弘前大学COIでの社会実装検証

(1)内臓脂肪低減のための食事法

弘前大学のCOI拠点へ参画した2015年より、青森県弘前市の地域企業の協力の下、参加した被験者の基本的な身体データと内臓脂肪測定を実施し、花王の食事研究から得られた知見に基づいた栄養素バランスに合致した食事を地元食品メーカが調理した内臓脂肪低減食を提供した改善プログラム(期間約3か月)を、2015年12月にスタートさせました。
健康教育プログラムが、メタボリックシンドローム指標に及ぼす効果の検討を目的として、青森県弘前市に事業所を置く3企業の社員92名に参加いただきました。参加者は介入前に健康チェックを受け、3カ月間の健康教育プログラムに参加し、介入後の健康チェックを受けました。プログラムは、月1回の内臓脂肪面積の測定によるモニタリング、内臓脂肪低減を意図した食教育、およびそれを補助する職域給食としての弁当の提供の3要素で構成されていました。介入前後で、参加者の腹囲、内臓脂肪面積、収縮期血圧が改善しており、男性においては体重も減少していました。弁当の提供だけでなく、モニタリングや食教育も含めたメタボリックシンドローム対策プログラムにより、食生活全般の改善を介して効果が得られると考えられました*1

(2)内臓脂肪低減のための歩行支援法

歩行習慣改善支援プログラムの職域でのヘルスプロモーションのコンテンツとしての可能性を検討するために、青森県弘前市の自動車運送事業者(従業員約230名)において、2018年4月から7月の3ヶ月間で検証を行いました。
非盲検単群前後比較の方法を用いて、介入前と介入後の2回、理学検査、血圧、内臓脂肪、立ち上がりテスト、健康関連QOL、歩容を調査しました。介入中は活動量計の着用により日常の歩行習慣(歩数、速度)をモニタリングしました。介入前後の測定データ、および、モニタリングデータが得られた173名を解析対象としました。その結果、活動量計の有効着用率は93.5%、プログラム全体の継続率は81.2%でした。歩行習慣およびメタボリックシンドローム関連指標は有意に改善しました。ロコモティブシンドロームおよび健康関連QOLの指標では、介入前後で有意差は認められませんでした。プログラム実施期間中の平均歩数が8,000歩以上の群では、歩行速度、歩幅の改善度が大きく,介入後の腹囲,内臓脂肪面積はいずれも肥満基準やメタボリックシンドローム診断基準の正常範囲内でした。
プログラムは80%を超える継続率で実施することができ、歩行の量に加えて歩行の質を高めることで、健康関連指標を改善できることが示唆されました。本研究で試行したプログラムは、職域でのヘルスプロモーションのコンテンツになる可能性を見出しました*2

引用文献

  • * 1 相馬優樹ら, 日本栄養・食糧学会誌, 72(1), 19-26, 2019
  • * 2 熊谷美香ら, 日健教誌, 30(3), 230–239, 2022
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