心で感じるスキンケア研究

感性科学

「恋をすると美しくなる」と言われ、多くの共感が得られています。「スキンケア時に喚起される、うきうきした気持ちや、満たされた気持ちなどのポジティブな感情は、単に使用時の気分をよくするだけでなく、肌を美しくする力があるのではないか。」という考えのもと、化粧品の心を介した肌効果を科学的に検証してきました。その結果、「スキンケアで心にポジティブな変化が生じた際に肌状態がよくなる」ことが明らかになりました。

スキンケア時に生じる感情は、特に触覚の影響が大きいことがわかっています。そこで花王は、化粧行為の1種であるハンドプレスや、スキンケア製剤の感触といった心地よいタッチに着目し、これらがポジティブな感情を高めることを主観的なアンケートと、脳血流計測の結果から評価しました(図1)。

脳血流計測による「ポジティブ感情」の評価結果を示します。ハンドプレスや開発クリーム製剤を塗布すると、快の情動や認知を担う脳の部位である前頭前野で血流変化が増加しやすい様子が見られる。

図1:脳血流計測による「ポジティブ感情」の評価

次に、感情の肌への影響を調べるために、これらを用いた4週間の連用試験を行いました。その結果、連用期間中にポジティブ感情を高く感じた群では、相対的に感じていなかった群と比較して、肌の質感向上が認められました(図2)。

ハンドプレスによって喚起されたポジティブな感情の肌への効果を示します。スキンケア時にハンドプレスを4週間継続した前後において、肌の質感を評価。試験期間中にポジティブな感情高く感じた群は、相対的に感じていなかった群と比べて、肌の質感が有意に向上することが確認された。

図2:ハンドプレスによって喚起された“ポジティブな感情”の肌への効果

また、心を介した肌効果が生じた際には、皮膚内部の遺伝子発現まで変化していることがわかりました*1 。ポジティブな感情の喚起度合いに応じて、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシン量が増加することや、オキシトシン量と肌の質感スコアは関連することも明らかにしており、スキンケアの心を介した肌効果にはオキシトシンが関与しているのではないかと考えています*2

従来、肌を美しく導く製品を開発する上では、配合成分や処方技術といった肌に直接働きかけるアプローチでの議論が中心的でしたが、今回の研究から、感情に着目したアプローチも有用であることが新たに示されました(図3)。

美しい肌に導くルートを説明します。従来、肌を美しく導く製品を開発する上では、配合成分など肌にダイレクトに働きかけるアプローチが中心でしたが、今回の研究から、感情に着目した心を介した肌効果のアプローチも美しい肌に導く手段として有用であることが新たに示されました。

図3:美しい肌に導くルート

花王では今後も、スキンケアをさらに愉しんでもらえるような製品づくりを行っていきます。

  • * 1 田中翔大, 井上高良, 森河朋彦, 村田武司, 松本雅之,須加基昭, 村瀬孝利, 高橋慶人, 第22回日本感性工学会大会(2020)
  • * 2 坂本考司, 原水聡史, 征矢智美, 中野詩織, 松本雅之, 中村純二, 日本化粧品技術者会誌, 56 (3), 247-252(2022)
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