details
乳がんってどんな病気?
監修:認定NPO法人 乳房健康研究会
乳がんは、乳房にある乳腺(母乳をつくるところ)に発生する悪性腫瘍です。
症状は、しこり、乳頭から血液や分泌液が出る、乳首の陥没、皮膚のくぼみ、痛み、脇の下のしこりなど、実にさまざまです。
細胞が、がん化して増えはじめるとしこりになりますが、初期には食欲が減ったり体調が悪くなるなどの全身症状がほとんどありません。
唯一あらわれる乳房の変化に気づかずにそのまま放置しておくと、乳腺の外にまでがん細胞が増殖し、血管やリンパ管を通って全身へと広がっていきます。
現在、日本女性の9人に1人※が生涯の間に乳がんにかかるといわれています。
亡くなる方は年々増加し、今では約1万5千人。
女性の壮年層(30~64歳)のがん死亡原因のトップとなっています。
乳がんの発生はエストロゲンという女性ホルモンが深く関わっています。
ここ30年の乳がんの急激な増加は、食生活やライフスタイルの変化がエストロゲンの分泌に影響しているためと見られています。
※国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)2019年 データによる
日本の検診受診率は、70%を超える欧米に比べ、まだ低いのが現状です。検診に行かない理由は、「費用が高い」「痛い(らしい)」「機会がない」など。
一方で、検診を受診した理由は、「大切だと聞いた」「人から勧められた」が多くなっています(認定NPO法人 乳房健康研究会調べ)。
乳がん検診受診率の国際比較
出典:OECD Health Statics 2023(海外50~69歳)、2022年国民生活基礎調査(日本40~69歳)
乳がんは誰でもかかる可能性があり、残念ながら、現在のところ予防する方法はありません。
しかし、早期発見・早期治療開始で生存率は高くなります。
だからこそ、自身の健康に関心を持ち、定期的に検診を受診することがとても大切です。
乳がんの10年生存率
出典:全国がんセンター協議会の生存率共同調査(診断年1998~2008年 2022年11月集計による)
乳がんは、身体の表面に近い部分にできるため、 観察したり触れたりすることで、
自分で見つけることができる可能性が高いがんのひとつ。
早期発見のためにも、まずは自分の身体や乳房の状態を 意識することからはじめてみませんか。
ふだんの入浴やボディケアの際に取り入れやすいメソッドです。
日ごろから自分の乳房に触れて状態を知っておき、変化に気づいたら すぐ医師に相談しましょう。
片腕を上に挙げた状態で、挙げた手側のバストを確認します。
指を揃えて肌にぴったりと付けた状態にします。バストを寄せる程度の力加減で、バストの外側を下から上へ、次に内側を下から上へマッサージするように行います。
皮膚表面の状態、柔らかさやバストの張り、へこみなどを確認します。
片腕を上に挙げた状態で、挙げた手側のバストを確認します。
指先を小さく円を描くように動かし、皮膚の少し奥の状態を感じるように圧をかけながら、下から上の方向へ、バスト全体をマッサージするように行います。
バストに硬い部分やしこりがないかを確認します。
片腕を下ろした状態で、下ろした手側のバストを確認します。
指を揃えてわきの下に入れ、少し圧をかけながら、身体の中心に向かって手を滑らせます。
わきの下も広く触れ、しこりなどがないか確認します。
気になるしこりや変化を見つけたら、すぐに乳腺専門の医療機関で診察を 受けてください。
こちらから、全国の検査設備の整った施設を検索できます。
自己検診に加えて、マンモグラフィや超音波診断装置を使った画像診断を定期的に受けることで、乳がんの早期発見率はぐんと高まります。
40歳を過ぎたら、2年に1度はマンモグラフィと視触診による検診を受けましょう。
(「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」厚生労働省による)
乳房はやわらかい組織でできているためマンモグラフィという専用のX線撮影装置で撮影します。
マンモグラフィは乳がんをはじめとする乳房にできる病気をほとんど見つけることができ、しこりとして触れないごく早期の乳がん(石灰化)も発見できます。
撮影自体は5分程度。X線を使いますがその量はごくわずかでほとんど危険はありません。
人間の耳には聞こえない超音波を機械から発し返ってくる反射の様子を画像化。
手に触れない数ミリのしこりを見つけだすことができます。
検査時間は10分程度で、痛みなどはまったくなく、身体に無害です。
妊娠中、若年の方、頻繁に検査をする必要のある方などに適しています。
認定NPO法人 乳房健康研究会 副理事長
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長
島田 菜穂子さん
乳がんは、他のがんと違い、40代半ばから50代半ばの比較的若い年代がなりやすいのが特徴です。30代半ばから増え始めるため、病気になるというイメージを持っていない若い方がなってしまうこともあります。
また、乳がんは身体の表面にあるので、自分が触ることで、異常に気付きやすいというのも特徴です。早く発見すれば治る確率が高いので、とにかく“早期発見”が大切です。
ご自分の身体に注意をはらい小さな変化に気づくことが大事ですが、最近では、さまざまな画像の検査を適切に受けることで、自分ではまったく異常に気がつかない早い段階でも、がんが発見できるようになってきました。ですから、症状がなくても、まず検診を受けるということ。また、1回きりでなく、定期的に継続して受診し、変化を確認することが大事です。
乳がんの検診が大事だと思っている方でも、実際には、まだ40%くらいの人しか受けておらず、意識と行動にはギャップがあります。行動に結びついた方にきっかけを伺うと、身近な方が実際に検診を受けて、「そんなに痛くなかった」「思ったより時間がかからなかった」「受けて安心した」など、具体的な感想や検査のプロセスを教えてくれたから、という方が多いのです。皆さんひとりひとりが、ちょっとした良い“おせっかい”ができるようにしていくのが大切ではないかと思います。
女性が検診に行こうと行動をおこすきっかけになるのは、男性からの勧めも大きな理由のひとつです。
実際、診察の時、旦那様やパートナーから「君が大事だから検診に行ってほしいと言われてきたんです」と嬉しそうに話される方が多くいらっしゃいます。
仕事の合間でも検診に行く時間が取れ、それがあたり前だという状況になれば、もし、病気になっても、早い段階で見つかりやすく、大きな影響を受けずに普段の生活に戻れます。男性の皆さんも、自分の大切な方や同僚の方に声をかけ、検診に行きやすい雰囲気をつくることが、今後ますます必要になってくると思います。
女性がメイクやお洋服に気を使い、いつまでもきれいでいたいという気持ちは、いくつになっても変わりません。その思いを満たすには、ベースである健康が欠かせません。いつも健康でいるために、一人でも多くの方が乳がんの検診に行くという行動を起こすようになると、素晴らしいと思います。