発表資料: 2023年05月16日

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花王、使用済みつめかえパックの水平リサイクル技術を具現化

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、このほど、使用済みつめかえパックの水平リサイクル技術を具現化し、再生材料を一部に使用したつめかえパックを開発しました。2023年5月29日より順次、本技術を採用したつめかえパック『アタック ZERO つめかえ用(1,620g)』を、一部店舗*1 にて数量限定発売します。使用済みつめかえパック*2 を回収し、それを新たなつめかえパックに変える水平リサイクル*3 は、世界で初めて*4 となります。

  • * 1 イトーヨーカドー、ウエルシア薬局、イオンの一部店舗にて
  • * 2 金属箔層を有する樹脂層を含むパックと金属蒸着層を有する樹脂層を含むパックの両方が含まれる。
  • * 3 金属箔層を有する樹脂層を含むパックを除去し、金属蒸着由来の金属粒子を含む新しいつめかえパックのリサイクル
  • * 4 国際出願WO2022 / 124146A 請求項14を根拠に「世界初」を表現(国際調査機関が新規性ありと見解)

アタック ZERO つめかえ用(1,620g)

取り組みの背景

花王グループは、2019年4月、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を策定し、19の重点取り組みテーマを設定しています。このうち「ごみゼロ」の取り組みの一環となる、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向け、リデュースイノベーション、リサイクルイノベーションを推進しています。
これまで花王は、包装容器プラスチック使用量削減に向けて、内容物の濃縮化による製品容器のコンパクト化、つめかえ・つけかえ製品の開発・普及を行い、また、製品使用後の廃棄まで責任を持つことをめざしたリサイクルを推進してきました。つめかえパックに関しても、使用済みつめかえパックの持続可能な回収スキームの構築やリサイクルするための技術開発にむけて、自治体や企業、流通とともに、実証実験を重ねてきました。使用済みつめかえパックを水平リサイクルし、再度容器にできると示すことは、生活者の行動変容を促すための大きな一歩と捉えています。

つめかえパックリサイクルの模索

つめかえパックは、薄いフィルム状(およそ100~250μm)で、本体ボトルと同様に、温度や湿度、紫外線などから、内容物を守ることが求められます。そのため、ポリエチレンを中心(全体の約80%)とし、ポリエステル(PET)やポリアミド(ナイロン)など多種多様な素材からなる多層構造をとっています。製品によっては、金属箔層としてアルミ箔が使用されることもあり、さまざまな層構成のつめかえパックが流通しています。このように、つめかえパックは、機能素材を組み合わせることにより、樹脂量を減らすことが可能な容器である反面、多種多様な素材で構成され、さらには印刷層にインクを使用しているため、水平リサイクル技術の開発は難しいとされていました。花王では、2016年より、複数の自治体、企業、流通、生活者と協働し、使用済みつめかえパックの回収を開始。使用済みつめかえパックの水平リサイクル技術の開発をスタートしました。2021年には、花王の和歌山研究所内に、パイロットプラントを導入しています。

使用済みつめかえパック多層構造の一例(イメージ)の図

使用済みつめかえパック構成成分の図

つめかえパックリサイクルの実現に向けては、つめかえパックを構成する素材のうち、約80%を占めるポリエチレンの性質を活かし、その他不純物となるPET、ナイロン、アルミ箔、インク等の影響をおさえる必要がありました。

当初、使用済みつめかえパックを再度フィルム化する工程のなかで、つめかえパックに含まれるアルミ箔やインクなどが粉砕しきれず異物として残ってしまい、それによってフィルムに孔(あな)があいてしまうという課題がありました(図)。そこで、アルミ箔が含まれるつめかえパックを選別工程であらかじめ除き、リサイクルすることで、フィルム化工程で孔があく原因となる異物の低減につなげました。さらに、ポリエチレンとPET、ナイロンなど、互いに混ざりあわない素材を混ざりやすくするために、相溶化剤を添加し細かく分散させることや、インクや接着剤をフィルム化工程で悪影響をおよぼさない程度まで細かくすることにより、孔のない均質なフィルムとすることができました。

