洗髪/頭皮と毛髪のケア
洗髪頻度が高くなり始めたのは、日本では戦後です。
平安時代
年1回ほど
江戸時代
月1~2回(最も高頻度な江戸の女性で)
昭和戦後
月1~2回
昭和30年頃
1回/5日
1980年代
2~3回/週
1990年代半ば
ほぼ毎日(10-20代女性)
2015年
ほぼ毎日(10-50代女性)
昭和の戦後(1950年)頃まで、洗髪頻度は平均月1-2回。洗髪頻度が週2-3回になるまではどうしていたでしょうか?クシやブラシでとかすことで対処していたと考えられます。
とかして髪の汚れを落とし、毛流れを整え結うなどしてまとめる以外に、頭皮の皮脂を積極的に毛髪に移して脂肪酸などに変質するのを抑え、頭皮への刺激やニオイを軽減する効果があったと考えられます。とかすことではニオイは完全には抑えられず、御香を使ってニオイ消しをしていたという記述が古くから見られます。
髪に移した皮脂は髪を整え束ねるのにも活用されていました。クシ通りやまとまりを良くしたり髷を結ったりするためには、さらに椿油などの液状の油や固形の油が使われました。洗髪頻度が低い時代は、束ねてまとめたり髪油を使って結い上げる髪型が主流でした。束ねずにいると、汚れていて、髪の感触が悪かったり、毛流れがバラバラに乱れてまとまらなかったのではないかと想像されます。髪を束ねないさらさらスタイルが主流になったのは、洗髪頻度が高くなり、お手入れ方法が変化したごく最近のことといえます。
随分長い間、月1~2回以下だった洗髪頻度が高くなった背景のひとつとして、内風呂が普及したことが大きく影響していると考えられます。
1945-59年
銭湯全盛
1960年代
日本住宅公団発足し風呂付住宅が普及
1968年
内風呂率7割以上
1979年
給湯器付き風呂釜誕生
1980年代
洗面化粧台登場
明治時代までは、皮脂や髪油といった油性の汚れを落とすために粘土や火山灰、洗い上がりの感触を良くするためにふのり・卵白などが使われました。
大正から昭和初期にかけて、髪洗い粉(白土・粉石けん・炭酸ソーダなどを配合したもの)が出回り、1930年代に、安定した性能と品質の固形石けんが発売され、1955年粉末シャンプー、1960年液体シャンプーが発売されて普及し、現在に至っています。
洗髪頻度がまだ週1回程度だった頃の関心は、「フケ・かゆみ」防止で、洗浄機能に加えて、フケ・かゆみ防止効果成分として、消炎剤や抗菌剤が配合されるようになりました。
「5日に1度はシャンプーを」
1960年頃、カオーフェザーシャンプーの広告キャッチ。たびたび洗っても髪が傷まず、仕上がり感が良い、という内容。当時の洗髪事情が伺えます。
以前、洗髪は、髪油などをしっかり取り除くために、ときどき行われるものでした。身だしなみとして髪を結ったり束ねたりしていたため、髪油を取り除く意識が高かったと考えられます。そこで、マッサージを語源とするシャンプーとは異なり、「洗髪」という言葉が使われたのかもしれません。
洗髪頻度が高くなると、かゆみやニオイ、フケが気にならなくなり、快適で心地よいため、習慣化したと考えられます。皮脂や汗とその変化した頭皮トラブルの原因物質をまめに取り除けるので、理に適った自然な流れと見ることができます。
1970年代、洗髪頻度が週2-3回になり始めた頃から、髪がパサつく・感触が悪いという意識が高くなります。洗髪と整髪の頻度が増え、ブラシブローも普及し、濡れているときに髪がこすれたり引っ張られたりして傷む機会が増えたからです。
この頃から、シャンプー製品には、フケ・かゆみ防止だけでなく、髪をケアし感触を整える機能が加わります。クリームシャンプー、オイルシャンプーなどが発売され、リンス・コンディショナー・トリートメントが生まれました。この後、シャンプーにもコンディショニング技術が導入され、シャンプーブランドのコンセプトは、毛髪への効果が主流になります。キューティクルケアという考え方もこの時代に生まれました。
洗髪頻度とブラッシング
洗髪頻度が週2-3回になる1970年代、ブラッシングを1日に100回くらいするのが髪に良い、といわれていました。
洗髪頻度が高くても、ブラシを通す回数が多くても、キューティクルが傷むリスクは高まります。
とかす頭皮ケアと、洗う頭皮ケアの歴史の狭間で、残り広まったお手入れ神話だったのではないでしょうか?
