発表資料: 2025年05月21日

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皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを、顔画像から推定するモデルを構築
だれでも手軽に客観的な肌の指標を利用することが可能に

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)スキンケア研究所・ヘアケア研究所は、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂中に含まれるRNA(皮脂RNA)*1 発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できるモデルを構築しました(図1)。今回開発したモデルは、RNAを直接採取・解析する必要がないため、RNA解析に要する時間、高額な費用がかからず、生活者が場所を選ばずにRNA発現情報に基づく肌タイプを利用することが可能となります。
花王は、RNAという客観的な生体指標を共通のモノサシとして社会で広く利用しやすくすることで、生活者が自分に合う商品やサービスを効率的に選択できる仕組みづくりに貢献していきます。

顔画像から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを推定するモデルの説明図。スマートフォンで素顔の写真を撮影すると、肌の色や形状の特徴から推定する機械学習モデルと、顔全体の画像から推定する深層学習モデルを組み合わせたAIモデルにより、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを推定します。

図1. 顔画像から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを推定

今回の研究成果は、DICOMO2025マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(2025年6月25~27日・福島県)にて発表予定です。

背景

市場には多種多様な化粧品とその情報があふれています。美容サイトのクチコミ評価を参考にして、化粧品を選ぶ生活者は数多くいますが、同じ商品でも人によって評価が分かれることがあり、自分の肌に合うかどうか悩ましいことが多々あります。その理由のひとつとして、体や肌の特徴が個人で異なることがあります。そこで花王は、個人の体や肌の特徴を表す客観的な指標があれば、生活者が商品を選択する際に役に立つと考えました。
花王は、2019年に皮脂中にRNAが存在することを発見し、あぶら取りフィルムで肌を傷つけることなく顔の皮脂を採取し、そこからRNAを抽出して網羅的に解析する「皮脂RNAモニタリング」技術を開発しました。さらに、皮脂RNAの発現情報を類似度により分類することで、「免疫」「角化」など皮膚の機能に重要な遺伝子の発現特徴が異なる、少なくとも2つの肌タイプが存在することも発見しました*2 。DNAは、一生変化しないその人固有の情報ですが、RNAは、体調や食生活といった環境要因によって日々変化するため、その時の肌状態を知るのに有用です。そこで花王は、RNA発現情報に基づく肌タイプは、生活者が商品を選択する際の客観的な指標のひとつになりうると考えました。
皮脂RNAは、非侵襲で場所を選ばず採取できる利点があるものの、解析には1週間程度の時間と高額な費用が必要で、より多くの人に手軽に使ってもらうには課題がありました。そこで花王は、この課題を解決するために、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できる技術開発に挑戦しました。

皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプの顔画像特徴

花王は、顔の見た目から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを推定できるかどうか確かめるため、2つの肌タイプの顔画像を検証しました*3
日本人女性343名を対象に、皮脂RNA解析で肌タイプを判定、その後カメラと被写体の距離や照明環境を一定にして素顔の写真撮影を行い、見た目に表れる特徴を比較しました。その結果、肌の色や形状のいくつかの観点で、2つの肌タイプの顔画像に統計的に優位な違いがあることがわかりました(図2)。

  • * 3 2018年8月~2019年4月に20~59歳を対象に実施

30代日本人女性、20名の平均顔で作成した、2つの肌タイプの顔画像イメージの写真。肌の色や形状のいくつかの観点で、統計的に優位な違いがあります。

図2. 2つの肌タイプの顔画像イメージ

スマートフォンで撮影した顔画像から、皮脂RNA情報に基づく肌タイプを推定するモデルの構築

花王は、実際の運用を想定し、スマートフォンで撮影した日本人女性3,248名*4 の素顔写真で検証を進めました*5 。皮脂RNA解析で肌タイプを判定し、その後異なる2つの条件で学習させて、AIモデルを構築しました。
1つ目は、事前の検証で見いだした肌の色や形状の特徴から、肌タイプを推定する機械学習モデル、2つ目は、顔全体の画像から、肌タイプを推定する深層学習モデルです。深層学習は、撮影条件など本来の肌の違いではないノイズの影響をうけやすい反面、人が注目していなかった要素も抽出できる可能性があります。
さらに、それぞれが異なる視点で学習を行うため、2つを組み合わせることで弱点を補完できると考え、これらの学習を組み合わせたモデルも構築しました。
それぞれのモデルが、どのくらい肌タイプを当てられるか検証した結果、組み合わせたモデルで最も高い正解率67%が得られ、顔画像から皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプの推定が可能だということがわかりました(図1)。

  • * 4 学習モデル作成に2,848名、学習モデル検証に400名
  • * 5 2022年4月~2023年12月に20~59歳を対象に実施

まとめ

今回、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できるモデルを構築しました。今後花王は、このモデルによって推定される皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプという客観的な指標を使って、生活者が自分に合う商品を選択できる仕組みの構築、次世代サービスや商品の開発、提案などを推進していきます。

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