花王株式会社は、「発酵法による没食子酸の工業生産*1 」により、公益社団法人新化学技術推進協会の第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー(以下、GSC)賞「奨励賞」を受賞しました。この賞は、グリーン・サステイナブル ケミストリーの推進に貢献する優れた業績が表彰されるもので、奨励賞はGSCの推進においてその貢献が将来期待できる業績に対して与えられます。
技術紹介動画:発酵生産でバイオ没食子酸が製造される様子
没食子酸は、植物ポリフェノールのひとつで、ボイラー用防サビ剤や半導体の回路形成の原料などに幅広く利用されている工業的に重要な芳香族化合物です。しかし、現在はウルシ科植物にフシムシが寄生してできる虫こぶ(五倍子)から抽出して製造するため、収量が天候に左右されやすく、生産地も限定されています。そこで花王は、植物由来原料(グルコース)を用いた発酵生産によって、没食子酸を工業的に生産する技術を開発しました。
生産した没食子酸
本技術による没食子酸の生産では、汎用的なグルコースを原料とするため、地理的要因や環境要因に左右されず、よりサステナブルに安定して製造が可能だと期待されます。また、本研究の結果は、没食子酸に限らず、その他のバイオものづくりにも応用できると考えられます。
本技術を応用したバイオ没食子酸は、社内製品の原料としても使用されるほか、ボイラー用の水の腐食防止剤などの用途で国内メーカーにも採用されています*2 。今後は、アジアや欧州などへの展開拡大をはかり、さらに、その他芳香族化合物の発酵生産技術の開発も行っていく予定です。
第 9回(2009年度) 亜臨界水を応用した低環境負荷な界面活性剤合成プロセスの実用化
第12回(2012年度) サステイナブル社会を先駆けた新しいお洗濯提案
第16回(2016年度) 紙ベース鋳造用湯道管の開発
第18回(2018年度) インクジェット用水性インクによる軟包装フィルムへの印刷の実現
第20回(2020年度) サステイナブル界面活性剤バイオIOS(Internal Olefin Sulfonate)の開発
第22回(2022年度) 廃PETを利用したアスファルト舗装高耐久化技術の開発