分子シミュレーションによる界面活性剤の物性研究

界面科学

界面活性剤は水溶液の濃度や温度によって、固体、液晶、ミセルなどの多様な会合構造を示します。これらの会合構造は流動性などの製品の性状に関与するため、極めて高度な配合・調製技術が求められます。しかし、広く利用されている界面活性剤でさえも、配合を考える上で基本となる会合構造中の個々の分子の振る舞いを明示することは困難でした。
花王は名古屋大学との産学連携を通じて、界面活性剤が形成する会合構造のひとつである、二分子膜状を呈するラメラ相の詳細構造を分子動力学(molecular dynamics; MD)シミュレーションによって調べ、さらにそれぞれの相における個々の界面活性剤の動的な振る舞いを可視化することに成功しました(Langmuir, 2019, 35 (27), 9011–9019, Langmuir, 2019, 35 (33), 10877–10884)。これにより、直鎖型ベンゼンスルホン酸ナトリウムにみられる代表的な3つのラメラ構造(水和結晶、傾斜ゲル、液晶)において、分子内のアルキル基(炭素原子、水素原子で構成される線状の構造)の運動性、屈曲構造がそれぞれ異なることをはじめて明らかにしました。
今後、詳細な分子の状態の解明につながる研究をさらに深化させることで、さまざまな原料が発現する詳細な機能を解明したいと考えます。

直鎖型ベンゼンスルホン酸ナトリウムのラメラ構造の代表的な分子運動状態
原子の色分けは以下の通り:炭素は青、酸素は赤、硫黄は黄、水素はグレー

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