花王グループでは、世界の子どもたちに、身近な生活のエコと地球の環境・未来について真剣に考え、絵画として表現してもらい、それを多くの人たちに伝えることで、世界中の人々が暮らしの中で環境を考えて行動するきっかけとなることを願い、2010年からこのコンテストを実施しています。
10回目となる今回は、世界中の子どもたちから16,552点のご応募をいただきました。その中から厳正な審査により選ばれた32点の入賞作品を、子どもたちがそれぞれの作品に込めたメッセージと共にご紹介します。
審査風景・審査員の総評・第10回コンテスト表彰式の様子はこちらからご覧いただけます。
第10回 花王国際こども環境絵画コンテスト(2019年)
作業員がガラス張りのビルを磨いているところです。ガラスにはビルに隣接する公園が映っています。自然とテクノロジーが共存できるということをこの絵で表現しました。私たち人間ひとりひとりが自然を守るために、森林を保護し、環境汚染をやめれば、私たちは自然環境に満足できるでしょう。
自然豊かなタイから、自然と社会との共存を願う気持ちを素直にビジュアル化した力作が届いた。子どもが夢見る未来に対するポジティブなイメージを、大胆な構図と原色を多用した明るい色使いで表現。上部に描かれている清掃用ブランコは、空を飛ぶことへの憧れや喜びの象徴にも見え、普段生活している場所から、新しいステージに飛び越えていくといったメッセージが伝わってきそうだ。木々や動物の描写、青い空に浮かぶ白い雲のあしらいにも、圧倒的なセンスを感じる。
水は地球に存在する最高のもののひとつですが、限界があるため、私たちは水を大切に使うことや水をうまく利用することを知る必要があります。
子どもは親のサポートを受けて、どれだけ水が大切なものか、そして水を無駄にしてはいけないことに気づくというのが私のアイデアです。
これは夢や願いではありません。世界中の人々の課題ともいえます。なぜなら、地球は私たちの家だからです。
私の絵を見て、人々がこの状況を理解し、環境や水を徐々に改善することに取り組み始めてくれることを私は願っています。水遊びは楽しいですが、責任が伴います。
描かれているのは、雲の上を楽しそうに闊歩する人々。雲の下には雨が降り、植物が芽生え、新しい生命が育まれていく。まるで夢の中にいるかのような不思議なストーリーを感じさせる、非常にユニークな作品だ。雨はマイナスなイメージとしてとらえられることもあるが、この作品では「恵みの雨」としてポジティブに表現している。その豊かな発想力が、明るくハッピーな世界観を創り上げているのだろう。
美しい木が並ぶ森を燃やさないこと、世界のどこであれ動物が死なないことが私の願いです。
動物を大切にし、水や食べ物を動物に与えてほしいです。
ごみを海に捨てないようにしてほしいです。そうすれば、魚たちがいつもきれいな海を泳げるからです。
土地や森、海は人間のものではないこと、そして子どもたちには将来、土地や森、海を使用し、楽しむ権利があるということを大人たちが理解してくれるよう、私は神様にお願いしています。自然を破壊することは私たちを破壊することでもあるからです。
現代の大人たちに警笛を鳴らす作品が多い中で、「人と動物が寄り添って生きる」という絶対的な幸せの在り方をシンプルに表現している。地域によって幸福の象徴は異なるが、左右つながった眉毛はペルシャ地方ならではの特徴的な文化。ライオンの生き生きとした表情と相まって、平和で多幸感あふれた世界を生み出している。色を混ぜずに原色そのままをぶつけていく感性は、日本人にはないもの。そのバランス感覚には、目を見張るものがある。
地球はどの星とも違い、とても美しいです。地球は私たちに命を与え、私たちは地球を保護し、たいせつにします。未来が今日始まっているということを理解し、地球が私たちに発信するメッセージを真剣にとらえる必要があります。この絵は私が考えた地球にやさしい物語を表現しています。材料を再利用したり、自然に対する人々の考え方を変えたりするなど、プラスの変化が物語の要素になっています。私たちは、賢明な判断をする必要があります。その判断で未来が変わってくるからです。環境にやさしい判断がかしこい判断です。なので、一緒に環境にやさしくなりましょう!
