーマ・乾かし方など、仕上げる技術とともに変化してきました。日本では、洗髪頻度が高くなり、乾かす頻度が高くなったことも連動しています。
髪の傷みが意識され、毛髪のしくみの解明が進み、元々の髪を生かし自然に見せる方向で、様々な技術の進化とともに、お手入れ方法も変化してきたと考えられます。
日本人の欧米人女性への憧れも、ヘアスタイルやヘアカラーの開発が進んだことの背景にあります。
【参照】近年のヘアスタイルの歴史
1950年代
ショートヘア流行。
1960年代
はさみ(シザー)で形作るヘアスタイルが提案され、カット技術でヘアスタイルをつくる時代が始まる。
1970年
ウルフやサーファーカットといった外側に段差をつけたレイヤースタイルが登場
1980年代
レイヤーパーマブロースタイル
1980年代後半-90代年前半
ワンレングス流行
1990年代以降
日本人の美容師によって、日本人女性の毛量や髪質に合わせたカット技術が工夫されるようになる(参照:近年のヘアスタイルの歴史)
1905年
アルカリと熱によるウェーブ法がイギリスで発明
1930年
日本でも始まり急速に普及(1940年自粛)
1940年代
アメリカでチオグリコール酸を主体としたコールドパーマ開発
1950年代
電髪からコールドパーマの時代に(日本では1955年から)
1970年代
レイヤーカットでパーマをかけたスタイルが流行
1980年代
レイヤーカットでパーマをかけたスタイルをブローしたスタイルが普及
1980年代後半
ソバージュが大流行、1992年パーマ剤の出荷額最多に。
1990年代
より緩やかで自然なパーマスタイルが嗜好され、ロッドの種類や巻き方が工夫される
1990年代後半
アイロンを用いた縮毛矯正普及(ホット系パーマ)
2000年代半ば
1剤処理乾燥後加温するウェーブパーマ普及(ホット系パーマ)
2010年頃~
ホット系パーマの剤、加温器の開発改良が進む
2000年前後にアイロンを用いた加温式パーマ、化粧品基準内で洗い流すヘアセット料が使用できるようになり、女性向けにホットパーマ施術が始まりました。まず、アイロンを用いた縮毛矯正が若い世代で広まり、続いてウェーブ・カールパーマでも行われるようになりました。ヘアカラー(酸化染毛剤)毛にも施術可能というふれこみでしたが、加温器具も剤の設計も発展途上で、髪が傷むなどの問題が多く、ヘアカラーに興味が向いていた時代でもあり、当初は普及しませんでした。
2010年代に入って、剤・機器・サロンの使いこなし技術が進み、コールド・ホットともヘアカラーをしている髪にもかけられる傷みの少ない、持ちの良い方法が普及し始めています。
2000年頃には、50代以上で半数以上の人が行っていたボリュームアップ目的の全体パーマは激減しました。
ヘアカラーが髪のおしゃれとして定着し、加えてパーマをかけると髪が傷むという意識から、パーマをかけずにヘアスタイルを楽しむ傾向になっています。
ダウンスタイルが普及し始め、ブローが広まる以前の仕上げ方法といえば、ブラシで整えたり、カーラーで仕上げる方法でした。夜寝る前にパーマスタイル全体をカーラーで巻いて、朝にブラシでふんわり仕上げるという整え方です。
1970年代、ブラシとハンドドライヤーで仕上げるブローが普及し始めます。日本でも、家庭向けにハンドドライヤーやくるくるドライヤーが発売されました。ブラシでホールドしながら乾かして、まっすぐに揃えたり、フロントやサイドのレイヤーを流して仕上げたりしていました。
ドライヤーは温風で乾かす機器ですが、初期のドライヤーは風量が弱く熱をかけて乾かすもので、根元から全体をしっかり乾かすためにはブロッキングして少しずつ乾かす必要がありました。濡れている髪を乾くまでブラシで繰り返しとかすことで傷むのですが、ドライヤーの熱によって傷むという意識が生まれました。
1990年代、毛先を削いでまとまりやすくするカットが流行り、ハンドブローやノンブローで全体を乾かし、ワックスで毛先をまとめたり形づけて仕上げる方法が広まりました。
2000年以降、カットで全体のシルエットもつくられ、根元から順に髪の流れを整えるように乾かせば、ヘアスタイルがきまるようになりました。家庭用ドライヤーも風量が大きいものが増えて、髪に熱が留まりにくくハンドブローでも全体を速く乾かしやすくなりました。2016年頃から風量も温度も何段階か切り替えられる製品も増えています。
さらに、根元を先に乾かすとよいことや、乾いて形が決まるというしくみが知られるようになり、ハンドブローが広まり、ブラシは乾き際に使う傾向になっています。
アイロン・コテは、髷を結っていた時代からあるものですが、現在使われているものは、1990年代半ば頃、ストレートアイロンから普及しました。2000年前半に髪が長くなるにつれ、カールアイロンも多く使われるようになり、巻き髪スタイルやボブの内巻きワンカールスタイルで使われ、若い世代中心に普及しました。
