リサイクリエーションの取り組み

より持続可能な原料の追求とリサイクルに向けた取り組み

花王は、より環境負荷の少ない製品をお届けしようと、リデュース(減らす)、リプレイス(置き換える)、リユース(再利用する)、リサイクル(再資源化する)の4Rの視点から、包装容器の研究開発に取り組んできました。1990年代にスタートした「つめかえ・つけかえ用製品」の開発は、その代表とも言えるもので、今や、日本国内では、つめかえ・つけかえが暮らしにすっかり定着しています。

プラスチックの包装容器の資源循環をめざして、リサイクリエーションを推進

「つめかえ・つけかえ用製品」は、中身を保護しながら、いかにつめかえやすくできるか、一方でいかにプラスチックの使用量を減らすことができるかという観点から、開発が続けられてきました。とはいえ、つめかえ終わったあとのパックは、日本の多くの自治体で焼却され、熱エネルギーとしての利用にとどまっています。これは、つめかえパックが、洗剤やシャンプーなどのさまざまな中身を、輸送での衝撃や紫外線などの保管環境から中身を守るために、何層ものプラスチックを重ねてつくられていて、ペットボトルなどのように、1種類のプラスチック原料からできていないためにリサイクルが難しいことが挙げられます。

そこで何とか、貴重なプラスチック資源を循環させ、もう一度、新たな価値を与えられないかと考えたのが、「リサイクリエーション」の取り組みです。
「リサイクリエーション」ということばは、「リサイクル」と「クリエーション(創造)」を組み合わせた、花王が考えた新しいことばで、一度使い終えたつめかえパックに、技術や知恵、アイデアを加えることで、新たな価値を創り出したいという思いが込められています。

「リサイクリエーション」は2015年から活動がスタートしました。これまでに集まった使用済みつめかえパックは、2022年5月末現在、累計で109万枚余り、総量で19.7トンにのぼります。まだ社会実験の段階ですが、日用品をお使いいただく生活者の皆さまをはじめ、ほかの企業や行政とも連携して行なわれており、今後、さらに協力していただくパートナーを広げるための取り組みも進めています。

さまざまな自治体、NPOと連携して、実証実験を推進

リサイクリエ―ションは、神奈川県鎌倉市、徳島県上勝町、宮城県女川町、石巻市、北海道北見市の5地域で回収を行なっています。

まず取り組んだのが、皆さまに「資源が循環していくこと」を体感していただくため、回収したつめかえパックを再生樹脂にして、さらに、「おかえりブロック」と名づけたブロックをつくることでした。「おかえりブロック」が地域に戻ってくることで、資源循環が実感できるしくみです。
使い道はアイデア次第。街づくり、環境教育、啓発活動などで活用されています。

神奈川県鎌倉市での取り組み

鎌倉市では、2016年より「リサイクリエーション」活動を実施しています。ガールスカウト神奈川県第3団の協力のもと、つめかえパックを回収し、パックから作成したブロックを使用して、「未来のかまくらを考えよう」をテーマにしたワークショップを開催しました。

2017年からは、鎌倉市に加え、鎌倉を拠点として活動するNPO法人カマコン、 NPO法人游風、株式会社カヤックといったパートナーと共に、新たなプロジェクトを開始。市民の皆さま、学校、行政、パートナー企業の協力のもと、2017年10月~2018年5月までで4万1,025枚のつめかえパックを回収し、実物大の江ノ電と、鎌倉にゆかりのあるキャラクター「オチビサン」のベンチを制作しました。
その後、江ノ電として使用したブロックは新たに市民生活に役立つものへ形を変えて、小・中学校、駅などで活用されています。
これをきっかけに鎌倉市内の小学校、中学校での環境教育にも発展し、おかえりブロックによる創作活動が続いています。

江ノ島駅に寄贈されたおかえりブロックベンチ

2019年春より1年かけて、鎌倉市立御成小学校の皆さまといっしょに取り組んだ環境教育の活動記録

カーリングで有名な北海道北見市において、2018年10月より「リサイクリエーション」活動を開始しました。北見市環境課が事務局を務める市民団体「北見エコスクールSDGs協議会」を中心に、市内全域で活動を行なっています。
北見らしいクリエーションでリサイクルの啓発とカーリング競技の応援を行なう、という意味を込めて、おかえりブロックで巨大カーリングストーンモニュメントを制作することを目標に回収活動を拡大しました。
2021年には目標の回収枚数に到達し、2021年10月に通称「100倍ストーン」が完成しました。北見市内のカーリングホールにおいて2022年3月まで展示されたあとに、北見市のクリーンライフセンターに移設されています。
北見リサイクリエーションでは産官学民の連携が特徴です。中規模都市の資源循環モデルをめざし、現在も活動が広がっています。

巨大カーリングストーンモニュメント制作の活動記録動画

北見エコスクールSDGs協議会の皆さまによる回収物の確認

宮城県女川町・石巻市での取り組み

女川町では、2017年4月、町の商店街の活性化と資源循環を組み合わせた、女川町の新しい取り組みのひとつとして「リサイクリエーション」活動を取り入れ、社会実装の効果の検証を進めています。女川町商工会議所と、女川町観光協会に回収ボックスを設置し、使用済みつめかえパックの回収量に応じて、地域通貨(アトム通貨)に還元しています。今後もこの活動で女川町の活性化に貢献できるよう進めていきます。