毛髪のケアが注目されるようになる中、1980年代、肌によりやさしいものを目指して、洗浄成分の開発が行われ、石鹸やラウリル硫酸ナトリウム(AS)に代わって、1980年代後半には、現在広く使われているポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス硫酸ナトリウム、ES)が、より低刺激で、なめらかな泡立ち、水溶性や他の成分との相溶性の良い洗浄成分として使われ始めます。
1990年代、洗浄成分の低刺激性や植物性・天然をコンセプトとしたブランドがいくつか生まれました。
2001年、家庭向けに肌や髪にやさしい弱酸性シャンプーが上市されました。サロン向けには以前からあったものの、ぬるつかない、すすぎやすいなど、扱いやすい液性や泡質、仕上がり感にするのが課題でした。この後、多くのブランドから弱酸性の製品が発売されています。
ASもESも油脂成分は当初から植物由来です
1990年代後半、欧米からサロンのヘッドスパ、ヘアエステサービスが導入され、頭皮ケアに興味が向くきっかけになったと考えられます。頭皮をオイルなどを用いてていねいに洗浄し、マッサージするというもので、施術の気持ち良さが噂となりました。
洗髪頻度の低い時代は、頭皮と髪を区別せずに一緒に洗う意識でしたが、頭皮と髪をそれぞれ洗いケアする意識を高めるきっかけになったと考えられます。洗浄ブラシやマッサージャーなどが開発されるきっかけにもなりました。
2000年代後半には、雑誌などのヘアケア記事には必ず頭皮ケアの要素が入り、お手入れ方法に関心が集まるようになりました。
またこの頃から、頭皮の実態、洗髪行動実態が調査研究され、頭皮で起こっていることをより具体的に盛んに研究されるようになりました。
1980年代は、超ロング、ソバージュが流行し、傷み対策・枝毛防止成分として仕上がりのなめらかさに優れた高重合度シリコーンが用いられ、コンディショニング成分として使われるきっかけになりました。
1990年代末にはヘアカラーが普及し、2000年代にはアイロン・コテが頻繁に使われるようになり、縮毛矯正やデジタルパーマなどのホットパーマが行われるようになるなど、髪にとってはかなり過酷な状況になりました。
このような状況で、毛髪のダメージケア技術が進展します。カラーリングの普及に伴い、感触だけでなく髪の見え方や髪の内部構造に関しての研究も深まりました。そして「髪の内部に浸透して補修する」というコンセプトが注目され、「洗い流す」トリートメントの使用率が増加、加えて、「洗い流さない」トリートメントが家庭で使われるようになりました。
その中でも、オイルが、するっとなめらかな手触りや、毛流れが揃えやすくなることなどが好まれて着実に成長し、様々な剤型やテクスチャーが開発されています。
以下の研究知見が広く一般に認識されるようになってきました。
さらに、頭皮や身体の健康と毛髪との関係、皮膚常在菌の菌叢と頭皮トラブルへの影響、遺伝子による毛髪や頭皮の性質の発現などについても研究が進められています。
日本のヘアケア製品・機能のヒストリー
1960年
液体シャンプー発売
1961年
家庭用リンス(薄めて仕上げにかけるタイプ)
1975年
家庭用リンス(髪に直接塗布してすすぐタイプ)
1976年
キューティクルケアコンセプト
1986年
朝シャンブーム始まり
1987年
超ロングスタイル、ウェービーが流行し、枝毛ケア成分として、高重合度シリコーンが使われるようになる
1989年
リンスインシャンプー
1992年
夜シャンプーが定着
1993年
植物、ナチュラル嗜好の始まり
2001年
家庭用シャンプーの弱酸性化始まる
2002年
ヘアカラーダメージ対策として浸透補修コンセプト
洗い流さないトリートメントの使用増加
2003年
美髪コンセプト
2004年
頭皮ケアへの関心高まる
2007年
髪のエイジング研究・コンセプト
2010年
頭皮ケアに再び関心が高まる
ノンシリコーンシャンプー人気、オイル人気
2017年
ボタニカル人気