不均質な穴があいたフィルムの図

しかし、製品化に向けて容器の基材面に印刷を施すと、ごくわずかな凹凸が顕在化する事がわかりました。この凹凸は、外観性や、容器の機能を担保するうえで課題があると考え、さらなる技術開発を行いました。

製品化に向けた新技術“つめかえパックの一括リサイクル技術”

製品化に向けては、容器の機能を担保し、表面が美しいパッケージになるように、凹凸のない滑らかなフィルムを作ることが必要でした。課題となる凹凸の主原因は、粉砕や混練で分散されていたPET、ナイロンなどが、混合の過程で凝集、肥大化したことでできる異物にあることをつきとめました。そこで、この異物を除去する新技術“つめかえパックの一括リサイクル技術”を開発しました。

リサイクルフィルム凸部の断面

リサイクル工程イメージの図(パイロットプラントにおけるフィルム製造の様子) 1、回収した使用済みつめかえパック 2、選別工程。アルミ箔が含まれるつめかえパックを除く。 3、破砕、洗浄、微粉砕工程。洗浄粉砕機にて破砕後、洗浄する。 4、混合・混練工程。混練工程でレーザーフィルターにかえて異物を除去。相溶化剤を添加し混合し細かくし、その後、ペレットにする。 5、フィルム化工程。成膜機によるフィルム化。温度最適化により、異物発生を抑制し、リサイクル樹脂のフィルムが完成。

つめかえパックの一括リサイクル技術

  • レーザーフィルターを新たに採用し、異物をろ過
    混練工程において、特殊な条件下でレーザーフィルターにかけることで、PET、ナイロンを含む異物を物理的に除去することができました。

  • 異物の凝集防止のための相溶化剤の添加
    レーザーフィルターで取りきれなかったPETやナイロンが、混合過程で凝集することも、異物発生の原因となります。従来よりも凝集防止効果が高く、ポリエチレンに混ざり合う相溶化剤を加えることにより、PETやナイロンの凝集を防止し、異物を抑制することができるようになりました(東ソー株式会社との共同開発)。

  • 製膜機によるフィルム化工程での温度最適化
    つめかえパックの主な素材であるポリエチレンと、PET、ナイロンは、それぞれ溶解温度が異なります。そのため高温すぎると水平リサイクルに必要なポリエチレン素材の性質を損なう一方、低温ではPET、ナイロンなどの不純物の溶解が不十分となり、凝集、肥大化し、フィルム化の際の凹凸の原因となる、異物の発生につながります。新技術では温度を最適化することにより、素材の性質を保ちながら、凝集の発生を抑制できるようになりました(株式会社フジシールとの共同開発)。

さらに、今後リサイクル樹脂ペレットの量産を検討していくにあたり、三井化学株式会社、株式会社プライムポリマー協力のもと、生産条件の最適化を確立しています。

この技術を採用し、2023年5月29日から順次発売する『アタック ZERO つめかえ用(1,620g)』では、リサイクルつめかえパックのうち、約1%が回収した使用済みつめかえパック由来、残り約9%は、製品として使用されなかったつめかえパック由来、計約10%のリサイクルした素材を使用して製品化しました。リサイクルした素材は、リサイクルつめかえパックの中間層の一部(右図)に使用し、内容物の品質を担保するとともに、容器の強度を確保しています。

このように、新たに開発したリサイクル技術により、難しかった使用済みつめかえパックの水平リサイクルによる製品化が実現しました。今回は数量限定での発売ですが、今後本格展開をめざすことにより、2025年目標として掲げる「回収パウチを使用した革新的フィルム容器の実用化」を推進していきます。今後は、リサイクルを前提とした単一素材での製品設計や、異なるリサイクル技術の検証をしていきます。また、花王が開発した技術は、自社内にとどめることなく、広く業界内にも普及させていくことで、社会・業界全体でのリサイクル推進にも貢献していきます。並行して、使用済みつめかえパックの回収量を増やすスキーム構築や、低コスト化により、社会実装の課題解決に向けても、さらに検討を進めていきます。

消費者の方のお問い合わせ

花王株式会社
生活者コミュニケーションセンター
消費者相談室

0120-165-693

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