D-アミノ酸による認知症早期診断技術

分析化学

アミノ酸はDNAや脂質などと共に私たちの生命活動に大切な役割を果たす生体成分です。
アミノ酸にはプロリン(Pro)やセリン(Ser)といった種類それぞれに、形も大きさも同じでありながら構造が鏡に映ったような関係(キラル)となるL体とD体が存在します。
長年ヒトを含む哺乳類にはL-アミノ酸しか存在しないとされてきましたが、近年の分析技術進歩に伴い、D-アミノ酸が極微量ながら存在することがわかってきました。さらに、D-アミノ酸は老化やさまざまな疾病と関連することも報告され、世界的に注目を集めつつあります。
花王では、DL-アミノ酸を迅速・高感度に一斉解析する独自技術「Chiral tandem LC-MS/MS systems(キラルタンデム液体クロマトグラフ質量分析システム)」を開発し、東京都健康長寿医療センターとの大規模コホート研究への応用も可能となりました。
健常者・軽度認知障害(MCI)の疑いのある方・認知症の疑いのある方305名における血中DL-アミノ酸の一斉解析を実施し、認知機能との関連を調査したところ、認知機能低下に応じて、血中D体存在比(%:D/(D+L)×100)が上昇し、認知機能の評価指標として有用であることを発見しました*1
今後もD-アミノ酸研究をさらに進め、一人ひとりの健康診断、ライフケア領域へ応用していきます。

  • * 1 Kimura, R., Tsujimura, H., Tsuchiya, M., Soga, S., Ota, N., Tanaka, A., & Kim, H. (2020). Development of a Cognitive Function Marker Based on D-Amino Acid Proportions Using New Chiral Tandem LC-MS/MS Systems. Scientific Reports, 10, 804.

D-アミノ酸と認知機能の関係です。 健常・MCI・認知症におけるD-ProおよびD-Ser存在比が示されています。MCI・認知症の方ではD-ProおよびD-Ser存在比が高値にあります。

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