デング熱の基礎情報

耐性蚊の増加

世界中で行なわれてきた対策によって、
殺虫剤への耐性を持った蚊が増加しています。

耐性蚊の増加

前章の通り、蚊が媒介する感染症の拡大を防ぐため、世界中でさまざまな対策が行なわれてきました。アフリカでのマラリアの発生数は、2000年から2015年にかけて40%減り、15年間で6億人以上もの人々が感染から救われたと計算されています。その中では、殺虫剤でコーティングされた蚊帳が大きな役割を果たしました[1]。一方で、殺虫剤成分に耐性を示す蚊が増えている、つまり殺虫剤を使っても死なない蚊が増えてきています。

耐性を持つ蚊とは

殺虫剤の代表的な成分に、ピレスロイドと呼ばれる化合物群があります。これらの化合物は、蚊の神経に発現する電位依存性ナトリウムチャネルに作用し、神経の異常興奮を引き起こすことで蚊を殺します。耐性蚊では、殺虫剤成分が作用する蚊のタンパク質に変異が入って結合できない状態になっていたり、蚊の表面を構成するクチクラに変化が起こり、殺虫剤成分が体内に入りにくくなっています[2]。

引用文献

  • [1]
    Bhatt S., Weiss DJ., Cameron E., Bisanzio D., Mappin B., Dalrymple U., Battle KE., Moyes CL., Henry A., Eckhoff PA., Wenger EA., Briet O., Penny MA., Smith TA., Bennett A., Yukich J., Eisele TP., Griffin JT., Fergus CA., Hynch M., Lindgren F., Cohen JM., Murray CLF., Smith DL., Hay SI., Cibulskis RE., Gething PW. (2015) The effect of malaria control on Plasmodium falciparum in Africa between 2000 and 2015. Nature, 526: 207-211
  • [2]
    Vontas J., Katsavou E., Mavridis K. (2020) Cytochrome P450-based metabolic insecticide resistance in Anopheles and Aedes mosquito vectors: Mudding the waters. Pestic Biochem Physiol. 170: 104666
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