乾燥性敏感肌の皮膚科学とセラミド製剤

保湿ケア

皮膚最外層の角層は、生体内への異物の侵入を防ぐバリア機能と肌のうるおいを保つはたらきを有しています。このはたらきが低下すると肌はうるおいを失い、外部刺激によって肌トラブルが起こりやすい「乾燥性敏感肌」になります。この角層のはたらきに重要な役割をはたすのがセラミドを主成分とした角層細胞間脂質です。健康な肌は、角層細胞間脂質がラメラ構造を形成し、角層細胞の隙間を埋め、その層間に水を保持して肌のうるおいを保ち、バリア機能を発揮します。

セラミドは配向しやすい反面、結晶化、析出しやすく、製剤中で十分な機能が発揮できない課題を有しています。花王では、健康な肌自身のうるおいを保持するメカニズムを保湿ケア製品に応用したセラミド機能成分の配合製剤の開発をめざしています。これまでに、物理化学的手法により結晶化抑制メカニズムを解析し、ラメラ構造を形成させる脂質会合制御技術を開発しました。
また、セラミド機能成分を角層に効率的に届けるために、ラメラ構造を保ちながら微細乳化分散する技術を開発しました*1 。セラミド製剤の技術の開発により、高い保湿効果とバリア機能の改善効果で、乾燥性敏感肌の敏感症状を改善できることを実証しました*2

花王は、研究開発部門内での連携のほか、大学などの外部機関と協働しながら乾燥性敏感肌の肌状態やスキンケアの製剤化技術を分子レベルで解明し、すこやかで美しい素肌のための製品開発を進めています。

  • * 1 日本化学会科学技術賞, 2021
  • * 2 Aesthetic Dermatol., 32, 18〜27, 2022

角層細胞間脂質のラメラ構造と皮膚の保湿メカニズムを示します。肌の断面図を示します。肌の最表層には角層があります。角層の中には、角層細胞があります。角層細胞の隙間には角層細胞間脂質があります。角層細胞間脂質はラメラ構造を形成し、水分を保持します。角層細胞間脂質の成分の中でセラミドは50%の割合を占めます。その他には脂肪酸20%、コレステロールエステル10%、コレステロール15%、糖セラミド5%になります。

角層細胞間脂質のラメラ構造と皮膚の保湿メカニズム

透過電子顕微鏡画像を示します。画像からは層状構造を有した微細乳化粒子が確認されました。動的光散乱で微細乳化粒子のサイズを測定した結果を示します。従来乳化技術製剤はサイズが1000ナノメートル付近なのに対して、微細乳化粒子のサイズは約100ナノメートルです。角層へのセラミド機能成分の浸透量の結果を示します。微細乳化粒子は浸透量が約2.5マイクログラム、従来乳化製剤は約1マイクログラムです。微細乳化粒子は従来乳化製剤に比べセラミド機能成分の角層への浸透量が高まっています。

微細乳化分散とラメラ構造を両立した製剤により角層への浸透量が向上

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