アイロンは、加温して水素結合を動きやすくした状態で形や毛流れを整える機器です。ある程度の高温にすることで水で濡らすのと同じように、髪が柔らかくなって形を変えやすくなります。髪が乾いた状態で、ストレートやカールに決めるために使います。柔らかくして形をきめるまでが短時間で済みます。
パーマをかけると髪が傷むという意識から、若い世代では、パーマをかけずにアイロンでストレートやカールスタイルを楽しむ傾向で、朝の仕上げに多く使われています。中には、朝乱れた髪にクシを通さないままアイロンを使う習慣の人もいて、傷みが急激に進む例が見られます。
カラーリング頻度の高い中高年でもパーマ率が低下し、ストレートや根元のボリュームアップ目的に徐々に使用率が増えています。
1970年代のスタイリング剤は、ヘアクリームやヘアスプレーが家庭で使われている主なものでした。ヘアスプレーは、家庭向け専用に、当時の製品の中ではごわつかず使いやすく調整したものが発売されました。
1980年代、ブローが広まった時代、ウォーター/ポンプディスペンサータイプのブロースタイリング剤が発売されます。また、泡状製品が登場し普及した時代です。ヘアクリームよりも伸びが良く、べたつかないトリートメントタイプ、ポリマーのセット力で形をつけやすくキープするものもありました。
1980年代後半には、ウェーブ(ソバージュ)ヘアの仕上げ用として専用製品が発売され、多く使われました。またヘアスプレーやミストといったより強いセット保持力を持つ仕上げ用の製品が、前髪用やまとめ髪用に多く使われました。日本人は比較的毛量が多いので、カットで毛量をあまり調節していない時代は、髪と髪の間をくっつけてボリュームを抑えたり、形をキープする役割が重視されました。
1990年代後半、毛先をカットで削いで毛量調整するヘアスタイルが広まり、ウォーターで濡らして毛流れを整えやすくし、ラフに乾かし、ワックスでまとめたり毛束を作って仕上げるという方法が定着しました。ワックスは美容室発信の製品で、ヘアスタイルとともに広まりました。トリガータイプのウォーターは、噴射量が大きく手早く濡らせる剤型として、この頃に発売・普及しました。
2000年代は、カラーリングが普及し、カットでヘアスタイルが作られるようになったため、髪のコンディションを整えることが重視されて、洗い流さないトリートメントが使われるようになり、様々な剤型でラインナップされるようになりました。
ヘアスタイルをキープする剤としては、ヘアスプレーやワックスが使われています。
2010年代以降、ヘアオイルが様々な質感や性能で発売されています。スタイリングとケアの機能を併せ持つ製品を狙って、ヘアスタイルに合ったセット性、自然で心地良い感触、髪の補修・傷み防止効果などをもつ、素材や製剤の研究開発が行われています。
ワンレングスの時代でブローの普及期。毛流れをそろえつつ、ストレート・カールなど髪の形を作ってまとめていました。ストレートやレイヤー部分は、ブラシでブローしていました。
1980年代後半~1990年代前半、ソバージュが流行。濡れた状態のウェーブを、フォームを塗布して自然乾燥する方法で仕上げました。前髪やウェーブをキープするために、セット保持力の高いスタイリング剤が重宝されました。
ヘアスタイル
毛流れや形をしっかり作るようになった
仕上げ方
その他関連事項
ヘアスタイルに軽さをねらい、美容師の提案で毛先を削いでレイヤーにし、髪色が明るくなりました。面をきっちり作ってまとめるのではなく、ラフに乾かし、ワックスで毛束を作り、まとめたり動きを出したりする仕上げ方が普及しました。
ヘアスタイル
毛先を削いで毛量調節するスタイル
無造作な仕上がり
仕上げ方
その他関連事項
小顔効果をねらって、カットで頭の丸みを出し、毛先は削いだスタイルに。2003年頃から髪が長くなっていきました。40代でもセミロング以上が増えました。
カラーリングダメージが意識され、洗い流さないトリートメントが使われるようになります。ストレートや毛先のアレンジに、ヘアアイロンが使われるようになりました。
ヘアスタイル
頭に丸みがあり、毛先を削いだスタイル
ロング化に伴い、巻き髪スタイルが普及
仕上げ方
その他関連事項
2000年代後半から、髪色の明るさを抑え、表面の段差を見えないようにカットすることで、髪をきれいに見せる方向に。内側を毛量調整し、ワンレングス風のスタイルになりました。ボブが流行しました。
ヘアスタイル
ヘアスタイル:髪表面を美しく見せるために、表面を伸ばし、毛先の量感を豊かにし、まとまりやすいワンレングス風に
仕上げ方
その他関連事項