石巻市では、市民の皆さまと共同する新しい取り組みとして、「リサイクリエーション」活動の社会実装の効果の検証を開始しました。石巻での活動主体は、震災を経験した石巻だからこそできる、新たな環境に配慮した生活の提案をめざして地域で活動する、一般社団法人サステナブルデザイン工房です。石巻市の協力のもと、2017年11月より市役所など5カ所に回収ボックスを設置して本格的に洗剤やシャンプーなどの使用済みのつめかえパックの回収を開始しました。現在、研究会の開催や、ラジオ放送、環境教育などを通じてコミュニティが広がり、多くの方々のご賛同をいただきました。その結果、回収場所は60カ所を超え、市内全域に広がっています。

女川町公認キャラクターのレリーフを作製する子どもたち

大谷地小学校の皆さんが制作した回収ボックス(石巻市役所に設置)

徳島県上勝町では、2016年より、使用済みのつめかえパックの回収を実施しています。上勝町で3年間で回収したパック総量の350kgを再生加工、「おかえりブロック」と名づけたブロックを作成し、1月26日に上勝小学校にて、ブロックの譲渡式典を実施しました。

上勝町は、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を公表しました。廃棄物の徹底した分別回収を実施しており、その取り組みは世界的に注目を集めています。
花王は上勝町の政策と背景にある思いに共感し2016年より「リサイクリエーション」の協働を提案、活動を続けています。
つめかえパックの回収は、地域の方々の協力のもと、パートナー企業と協働して行なっています。町民全員が利用する町内に1カ所あるごみステーションに、回収ボックスを設置し、分別回収を続けています。

ごみステーションに設置した回収ボックス

上勝町で行なわれた譲渡式典の様子

企業と連携して、実証実験を推進

2020年10月からライオンと協働し、墨田区のイトーヨーカドー曳舟店において、使用済みつめかえパックの回収をスタートしました。回収開始から1年間で、フィルム容器約9,500枚の使用済みつめかえパックを回収することができ、洗浄・乾燥して出すことについても、多くの方に協力いただけることが確認できました。
2021年10月からはウエルシア薬局との協働を開始しました。東京都の本社と22店舗、埼玉県7店舗の合計30カ所に回収ボックスを設置。物流を担うハマキョウレックスとも協働し、商品配送の帰り便を活用した、効率的な回収システムの構築に挑戦しています。

使い終えたものから、新たな価値あるものへと再生させる「リサイクリエーション」の考え方を広めていくことで、リサイクルに対する生活者の理解と協力を得て、より効果的なつめかえパックの回収システムの検討、リサイクル技術の向上や開発に取り組み、サプライチェーンを構築することによって、資源循環型社会の実現をめざします。

花王とライオンの協働によるリサイクル実証実験を開始
~リサイクル率の向上と水平リサイクルの実現をめざして~

墨田区のイトーヨーカドー曳舟店に専用回収ボックスを設置。回収への協力を呼びかけ、お客さまから洗剤やシャンプーなどの使用済みつめかえパックを回収しています。

本取り組みは、令和3年度消費者志向経営優良事例表彰選考委員⻑表彰を受賞しました。

すみだリサイクリエーション紹介動画

ウエルシア薬局店頭に設置した回収ボックス

地域社会とつながりの強いウエルシア薬局の複数店舗で、生活者のリサイクル意識を啓発、回収への協力を得るとともに、回収したつめかえパックの収集・運搬の経済性・環境負荷を検証し、効果的な回収システムの構築をめざします。この取り組みで構築した回収のモデルは、プラスチック資源循環型社会の実現に向けて、さらにその他地域への拡大を検討します。

水平リサイクルをめざして

花王では、世界的なプラスチック問題の解決に貢献できるよう、よりリサイクルしやすい包装容器の設計や、再生技術の研究、再生プラスチックを使用した包装容器の開発にも取り組んでいます。
本品容器にくらべてプラスチック使用量を大きく削減できるつめかえパックは、さまざまな中身を、輸送での衝撃や紫外線などの保管環境から中身を守るために、何層もの複合材料からつくられています。そのため、リサイクルすると多種類の成分からなる不均質なプラスチックとなってしまい、再びフィルム容器として利用することは現状ではまだ困難です。これまでこのような不均質なプラスチックは、フォークリフトなどで物を運ぶ時の「荷台(パレット)」や、擬木などにリサイクルされてきました。
このように高度なリサイクルが難しいつめかえパックを原料として利用できるよう、2021年6月より和歌山研究所に導入したフィルム容器リサイクルのパイロットプラントでリサイクル技術の研究を進めています。つめかえパックから再びつめかえパックへ再生する「水平リサイクル」の実現をめざし、研究を進めています。

フィルム断面のイメージ

不均一な再生フィルム

和歌山事業場に水平リサイクル研究プラントが完成

2021年、実験用プラントを稼働させました。 最終目標は、パッケージからパッケージに戻す「水平リサイクル」。 持続可能な循環型社会の実現に向けて、私たちはこれからも歩んでいきます。

和歌山リサイクルパイロットブランドの紹介動画

つめかえパックの「水平リサイクル」をめざすプロジェクト
「神戸プラスチックネクスト ~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」に参加

神戸市と19の参加企業が協働して資源循環に取組むプロジェクトにも参加しています。小売店舗の配送戻り便やリサイクラーとの連携により、効率的に環境負荷を抑えて収集する回収の仕組み作りを行っています。また回収したつめかえパックは、生活に役立つリサイクル品に再生するとともに、再びフィルム容器として利用する水平リサイクルを目指しています。

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