メイクアップ
くちびるは構造的に非常に乾燥しやすい部位で、メイクアップ製品である口紅においても「うるおい性能」は消費者にとって非常に重要視される性能です。花王が行なった調査から、多くの人が口紅のうるおいを「くちびるをすり合わせた時の滑らかさや厚み感」から感じていることがわかり、口紅へうるおい感触を与える新しいアプローチとして着目しました。各種市販素材の評価を行ない、このような感触を与える素材を見出すことができたものの、曳糸性(液体が糸をひく性質)を伴うという致命的な欠点があることがわかりました。それらはレオロジー特性として、高せん断速度側で第一法線応力差(N1)を発現するという特徴があります。これは一般的にワイゼンベルク効果(図1)として知られている現象です。そこで花王は、市販品では達成し得ない高いN1を発現しつつ曳糸性の低いポリマーの設計および開発を行ない、分子内の会合体の形成・崩壊を利用した長鎖アルキル変性セルロース(RCE)を見出すことができました。RCEは、超高分子量体のようにふるまって法線応力を発現し、うるおい感触が得られますが、塗布後くちびるを開けるような大変形に対しては会合が崩壊し低分子量体のようにふるまい曳糸性を抑えます。(図2)
この技術は、平成28年日本レオロジー学会技術賞を受賞しており、「ソフィーナ」の口紅にも応用されています。
図1 法線応力について
図2 長鎖アルキル変性セルロース(RCE)を含む溶液のレオロジー特性
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