緻密なタッチで、画面の隅々までくまなく描き切った力作だ。作者がこの絵にかけた時間と情熱は、計り知れないものがある。作品のテーマは、人と自然の共生。山の向こうから流れてくる澄み渡る空気、そしてそこで生活している人々の豊かな暮らしを瑞々しく表現している。「未来に向けて私たちはどう生きればいいのか」という普遍的な問いに対して、さまざまなヒントを投げかけてくれる本作。いつまでも見ていたくなるような魅力にあふれている。
私たちの体のすべての部分は環境破壊を観察していることを表現しており、作品の中の黒色によって悲しみを表現しています。
具体的な状況をわかりやすく描いた作品が多い中、抽象的なアプローチで個性を放っている。打ち上げられた魚を見つめる多数の眼、そして、顔の見えない少女の脚。これらはいったい、何を意味しているのだろうか。見るたびにイマジネーションを掻き立ててくれる、不思議な味わいのある作品だ。絵からはっきり聞こえてくるのは、「自分自身の目で、しっかりと現実を受け止めよう」というメッセージ。じっくりと味わいたい。
世界には汚染のひどい場所があります。むかしは美しかった景観は今、工場や伐採された木、ごみの山で埋めつくされています。絵の中の絵画は、私たち全員が環境にやさしくなれば実現できるかもしれない土地を描いたものです。それぞれ自分の「筆」を持っていて、必要なのはその筆を正しく使う方法を見つけることです。一人ひとりが小さな方法で貢献し、そうした貢献によって長く機能するでしょう。あらゆる年齢や民族の人々が、緑の草や青い空を再び母なる大地に描けるように協力します。
絶望的な状況に陥っている現実を直視しながらも、理想の未来の姿を思い描いてみる。行動を起こしたり、言葉を発したりする前に、まずは可視化してみようという純粋な問いかけが、見る者の心を打つ。理想と現実のギャップに愕然としながらも、それでも自分たちの理想に近づく夢は決してあきらめない子どもたち。「現実はこうだ。しかし、みんなで未来を変えていこう」という呼びかけを、次なるアクションにつなげなければいけない。
環境を守るために集まり、仕事を分担し、捨てられた資源を正しく分類する人々をこの絵に描きました。空のボトルや缶、使わなくなった家電製品を使えるようにするだけではなく、新しい再利用方法も見つけます。たとえば、ガラスを再利用して、道路に使われているセメントにガラスを混ぜれば、夜は道がきらきら光るし、きれいに見えます。どんなに小さな行動でもかまわないので、みんなが正しいことをするべきです。小さな達成をたくさん積み上げることで、私たちの生活環境が清潔になり、よりよいものになります。
ごみの分別は、世界中で問題視されているテーマで、これまでも多くの作品が寄せられていた。なかでもこの作品が秀逸なのは、人とごみの描き方だ。マスクをするほどの悪環境の中、黙々と作業する人々。一方、プラスチック、タイル、ネジなどのごみは、それぞれ同じ色味の中にも変化を付け、緻密に描いている。パターンの繰り返しを多用し、「みんながつながってリサイクル活動を継続していこう」というメッセージを投げかけている。
科学雑誌『サイエンス』によると、最も効率よく気候危機に対処する方法は木を植えることです。1兆2,000億本の木を植えるグローバル植樹プログラムで二酸化炭素排出量の3分の2を吸収できます。この絵では、さまざまな国籍の人々が種や苗木、道具を使って木を植えています。健全なエコシステムが再構築されたあと、地球上のすべての生き物が幸せに、永遠に生きられることを私は願っています。
「地域ごとに異なる多様性を受け入れながら、人と人はつながっていこう」というメッセージを、ストレートに可視化。絵を見る距離によって変化するストーリー性もすばらしい。遠くから見たときの印象は、1本の大木から伸びていく多数の枝をモチーフに、自然界に脈々と流れるといった生命力をテーマにした作品。しかし近寄って見ると、多様な民族が一堂に集い、生き生きと暮らす様子が浮かび上がってくる。優しくも繊細な色使いも、のびやかな雰囲気を与えている。
黄色いブルドーザーで広い大きな池のゴミをとりのぞいています。いろいろなごみがいっぱいで、その中に生き物がいっぱいいたのにびっくりしました。池をきれいにすることも、エコのひとつではないのかと思います。
地震や台風の災害が続く日本において、「自分たちで汚したものを、自分たちで集める」という、避けては通れないテーマを取り上げた。世界の環境問題について、「もう後戻りできない最悪な状況まで来てしまっている」といった悲観的な作品も多い中、この作品から感じ取れるのは、「みんなで知恵を出し合って、まずはトライしてみよう」という前向きなメッセージ。黄色いショベルカーを見切れるほどに配置した大胆な構図と色彩的なインパクトが、意思の強さを強調している。
ただならぬ緊張感に満ちた画面の中でうずくまる子どもが、自分にできることがあればしなければと、不安な目をして水と植物に触れている。何があっても大人は子どもたちの未来を壊すようなことをしてはいけない、という思いに駆られる。
くちばしにガムが付き、困っている鳥を画面中央に大きくとらえていてよい。子どもたちが心配そうにのぞき込んでいる。人間のエゴのせいで動物がひどい目にあうという現実は、私たちが環境を考える上で示唆を与えるものだ。
鳥が卵を守っている。各モチーフの配置や画面構成がすばらしい。いくつかの要素がバランスを取り合ってハーモニーを奏で、幸福感に満ちた未来のイメージ像が表れている点を評価した。
畑や湖のようにも見える模様をした鳥が、じょうろで水を撒いている。絵を観る側も、目標や夢を抱いて飛び立ちたいという思いに誘われる。光をとらえた明るい色彩とやさしいタッチで希望にあふれた絵だ。
この作品の持つ強い筆致に、人は、人同士だけでなく、昆虫も含めてすべてと共存していける、という作者の信念が満ちている。鮮やかな色は、離れたところから絵を眺めていても強いインパクトを与えている。
美しい自然を保つための取り組みへの期待感と、状況を改善できる機会を逃したら悪い結果を招くという焦燥感。その間に広がる緊張感を、緻密な筆で克明に写し取っている。
一人ひとりが別々の車に乗らずに、みなで一台のバスに乗ることがエコである、ということをストレートに表現。乗り込んでいる人たちの笑顔や、にぎやかな色彩からも義務感ではなく、楽しいことだという感じが伝わってくる。
雨や川などの水が未来においても大事だ、というメッセージを感じ取れる。水の存在感が強く感じられるように、高いコントラストの配色や大胆な構成で、描き方も工夫されている。
日傘を差しながら人々が歩いているが、その傘には蓄電機能があり、夜はそのまま照明となって部屋を明るく照らす。太陽光を役立てたいという思いを、ユーモアとアイデアにあふれた表現で描いた楽しい作品。
さんさんと降り注ぐ陽光のなかで、サクランボの収穫をしながらごみ拾いもしているようだ。木には大きな毛虫や繭(まゆ)からかえった蝶が描かれていて夢がある。喜びにあふれた素敵な絵だ。
大きなネットのなかには、さまざまなプラスチックごみ。海洋汚染を招くごみ問題を描くことで、そのなかに多くの要素が複雑に絡み合っているということを伝える「警告の絵」ではないか。
中心にある顔は女神だろうか。母なる大地に生かされている自然を、自分たちの手で守っていきたい。そんなメッセージが、豊かな色彩と高い描写力でしっかりと描かれている。
言いようのない不安感が伝わってくる。最近のエコのイメージは、ポジティブさだけでなく、諦めにも似た未来への不安感も持っていると感じた。子どもたちに夢を持たせてあげなければいけない。
土の中に寒さをしのぐ動物たちの姿があるなど、美しい色彩で冬の厳しさを表現した作品。地球温暖化が叫ばれる一方、寒さが伝わってくる。空気まで描ききっている点もすばらしい。
この絵は作者がめざす「幸せのかたち」を描いているのだろうか。自然や動物、人が調和し、穏やかに佇んでいる。幸せのイメージは人それぞれだが、こうした環境への意識が根底にあると感じた。
地球儀を描いた作品は毎年あるが、泣いている地球儀をケアするなどポジティブなテーマが多かった。ついにごみ袋にたとえられてしまったことに切迫した危機感を感じる。絵に込められたメッセージを重く受け止めた。
人間の営みが大気汚染を引き起こし、上層部の住人は窓を閉めないと暮らしていけないという状況。環境問題が自分たちの生活に直結しているということをユニークな表現で問題提起している。
遠近感を活かし、木の下の家族を高いところから見下ろした作風だが、絵は幹の上の小さな虫にフォーカスしている。大木をダイナミックに描きながらも、視点は小さな生き物にしっかりと向けられているという命のとらえ方が独特。
一見すると花のように見えるが、さまざまな角度から地球をとらえた作品。太陽光パネルや風車、水車などの自然エネルギーや美しい自然がある。エコを8歳なりのとらえ方でしっかりと表現している。
一見シンメトリーな構成だが、左右に異なるモチーフを配すなど、自然の要素のひとつひとつの個性が描かれている。それらの自然と連なっている自分たちが、自身の手で守ることが大切であるということを、非常に高い構成力で訴えている。
タンカーから海に漏れ出してしまったオイルがきれいな色調の中で黒々と描かれていることで、環境に悪影響を与えていることが強調されている。絵画的な表現がとても美しく、画面構成力や描画力も素晴らしい。
明度や彩度など、色彩の調和が秀逸。自然の中に生きながら、自然を守ろうというメッセージを発している。水やりやごみの分別といった生活のシーンも情景豊かに描かれており目を引く。
さまざまな動物たちが住む自然豊かな森。木々には「菰(こも)」が巻かれている。昔ながらの樹木の健康を守る方法に着目してもらおうと、菰だけ茶色で配した発想力に感心した。
下記より「第10回(2019)入賞作品集」をご覧いただけます。
審査風景・審査員の総評・第10回コンテスト表彰式の様子はこちらからご覧いただけます。